表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

04・潤う

 水恵は化粧水のボトルを捨てようと、近所の川に投げ込んだ。ボトルは水面に沈み、波紋が広がった。ゆったりと不気味に広がるその円が、こんなんじゃ終わらないと言っているようで、水恵は息を呑んですぐさま背を向けて走り去った。


「こっ、ここまで遠い所まで来て捨てたのだから大丈夫……大丈夫よきっと――」



 だがその夜、彼女の夢に()()()が現れた。女は全身から水を滴らせ、こう囁いた。「私の水を奪った…お前も水になれ…」水恵は目を覚まし、全身が濡れていることに気づいた。汗だと思ったが、微かに香る甘い香りにさっきのは果たして夢だったのか混乱し、恐怖で動けず一睡もしないまま夜を明かした。


 窓から差し込む光にやっと落ち着いた恵水は、ベタつく身体を洗おうと風呂場に入る――っと鏡に目が止まる。彼女の肌は異様に白く、半透明になっていたのだ。鏡に触れると、指先が水のように溶け、鏡の中に吸い込まれた。「助けて!」と叫んだが、声はゴボゴボいうだけ、なんとか振り解こうと手に力を入れるが、まるで他人の体のように力は入らず、ゆっくりと、しかし確実に腕は鏡の中へ、やがて顔が――


「――ッツ」


 握られた手のその先には、口端を吊り上げて笑っている女が居た。水恵の全身は、水泡になり舞い散り、鏡の前には、着ていた服だけが置き去りにされるのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ