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はぐれものバディ ~村の子供に育てられたはぐれモンスターは、子供たちを助けるために、人間離れした兵士とバディを組みました~  作者: 廿楽 亜久
第5章 焼けた記憶

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 目の前で、ビスケットでも割るかのように砕けたゴーレムに、唖然とするが、転がる破片はビスケットよりも重い音を立てていた。


「た、助かりました」


 砕けたゴーレムの核を探し、潰していた明日葉に礼を伝えれば、ピースサインを返してきた。


「随分とゴーレムを引き連れてきたみたいだね」

「2階層のゴーレムが、活発になってまして……一度、退避してきたのですが、今日に限って、数が多く」

「ルートは、いつもと変わらない?」

「はい。もちろん」


 ヴォルグレームスの埋まっている場所から、1階層まで戻るルートは決まっている。

 隊員が、定刻に帰還しない際、探す範囲を狭め、確実に救助するためである。


 そのため、そのルートは、常に整備・点検がされており、最も安全なルートでもあった。


「春茂ぇ、このまま、さっくり、ぼっこり、行っちゃダメ?」


 ガスマスクをつけながら、奥を指さす明日葉に、備前は困ったように頭をかく。


「行く気満々じゃない……」

「だって、もう()()()()()? あいつ」


 1階層よりもずっと熱気に包まれ、溶岩も流れている2階層。


 ヴォルグレームスが積極的に動いていた時よりは、まだ激しくないが、それでも、備前も感じていた。

 既に、ヴォルグレームスは再生している。


「えっ!? いや、でも、まだ核の反応はあるし……!」

「相手は、ゴーレムの上位種だからね。体なんて、その辺の物を使えば、すぐに再生できるだろうし……誘ってるのか、それとも別の事情か……」


 できることなら、後者がいい。

 何かしらの理由があり、まだ動けないなら、予定は狂うが、このままヴォルグレームスを討ちに向かえば、先手を打てる。


 問題なのは、前者だった場合だ。

 狙いが分からなければ、最も大きな戦力である明日葉を向かわせるのは、大きな損失になりかねない。


「明日葉。ふたつ、約束しよう」

「ん? うん」

「ひとつ、ヴォルグレームスがいなかったら、すぐに戻ってくること」


 これは、ヴォルグレームスの目的が、明日葉以外にある場合のため。

 一番の脅威である明日葉を、おびき出して、時間を稼ごうとしている。その間、上階層にいる人間を食らおうという算段だろう。


「ふたつ、もし、以前のように、全身が爛れるような怪我を負った場合や渡した装備が2つ以上破損した場合、即時撤退すること」


 ヴォルグレームスを、明日葉が倒せないとは思わない。

 しかし、それはあくまで、装備がある上での話だ。


 全身が高温の半固形であり、物理攻撃が効きにくい。

 その上、毒ガスという、明日葉への有効な攻撃手段を持ち合わせているヴォルグレームスに、装備が無くなれば、危険性は跳ね上がる。


「わかった。じゃあ、行ってくるね」


 明日葉はそう言い残すと、備前たちに背中を向けて、走り出した。


「春茂! ゴーレムたちが動き出したって聞いたけど……明日葉は?」


 戻ってきたゆかりは、明日葉の姿がないことに気が付くと、少しだけ険しい表情をして、備前に目をやる。

 見上げた表情は、静かに先を見つめていた。


「ヴォルグレームスは、もう動き出してる。明日葉は、先行させた。こっちは、ここにいる人、全員避難させるよ」


 ゆかりも、少しだけ2階層の方へ目をやるが、頷き、住人たちの避難誘導に向かおうとした時だ。

 ダンジョン全体が揺れた。


「うん……急いだほうが良さそうだ」

「ちょっと……今の、階層破壊した音よね……!? どういう状況?」


 備前の言う通り、ヴォルグレームスが動き出してるなら、階層の床を破壊する必要はない。

 だが、今の音は明らかに、階層の床を破壊した音だ。

 つまり、ヴォルグレームスの姿が確認されていないということ。


「ヴォルグレームスが罠を張ってる可能性がある」


 緊急時のサイレンを鳴らしながら、備前は、端的に今までの事を説明した。


*****


 サイレンが鳴り響く中、カーフは、何事かと周囲を見渡しながら、住人たちが慌てたように、荷物を持ち始める様に、階層の奥へ顔を向ける。


 ゆかりは大丈夫だと言っていたが、先程の揺れに、この不快な音は、何かが起きたということだ。


「おい! こんなところに、ゴーレムがいるぞ!! 離れろ!」


 その声の方に目をやれば、声を上げた男は、カーフとは別の方向に顔を向けたまま、叫んでいる。

 そして、何かから逃げるように走り出す男を追いかける、小さな動く岩。ゴーレムだ。


 カーフは、素早く走り寄ると、そのゴーレムを叩き割った。


「大丈夫!? 早く逃げて!」

「お、おぉ……? おぉ……」


 ゴーレムを倒すモンスターの様子に、男は困惑した様子だが、その背後に現れた男に、背中を強く掴まれていた。


「呆けてる場合か! 迷惑かけてんじゃねェよ!」

「イノブチ!」

「悪ィな! こいつは、俺が首根っこ掴んで、外に出るからよ!」

「うん。お願い!」


 猪渕がその男を連れていくと、カーフは、こちらに向かってくる小型のゴーレムたちに向き直った。


「さっきまでいなかったはずなのに……どこから……」


 発生源はわからない。

 だが、今は、このゴーレムたちに、避難している住人達を攻撃させないように、戦うしかない。


*****


 その頃、明日葉は、大きく開いた穴の底を見ていた。


 過去に、ヴォルグレームスを殴り埋めたその場所に、再び開けた穴の下。


 ひと際赤く、輝き、蠢いているそれがいた。


「あれかな……」


 脳裏に残っている記憶の姿ではないが、状況的に、ヴォルグレームスである可能性は高い。

 もし、違ったのなら、備前の言う通り、一度戻ろうと決め、明日葉は穴の中に飛び込んだ。


「――!!」


 床を通り過ぎたその瞬間、滲みだした赤い溶岩が、明日葉を捕まえるように取り囲んだ。


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