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はぐれものバディ ~村の子供に育てられたはぐれモンスターは、子供たちを助けるために、人間離れした兵士とバディを組みました~  作者: 廿楽 亜久
第5章 焼けた記憶

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 準備をしていただけあり、避難は迅速に行われていた。


「落ち着いて! この辺りに、モンスターは確認されてません! 焦らず、誘導に従ってください!」


 1階層に確認されていなかった、ゴーレムの出現もあり、混乱こそあったが、これで住人の避難は9割方終了したはずだ。


 ゆかりは、最後の住人の背中を見送ると、携帯を取り出す。

 明日葉が階層を破壊するまでは、確かに繋がっていたはずだが、今は繋がっていない。

 戦闘中で、手が離せないのか、それとも、また別の理由か。


「ゆかりちゃん」


 肩に乗せられた手に、顔を上げれば、窘めるような表情を浮かべる備前の顔。


「ごめんなさい。大丈夫よ。避難者の名簿での確認はできた?」


 不安そうな表情を隠し、避難した住人たちを確認している隊員へ、声をかけるゆかりを安心したように見送る備前は、小さく長く息を吐き出した。

 そして、銃を構え、入口を警備する隊員たちに声をかける。


「じゃあ、僕は、逃げ遅れた人がいないか、確認してくるよ。そっちもわかり次第、連絡ちょうだいね」

「はっ、はい!? 備前さんも避難を……!」


 予想外な言葉に、素っ頓狂な声を上げる隊員たち。

 当たり前だ。備前は、軍部の東部統括責任者で、本来なら、この場にいる誰よりも、先に避難すべき対象なのだから。


「いやいや、もし、ヴォルグレームスがこっちに来てたら、僕ぐらいしか、対応できるのいないでしょ」

「それはそうですが……」


 呆れたように答える備前に、隊員たちも、言葉に詰まってしまう。

 かつて、”力の明石、技の備前”と呼ばれるほどに、実力を持っていた備前の実力は、折り紙付きだ。


 それこそ、寵愛子である明日葉の、制御できていない力程度であれば、御せる程度には。


「そっちの指揮は、ゆかりちゃんに任せるからさ」

「せめて、護衛を」

「跳弾する援護は、不要だよ」


 気楽に手を振って、戻ろうとする備前に、護衛だけでもと叫ぶ隊員に、呆れたように備前は答えるが、ふと聞こえた人とは違う重い足音に目をやる。

 大型のゴーレムが、逃げる人を追って、ここまで来たらしい。


「心配いらないって」


 自分の身の丈よりも大きなゴーレム。


「僕も――」


 備前は、刀へ手をやると、


「ちゃんと強いから」


 一振りで、ゴーレムを両断した。


「同じゴーレムとはいえ、カーフ君とは、随分違うもんだね」


 明確な敵意と殺意が、備前に刺さる。


「君らも、言葉を話せたら少しは違うのか……いや、ダメだな。君らは、悪意しか持っていなさそうだ」


 振り下ろされる拳を避けながら、刀を突き刺す。


 ゴーレムの数は、明らかに多い。

 1階層は、住人がいたため、詳細にモンスターの数は、管理されていたはずだ。

 自然系のモンスターであるゴーレムのため、多少の漏れはあるにしろ、この数を漏らしたとは思えない。


 ただ、ゴーレムの種類としては、溶岩が混じっているものはなく、土や岩で形成されているものがほとんどだ。

 これで、溶岩でも混じっていた日には、手間がかかるというものだが、それは無さそうだ。


「ビゼン!」


 またこちらに向かって来ていたゴーレムは、飛んできた岩に砕かれ、倒れ込む。


「怪我はない!?」


 その岩を投げた張本人は、備前の事を心配そうに見下ろすと、まだ蠢いているゴーレムたちを巨大な手で包み込むと、数秒もしない内に、その場所からは消えた。


「あぁ、カーフ君も無事だったみたいだね」


 便利だな。という言葉は出さず、笑みを浮かべれば、カーフも安心したように表情を緩めた。


「ボクは平気! それより、アスハは!? ユカリも! 他の人も!」

「落ち着きなさいな。深呼吸でもしてさ。はい。吸って~吐いて~そう。いい調子」


 素直に言うことを聞くカーフに、どこか既視感を覚えるが、茶化すことはせず、今の状況を簡潔に説明していく。


「明日葉は、今、ヴォルグレームスのところに行ってる。戦闘に関しては、わからない」


 はっきりと口にする備前に、カーフは不安そうな表情をするが、備前はそのまま続けた。


「ゴーレムが突然現れた件も含めて、同じゴーレムである、ヴォルグレームスがここにいる可能性も否定はできない。カーフ君は、見てない?」

「ううん。見てない」

「そう」


 ゴーレムの勢いは収まってきている。

 ヴォルグレームスがここにいる様子もない。


 このまま行けば、数十分後には、明日葉への援軍を送ることも可能だ。


「…………カーフ君」


 ヴォルグレームスが、自分の城で、生活をしている人間たちを一人残らず殺すために、危険分子である明日葉をおびき出したわけじゃなければ。

 もし、最初から、ヴォルグレームスの目的が、自分を殺しかけた明日葉に向いていたなら。

 自分の命を危ぶまれる存在が、近くにいる方が恐ろしいと感じたなら。


 いくら、明日葉であっても、人間。

 戦い続け、体力が尽きれば、動けなくなるし、毒ガスの中にいれば、死ぬ。

 高温の水に浸かれば、皮膚が爛れる。


 この数年、ヴォルグレームスが、明日葉を倒す方法を考え続けていたのなら。


「今すぐに、明日葉のところにいってくれるかい?」


 備前の真剣な表情に、カーフは同じ表情で頷き返した。


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