表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
はぐれものバディ ~村の子供に育てられたはぐれモンスターは、子供たちを助けるために、人間離れした兵士とバディを組みました~  作者: 廿楽 亜久
第5章 焼けた記憶

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/52

01

 大きく揺れる車上で、カーフは小さく作り直した体で、明日葉の腕を強めに掴んでいた。

 都心部から離れた分、道が舗装されていないらしく、予想外に大きく揺れることがあるのと、もうひとつ。


「あ、見て見て。カーフ、見えてきた!」


 今、カーフは、明日葉の腕に抱えられているからだ。


「ねぇ、アスハ、中に戻らない!? 危ないよ!?」


 しかも、本来人が乗るべきではない、車の上だ。さすがに、危ないとカーフも声を上げる。


「大丈夫。カーフが落ちたら、ちゃんとキャッチしてあげるから」

「そういうことじゃなくて!」


 言葉の途中で、車が大きく跳ね、明日葉の体が浮いた。


「お?」

「うわぁぁ!?」


 慌てて腕を伸ばして、車の屋根を掴むカーフと、問題なさげに屋根へ足をつく明日葉。


「アーースーーハーー!」

「わかったって……」


 ご立腹のカーフに従い、大人しく、社内に戻れば、タブレットを見ていた備前が、珍しそうにこちらへ顔を向けてきた。


「カーフに怒られた」

「だから、窓開けるだけにしておきなさいって言ったじゃない」

「カーフ。元のサイズに戻っていいよ」

「やめなさい」


 嫌がらせをしようとする明日葉に、備前はため息をつけば、ほのかに香ってきた硫黄の香りに、窓の外へ目をやる。


「もうすぐ着くから、大人しくしてなさいね」

「「はぁい」」


 素直に返事をするふたりに、備前はまたタブレットへ視線を落とした。


 事の始まりは、一週間前のことだ。

 第八部隊の部屋にやってきた備前は、明日葉のことを一週間ほど借りたいと申し出てきた。


「はぁ……会議でもあるんですか?」


 統括責任者である備前の護衛として、明日葉が駆り出されることは多い。

 ただ、大きな会議があるという話は聞いていない。


「里帰りみたいなもんだよ」

「あ、ゆかりちゃんがカーフに会いたいって言ってたから、連れて行っていいよね?」

「それ、僕のところにも連絡きたよ……カーフ君も構わないかい?」

「うん。もちろん」


 ゆかりと言えば、以前、明日葉と一緒に写真を撮って送った人物だったはずだ。


「里帰りってことは、明日葉の実家?」

「うん。そうだよ。あ、でも、こいのぼりは上げてないかも……」

「前に言ってたやつ?」

「うん。でも、5月に上げるから、たぶん見れないなぁ……」

「そっかぁ……でも、そのユカリちゃん? って人に会うんだよね」


 明日葉や備前の様子では、随分親しいようだ。


「そうだよ。えっと……お母さん、みたいな人」

「アスハの、お母さん……」


 少し恥ずかしそうに視線を逸らした明日葉に、カーフはしばらく言葉を失った後、慌てたように、自分の体に触れる。


「ボク、何か準備した方がいいかな!? アスハのお母さんなら、大丈夫……!?」

「しなくていいと思うけど、”私のお母さんなら”ってどういう意味?」


 くだらない喧嘩をしているふたりに、呆れるような視線を送りながら、備前は近江の方へ目をやった。


「世々継君。頼んでた、アレ、できてる?」

「あぁ……できてますよ。微調整は必要でしょうけど、出発はいつです?」

「週末だから、それまでに調整しておいて。あとカーフ君の体重、減らせる?」

「カーフの体重? まぁ、物質を吐き出せば、そのまま減るみたいなんで、できるでしょうけど……軍用の魔力駆動車なら、カーフが乗っても動きますよ?」


 体も、限界はあるようだが、人の肩や頭に乗ることができる程度には小さくなれる。

 ただし、重さはそのままのため、サイズとして持てても、実際に持ち上げられるのは、明日葉くらいだ。


「休暇だから、軍用車は使うわけにいかなくてね。馬車を使うことになると思うんだけど」

「なるほど。そりゃ確かに、カーフの普段の体重だと、きついですね。200㎏程度には抑えられたはずなんで、そっちも何とかできます」

「助かるよ」

「このくらいは全然。むしろ、濱家さんから、素材提供のリストを片付けられる、いい機会です」


 見せられた、濱家からのアマルガムゴーレムの素材提供のリストは、あくまで無理の範囲ということなのだろうが、スクロールバーが随分と小さな資料だった。


 結局、備前の秘書である珠洲に、小型の魔力駆動車を用意され、馬車を使う必要は無くなり、想定していたよりも早く、目的地に着くことはできそうだ。


「到着しました」

「ありがとうね」


 備前に礼を言われた運転手は、少しだけ言い辛そうに、しかし、意を決したように、問いかけた。


「あの、本当に、おふたりだけでよろしいのですか? せめて、第八部隊は揃えるべきでは?」

「構わないよ。本当は、休暇で来るつもりだったんだから。珠洲ちゃんが、気を利かせてくれただけでね」

「……応援が必要でしたら、すぐに連絡を」

「助かるよ」


 運転手は、心配そうな表情こそしていたが、備前の言葉を信じて、帰って行った。

 残ったのは、備前と明日葉、カーフの三人。


「おっきくなった」


 明日葉の腕から下りた、カーフは、体を元の大きさまで戻した。


「こっちのほうが落ち着くからね。中は空洞だけど」

「本当だ!」

「ちょっとは遠慮しなよ」


 遠慮なく、カーフの腹部に腕を突っ込んでいる明日葉に呆れるが、明日葉は、もう片方の腕まで入れ始めた。

 両手で探っても、カーフの中身は、カーフの言う通り、空洞になっていて、何もない。


「スカスカーフじゃん」

「うまくない」


 明日葉の腕を引き抜きながら、備前の方へ目をやれば、その見覚えのある入口の形。


「あれ? ダンジョン?」


 魔力の込められた魔石に囲われた門のような構造の入口。

 ダンジョンの入り口によく似ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ