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はぐれものバディ ~村の子供に育てられたはぐれモンスターは、子供たちを助けるために、人間離れした兵士とバディを組みました~  作者: 廿楽 亜久
第4章 霧に紛れる鏡影

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02

 木竜村は、妙な静けさに包まれていた。

 建物の外に出ているのは、明日葉たちだけで、並んでいる家からも物音ひとつしない。


「皆、ワンダラースケアロウに連れていかれないよう、必要時以外、外出は控えるよう命じています」


 村長に連れてこられたのは、診療所で、扉を開ける前から、ひどい怒号が聞こえている。

 ワンダラースケアロウに洗脳された村人だという。


「最初は、牢に入れていたのですが、数が足りず……けが人も増えていて、ベッドに縛り付けている状態です」


 中に入れば、より鮮明に届く怒号に、全員が眉を潜めた。


「まずは、こちらの治療からお願いをしてもよろしいですか?」


 縛り付けられたまま暴れている村人は、新たに入ってきた炎歌を見つけると、怒号が甲高い声に変わった。


「きれいな姉ちゃんじゃねェか!! こっちに来てくれよ!! なァ! なァ!!」

「はぁ……ここのドクターは? カルテを見せていただきたいのですが」


 村唯一の医者が、用意したカルテを炎歌が見ようとした時だ。

 ひどく鈍い音。


 音の方へ目をやれば、刀が鞘に納められたまま、叫び続けている男の鼻筋を掠めるように、壁に突き刺さっていた。


「ほんっっとにうっさいっっ!!!!」

「何しやがんだ!? クソガキ!! 女のクセに反抗しやがって!!!! 泣かせんぞ!?」

「やってみ――」

「アスハ!? ダメだって!!」


 本当に殴りかねない明日葉を、慌ててカーフが羽交い絞めにして、持ち上げた。


「おーおぉ……今でも、収まるどころか、燃え上がったよ……スゲェな……」


 鞘が壁にめり込んでいるのは、中々衝撃的な光景だと思うが、全く怯まないのは、もはや動物的な危機管理能力が欠如してると言えるだろう。

 

「あれ、修繕費こっち持ちかな……」

「経費で落ちるでしょ。それより、こんな状況じゃ、治療どころじゃないだろ。眠らせた方がよくないか?」

「鎮静剤は、すでに在庫がつきまして」

「よし! 物理!!」

「加減加減加減!!!!」


 相手は、訓練も受けていない一般人だと、明日葉に注意し続けること数分、診療所は、驚くほど静かになっていた。


 炎歌が、村人を治療している間、医者と看護師は、疲れ切った様子で、患者たちの説明をしていた。


「こんなことを言ってはいけないのかもしれませんが……正直、あの中にいるのは、少し限界だったので、助かりました……」

「いや、わかります。うちのなんて、5分も保ってないですし」

「あはは……あの人が、寵愛子の?」


 カーフの頭に顎を乗せながら、まだ不機嫌そうに文句を言っている明日葉に目をやりながら、看護師は苦笑いを零した。

 モンスターと一緒にいたり、刀を壁にめり込ませたり、驚くことも多かったが、落ち着いてみれば、年齢相応のかわいらしいところもあるらしい。


「さっきはありがとうね。クッキーくらいしかないけど、どうぞ」

「わーい! ありがとうございます」

「いいの?」

「患者さんのもらいものだけどね」


 嬉しそうにクッキーを食べる明日葉とカーフに、看護師も頬を緩める。


「それにしても、こんなに大変そうなのに、ふたりしかいないの?」

「もうふたりいるよ。ただ、24時間あんな感じだから、警察の人と交代しながら休んでも、中々ね……」

「殴って気絶させちゃえば?」

「さすがに、それはできないかな……できたら、すごく楽なんだけどね」


 疲れた様子で、視線を逸らし、ため息を漏らす様が、これまでの苦労を物語っていた。


「大変だね……何か手伝えることある?」

「ありがとう。今のところ、あの、高倉さんって方が、治療してくれてるから、大丈夫よ」

「そっか。何かあったら言ってね。あと、アスハ。頭にクッキーのこぼさないでよ……」

「吸収できるんでしょー」

「だからって、こぼしていいわけじゃないんだからね」


 文句を言いながらも、頭の上に乗ったクッキーの欠片を、吸収しているカーフに、看護師も耐え切れないとばかりに、小さく肩を震わせる。


「ふふふ……ふたりとも、兄弟みたいね」

「こんな妹いらないよ」

「え……妹? お姉ちゃんじゃなくて?」

「キミのどこが年上だよ」


 予想外だとばかりに、驚く明日葉に、カーフは、心底呆れたような表情をするのだった。


「それにしても、エンカって治療もできたんだね」


 先程から、医者と看護師と共に、怪我人や錯乱している人の治療を行っている炎歌に、カーフがふと言葉を漏らせば、近江も思い出したように声を漏らした。


「そっか。言ったことなかったな。元々、姐さんは、治療部隊の人間で、むしろ、あっちが専門」

「そうなの?」

「あぁ。まぁ、明日葉は、怪我してもすぐ治るから、うちじゃあ、出番がないんだけどな」


 結果、事務作業を主に行っていることが多いが、本来は、今のような、治療などが仕事なのだ。


「というか、ドラゴンの血縁者だから、普通の隊員よりも強いし、治療部隊にも、もったいない戦力なんだけどな」


 明日葉に惹かれてやってきたとは聞いているが、そんな経歴があるとは知らなかった。


「なんでも、強い奴を探して、治療部隊にいたんだと」

「どういうこと?」

「怪我をしても、生きて帰還して、戦線復帰できる奴こそ、真の強者なんだとさ」

「へぇ……」


 そう豪語していたはずの炎歌が、最終的に見つけた強者である明日葉は、全く別の場所で見つけることになったのだが、それはまた別の話である。


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