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はぐれものバディ ~村の子供に育てられたはぐれモンスターは、子供たちを助けるために、人間離れした兵士とバディを組みました~  作者: 廿楽 亜久
第5章 焼けた記憶

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02

 カーフたちが、ダンジョンの中に入れば、そこには木造の建築が立ち並んでいた。

 白い湯気が立ち上る中、活気あふれる街並み。


「ここ、ダンジョンだよね? どういうこと?」


 カーフが興奮したように、周囲を見渡せば見渡すほど、今まで見てきた、薄暗い不気味なダンジョンとは程遠い。

 ここは明るくて、活気にあふれている。


「死にダンだと、モンスターも少ないから、許可取れば住めるんだよ」


 特殊な素材やモンスターの素材の採取場、実験場などとして、不活化したダンジョンは利用されることがある。

 モンスターへの対応が取りにくいこともあり、居住区としての利用はあまりされないが、完全にないというわけではない。


「そうなんだ……危なくないの?」

「…………」


 カーフの疑問に、明日葉はしばらく悩んだ後、備前の方へ目をやり、呆れられていた。


「地上に比べれば、危ないよ。だから、色々決まり事があってね。毎日、再活性化していないかのチェックをしたり、16歳以下の入場を禁止するとかね。ここも寝泊まりしてるのは、軍関係者がほとんどだしね」


 確かに、見渡す限り、子供の姿は見えない。軍人の人も多いようだ。


「あれ? 備前さん、帰ってきてたのか」


 店の前を通ると、突然かけられる声に、備前も足を止める。


「今回はゆっくりできるのか?」

「2、3日は予定してるよ」

「一週間くらいはいれないのかね。明日葉だって、のんびりしたいよなぁ?」


 男が明日葉に目をやると、自然と目に入る、カーフをゆっくりと見上げると、明日葉に視線を戻す。


「友達?」

「うん」

「カーフです」

「おぉ……俺は、猪渕(いのぶち)だ。ここで肉屋をやってるから、落ち着いたら、寄ってくれよ。おまけするからよ」

「うん。ありがとう。イノブチ」


 笑顔の猪渕は、ゆっくりと明日葉の方に近づくと、


「どこで拾った。こんな礼儀正しい奴」


 そう小声で問いかけるのだった。


 店先で、色々な人に声をかけられることを数回、ようやくひとつの建物に辿り着いた。

 木で組まれた大きな建物だった。


「うわぁあぁぁああ!! 備前さん、早かったですね!?」

「そんな人をバケモノみたいに……悪いことでもしてた?」

「してない! してないです!! あ、明日葉ちゃんのその箱、こっちで預かるから、その辺りに置いといてくれる?」


 建物に入るなり、制服を着た女性に叫ばれたが、女性はどこかに電話をかけると、すぐに小走りにやってきた黒髪に桜の簪を挿した女性。


「春茂も、明日葉も。早かったわね」

「ただいま。車で来れてね」

「ゆかりちゃん。ただいまぁ」

「はい。おかえりなさい。明日葉」


 元気そうな明日葉の様子に、ゆかりは安心したように頬を緩ませる。

 そして、視線は、自然と明日葉の後ろにいるカーフへ向くが、唐突に、明日葉は両手を上げ、カーフの頭部を掴んだ。


「で! カーフ!」

「明日葉。嬉しいのはわかるけど、いきなり頭を掴むのはやめなさい」


 カーフの気にしていない様子からして、おそらく慣れているのだろうが、注意はしなければいけない。


「カーフです。初めまして」

「初めまして。桜井ゆかりです。かしこまらなくていいわよ。気楽に、”ゆかり”って呼んでちょうだい。みんなも、そう呼んでるから」

「えっと、じゃあ、よろしく。ユカリ」

「いい子です!」

「ふふふ……みたいね。私は、まだ仕事が終わってないから、先に部屋へ行っててくれる? カーフの事、ちゃんと案内するのよ」

「はーい。よし、カーフ、部屋行こう」


 備前は、挨拶があるからと、ゆかりと共に残り、カーフは明日葉に案内されながら、明日葉が暮らしていた部屋に向かう。


「優しそうな人だね」

「すごい優しいよ。私を拾ってくれた人だもん」


 そんな話は聞いたことが無かった。

 だけど、『お母さんみたいな人』というのは、血の繋がりがないからなのだろう。


「アスハも、拾われたの?」

「あれ? 言ったことなかったっけ?」

「ないよ! もぅ……」


 悪気があって隠していたわけではなく、単純に忘れていたらしい。

 カーフが呆れていれば、明日葉も苦笑しながら、視線を泳がせていた。


「だってほら、苗字だって違うし! なんか、わかりそうじゃん!」

「あ、そういえば、そうだね。みんな、違うね」


 小樟明日葉に、備前春茂、桜井ゆかり。

 全員の苗字が異なり、名前だけでは赤の他人だ。

 さすがに、本人たちが髪に挿している簪を見て、関係がないと思う人はいないだろうが。


「私は、小さいクヌギの木の下で拾われたから”小樟”。ふたりは……みんな、なんで一緒にならないんだろうって言ってる」

「そうなんだ……」

「だいたい、カーフだって、拾われた時の事、覚えてる? わざわざ言う? 聞いたことないんだけど」

「う゛……それを言われると、確かに言ってないし、覚えてないけどさ……」


 おぼろげな記憶がないわけではない。

 だが、はっきりと覚えている時には、既に涼介たちとの関係は、すっかり築かれていたはずだ。


 カーフが言いよどむと、珍しく口で勝ったと、両腕を振り上げる明日葉に、カーフはじっと、もの言いたげに見下ろすのだった。


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