第一章 第三話
「この様子なら次回余裕で脱走できそうだな」
「いいやまだ安心するのは早い、俺たちは二日間栄養剤を飲んでいない これが検査にどう影響するか」
「まあ今のところ全く身に変化は感じないな」
「今日の検査をパスしたら次のステップだ」
・栄養剤を摂取しないことによる再生能力の影響
・お互いの身体を食べることでの影響
「できれば別々で実験したいところだが、次回の検査で怪しまれると脱走に支障がでるかもしれない
だから両方試して身体の影響を確かめるしかない」
「わかった そうしよう」
そうして二人は今回の検査で良判定が出たので、次のステップへ移行が確定した。
収穫を終えて、二人は自室に戻った。
収穫が終わると身体が軽くなる。それもそうだろう 80kgほどある身体が50kgほどになるのだから。
「787 お前も脱走してくれるのか?」
「脱走計画を進めるにつれ、実は秘かにわくわくしている俺がいる だがとても迷っている
この施設にいて不都合はない 労働もしてるので賃金ももらえる
そうすれば購買で好きなものを買うことができる
正直不満は感じていないはずなんだ。」
「だが、のぶながの外に憧れる姿を見て俺も心を動かされつつある
このお金があればおそらく少しは逃亡生活ができると思うが、
そのあとはどうしていいかわからない。ただの家出生活になるかもしれない。」
「まあ無理強いはしない その日までじっくり決めてもいいし、あとからこっちに来てもいい。」
うん と答えるとその日は眠ることにした。
収穫後の翌日~5日までならグラウンドへ出ることが許される。
正直外の空気はなんというか独特の香りがする気がする。ふんわりと柔らかいような。
施設内に戻ると、ツンとするような匂いを感じることがある。
外の世界に出たらこの匂いの違いをもっと的確な言葉で表現することができるのだろうか。
翌朝、二人はとある決意をした。
「おい787 本当にこれ食べるのか?」
「ああ、一晩で数ミリ再生した俺たちの身体、食べてみるしかない」
「さあ、やろうか…」
こうして俺たちはお互いの尻の部分に再生した繊維を食べることにした。
しょくにんがヒト型をしているせいか、必ず服を着ろと言われる。
なので外から見えない部分を削って食べることにした。
「…うん 噛み応えのある豆腐だな」
「…そうだな 無味無臭というわけではないが特に臭いも味もしない」
「これは…」
「まじー」/「まずい」
「この実験で知りたいことはただ一つ 身体へ影響が出るか出ないかを調べる」
と言っても2週間しか経過観察できないので大博打である。
「昼の時は調味料つけたり他のおかずに混ぜて食べてみるか」
「ああ、そうしよう」
そうして脱走予定の当日まで続けた結果、とくに身体への異変も再生の異変も無く当日を迎えることとなった。
「787 いよいよ今日だ 決心したか」
「いやまだわからん だがのぶながだけでも家出させてみせる」
「家出じゃねえ 脱走だ」
なんてことない いつもの会話だ。
「さあ行くぞ」




