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第二章 第五話


活旗党に参加 その言葉を考えるより前に、

「それは止めた方がいい」と口に出そうだったが、

ぐっとこらえたサラは 「だから外しょく辞めてトウキョウエリアを離れるってことね」と聞いた。

「党員から声かけられて、しょくにんの自由訴え活動に参加して、全国周ることにしたのよ。」

「そう とても危険な旅になりそうね、約束して!無事に帰ってくるって」

「な、なぁ そのしょくにん自由訴え運動ってなんだ?」ソファーで座っていたのぶながが

気が付いたら二人が座っているテーブルに移動していた。

「私も活動内容が気になるわ」/「よければ俺も知りたい」サラとデルタも聞きたいという意思を伝えた。


「この前の選挙で、活旗党は議席数をかなり落としてしまったようなの。」

「そこで、実際のしょくにんが全国を周って、しょくにんのリアルな声を聞かせることで、

支持者を増やすというのが目的らしいわ」

「全国って、日本中回れるのか!?」

のぶなががまるで餌に食いつく魚のように見えた。

「まあ主要都市がメインになるって聞いたけど、ほとんど回るって聞いてるわ」

「いーなー!全国周ってみたいぜ俺も!」

「まあまあ落ち着きなさいってのぶなが、どちらかというと自由訴え運動のほうが気になるわ」

「自由訴え運動、メインはしょくにんたちの施設の出入り自由化を公約として掲げて活動するみたい」

(ほら、そうなると活旗党と闇市とハンターが繋がっていることが明確じゃない)

とはロージーにはとてもじゃないけど言えなかったサラであった。


そんな中デルタは確信に迫った。

「しょくにん自由化は一体誰が望んでいるんだ?」

「当然私もそれは聞いた。人間の中には、しょくにん達にも人権を与えるべきだという層が一定いるみたい。

そこで私が実際のしょくにんの声として、施設を出た理由とかを話してほしいんだって。」

「まずは確実な支持層を得たいという事ね?」

「そしてもう一つ、しょくにんにも選挙権与えるようにしたいという事みたい。」

「そうなると活旗党の支持層はかなり固いものになるな…戦略としてはいいかもしれない。ただ少し過激だ。」

政治に正義も悪も無いと思うが、少々偏りすぎな党だと思うデルタ。


「いやでもよ、俺はいいと思うぜ!人間としょくにんが一緒に生活するようになったら面白いと思う。」

(のぶなが、俺はそれには賛同できない。あまりにもしょくにんが不利な世の中だと思う。)

と言いたかったが、そんなこと言ってはおそらくケンカになってしまう。そんなことは望んでいない。


「逆に、施設から出たいしょくにんって全体でどれくらいの割合なんだろう」つい口に出してしまった。

「え、全員だろ」/「え、全員じゃないの?」のぶながとロージーは当然のように答えた。

「え?全員??確かなのかそれは?」二人とも、それは本気で言っているのか?

急に空調や冷蔵庫などのメカノイズが大きくなったと錯覚するほど場が沈黙した。


「な、なんか辛気臭い雰囲気になっちゃったわね ごめんねせっかく来てくれたのにこんな話になって

ロージー新たな門出を祝して、今日はパーティしましょ?」

「え、パーティ?やったー!」

重苦しい空気がユキの一言で浄化されたように軽くなった。

「え、ホント?私久々にサラのローストビースが食べたいわ!」

「ローストビーフか、そうなると夜遅くなっちゃうからロージー今日は泊っていきなさい!」

「そうなるかと思ってお泊りセットは持ってきたわ当然!」

OKと二つ返事を返すと俺たちはサラから袋を渡された。

「ささ、あなたたち お買い物行ってきて!」

買い物リストと、ついでに日用品も買ってきて


二人で買い物をしている道中、俺はのぶながに胸の内を伝えた。

「のぶなが、俺を脱走に誘ってくれてありがとう。外に出れてよかったと思っている。」

「なんだよいきなりどうした」

先ほどの重たい空気の感じが嫌だったのもあるが、脱走計画に誘ってくれたことに感謝を伝えたことがなかった。

「作戦参謀はデルタだろ?お前の頭が冴えてただけだ。」

「いやいや将軍様からお声がけいただかなければこうはなりませんでした」

「うむ 苦しゅうない 近こう寄れ」

「はは こちら買い物袋です ささどうぞ」

「お前…ちょっとサラに似てきたな…」

よかった なんてことない いつもの会話ができた。



その晩、5人はサラがいつも以上に気合を入れて作った飛び切りおいしい料理を食べ、

ボードゲームをし、大いに楽しんだ。

少し落ち込んでいるようにみえたのぶながも元気なったように見えた。

きっと久しぶりにしょくにんと会えて彼もうれしかったのかもしれない。


「あ、ロージーちょっと聞いていいか?」のぶながはロージーに聞きたいことがあるようだ。

「なにかしらのぶちゃん」

「の、のぶちゃんって… まあいいや、ロージーはどうやって収穫してるんだ?」

「私は今一人で部屋を借りているから、定期的に財団に頼んで収穫してもらっているわ」

「元々家出したしょくにんとか、財団で雇っているしょくにん用に、

当然収穫装置は結構な数を持っているわ」とサラが答えた。

「考えたこともなかったんだけどよ、収穫された肉ってどうなんの?」引き続きのぶながが質問した。

「のぶちゃんよ…おかしいな、施設でほとんど俺と一緒だったじゃないか 授業中何してたんだよ」

やれやれ、世話の焼ける友人だ。

「だからお前に声をかけたんだよ歩く辞書のデルタ君」

「お前、今バカにしただろ?」

「ほめてるんだよデルタ君 とてもじゃないけど俺にはできないことだ。」

全くのぶながは調子が良すぎるんだよ。


「万国しょくにん保護連合は公的な組織なんだ。つまり世界規模で各国ごとに運営している。

国から各市場に格安で俺たちの肉を流して、店頭に並んだり、ほかの公的な機関に流したりしている」

「そしてこれはサラから聞いて学んだことだけど、外しょくなどの法人にも少量流れてきて、

戦争難民へ供給したりしている。そして、我々のように施設外に出て保護しているしょくにんの収穫した肉も、

市民へ供給したり、市場に流したりしているんだ。」

「少し余談だけど、あなた達から収穫する肉はおおよそ20kg~30kg 1人当たり200gほど食べても、

100~150人分ほどの量になるのよ。うまく保存して私たち4人で生活しても、

せいぜい2週間で10kgちょっとって所かしら。」

のぶながと俺と二人で2週間で5~60kgほど取れるんだから、そりゃ大いに余るだろう。


「なるほどな、だからいつも大きな荷物を背負って配り続けてるんだな。」感心するのぶなが。

「それだけじゃなくて、余った分も売ってるのよ」

「おいそれって、俺たちのに…」

おっとのぶなが、それを言ったら俺たち分が悪いぞ!

「俺たちの肉がみんなの役に立ってぼくちゃんとってもうれぴー」


…数秒場が凍り付いたように沈黙した。

「どったのデルちゃん」

「お前のせいだろのぶなが!お前をかばったんだよ!」

「あほくさーサラも大変ね子供3人も抱えて」

「わかってくれる?ロージー!ユキがいなくなったらもう私耐えられないかも」

え、なんでのぶながだけじゃなく、俺まで手のかかる候補に入っているのですかサラさん。


そんないつもの調子でこの日は夜更かししてみんなで騒いだ。

俺たちにとっては日常かもしれないが、ロージーはとても楽しんでくれていたと後からサラに聞いた。



ロージーが訪れたこの日、俺達の運命が決まった。

いや、それはただのきっかけに過ぎないだけだったかもしれない。

元々我々の運命は産まれた時から決まっていたのかもしれない。

是非に及ばず。

俺達の進む道が明確に決まったのは間違いなくこの日がきっかけだ。


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