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05・呪の継承
数ヶ月後――
「何度も居なくなっちゃうのも困りものだなぁ」
管理会社の女は、隣から食べ物の腐った臭いがするという苦情が届き、原因は分かっていたから面倒くさそうに向かった。
「やっぱり……」
服は散らかり、腐臭に満たされた水恵の部屋に、洗面台の前に不自然に置かれた新品の化粧水に目を細めた。
住居者が居なくなった時、必ず化粧水が洗面台に置かれているのだ。
「下駄箱の下の段でも見つかるかぁ、でも変な所に隠すと祟られそうなんだよなぁ」
化粧水を手に取り、何処へ隠そうか考えていた……その時だった。前の鏡が裏から拳で叩かれて女は驚いて飛び上がり、その拍子に尻餅をついた。
「へ?ナニナニナニ?怖いんですけど!もうやだー!」
化粧水を肩掛け鞄にねじ込み、走って鏡の前から逃げて行くのだった。
女曰く、その時悲鳴のような、警告をするような、声が聞こえたと言う……




