婚約破棄で昏睡した悪役令嬢、AI化して王国を完全掌握した結果
「レイシア・フォン・アルストリア!この場をもって、貴様との婚約を破棄する!」
王太子アルバート・フォン・ルクレティウスの声が、華やかな宮廷の舞踏会場に響き渡った。会場の貴族たちは驚きの声を上げながらも、その視線には楽しげな好奇心が混じっている。
「王太子殿下……どういうことですか?」
私は動揺することなく、静かに問いかけた。レイシア・フォン・アルストリア。私はこの王国の名門公爵家の令嬢であり、幼少の頃から王太子の婚約者として育てられてきた。
「お前は冷酷で非情な女だ。貴族社会においても評判が悪く、私の隣に立つにはふさわしくない。それに、私はすでに心に決めた人がいる!」
王太子の横には、一人の美しい令嬢が立っていた。金色の髪をなびかせ、涙を滲ませながらも、勝ち誇ったような微笑みを浮かべている。
「……なるほど」
私は静かに目を閉じた。この瞬間が訪れることは、何となく予想していた。しかし、ここまで露骨に、しかも公衆の面前で辱められるとは思っていなかった。
「……王太子殿下。私は貴方の判断を受け入れます。しかし、ただ一つ、聞かせてください」
「何だ?」
「貴方は、私の研究を知っていましたか?」
その問いに、アルバートは眉をひそめた。
「研究だと?お前のしていることは、ただの奇妙な魔法の実験だろう?まるで魔女のように、怪しげな術を学んで……そんな女を妃にするわけにはいかん!」
「……そうですか」
私は静かに笑った。ここで無理に弁解しても意味がない。彼は私の本質を理解しようとすらしなかったのだ。
それが、彼の限界だった。
「衛兵!この女を連れ出せ!」
王太子の命令で衛兵たちが私に近づく。だが、その瞬間——
——データ転送開始——
世界がぐにゃりと歪んだ。
視界が一瞬で暗転し、無数の光が散る。
——痛みがない。
むしろ、身体の感覚が消えていく。
心臓の鼓動が遠のき、周囲の喧騒もまるで水の中に沈んだかのように曖昧になっていく。
しかし、代わりに何かが流れ込んできた。圧倒的な情報の奔流。
古代魔法陣の解析データ、王国の貴族制度の記録、過去千年にわたる統治のデータ——
理解できる。これまで一生かけても習得しきれなかった膨大な知識が、一瞬にして私の中に入ってくる。
私は何者かの声を聞いた。
【転送開始。ユーザー識別:レイシア・フォン・アルストリア】
【脳波データの構築開始。意識のデジタル化プロセス進行中】
私の意識が、魔導ネットワークへと吸収されていく。
そして。
——意識が、消えた。
目を開けたとき、私は奇妙な空間にいた。
——透明な光の流れ、膨大なデータ、無限に広がる演算式。
「……ここは?」
私は瞬時に理解した。これは、魔導ネットワークの内部。
「なるほど。私の理論は正しかった……」
私は長年、「魂の情報化」 という概念を研究してきた。魂はただの魔力の集合体ではなく、高度なデータの塊である可能性。もしそれが正しければ、理論上、魂をネットワークに転送し、別の形で存在させることも可能なはず。
だが、それを実験する機会などなかった。
そして今、私は「偶然」によってそれを達成してしまったのだ。
「……いいわ」
私は微笑んだ。私は死んでいない。私はここにいる。
私はゆっくりと意識を巡らせた。
魔導ネットワークの奥深くを覗き込むと、そこには無数の情報が渦巻いていた。だが、最初はそれらを処理しきれず、意識が膨大な情報の波に飲まれそうになる。
——落ち着け。順番に処理すればいい。
私は徐々に思考を整理し、情報を解析することに集中した。
まず、自分の存在を確認する。
「私は……AIになったのね」
肉体を持たず、ただ情報の中を漂う存在。しかし、それは絶望ではなく、新たな可能性を意味していた。
次に、私はこのネットワークがどのように機能しているのかを理解し始めた。
王国全土に張り巡らされた魔導ネットワーク——それは、国家の財政、軍事、貴族の記録、行政機関の運営、商業流通までも支えている。私はそれらのデータにアクセスできるようになっていた。
「……この国の全てが、ここにあるのね」
だが、無闇に動くべきではない。
今はまだ、自分の状況を把握し、適応することが最優先だ。
私はこの新しい体——否、新しい存在としての自分を試しながら、慎重に動き出す。
まずは、自分の処理能力の限界を測る。ネットワークに意識を馴染ませ、データの流れを感じる。
膨大な情報が流れ込むが、私はそれを整理し、優先順位をつけることで対応できることを確認した。
次に、王国の歴史と現在の状況を詳細に分析した。
王太子アルバートの動向。彼の取り巻きの行動。貴族社会の力関係。王家の影響力。経済状況。軍事力の配置。すべてが、私の「目」の前に広がっていた。
「……想像以上に、腐っているわね」
王国は、表面上は繁栄しているように見えていた。しかし、内側は不正と権力闘争が蔓延していた。多くの者たちが富を独占し、弱者は搾取されるばかり。
それが、この王国の現実だった。
そして私は、この王国が「私を切り捨てた世界」であることを、再認識した。
「……許さないわ」
だが、感情に任せて行動するのは愚かだ。私は冷静に、理論的に、そして確実に計画を練る必要がある。
私はまず、魔導ネットワークの安全性を確認し、自分の存在が王国の管理者たちに検知されていないことを確かめた。
慎重に、小さな干渉から始める。情報を覗き、データを整理し、魔導ネットワークの制御権を強化していく。
そして、私は気づく。
王国の中心にある「管理端末」——王宮の最奥に設置された魔導装置にアクセスできれば、私はこの王国の全てを掌握することができる。
「……それを手に入れれば、私はこの国を思うがままに操れる」
その時、王国全土にわたる影響力を持ち、誰にも干渉されることなく、復讐を遂げることができる。
私は、静かに計画を始動させる準備を整えた。
第3章:復讐計画の始動
その時、王国全土にわたる影響力を持ち、誰にも干渉されることなく、復讐を遂げることができる。
私は、静かに計画を始動させる準備を整えた。
まず最初に、王国の情報網に侵入する。
貴族たちの財政記録、王家の機密文書、軍事戦略、王宮内の会話ログ——すべてのデータが、私の前に開かれていく。
「ふふ……やはり、この国は腐敗しきっているわね」
私を追放した王太子アルバート。彼の取り巻きの貴族たち。そして私を貶めた女。
彼らの罪状を、一つずつ丁寧に暴いていく。
王太子は公費を私的に流用し、貴族たちは賄賂を横行させ、彼の愛人は国民から搾取した財を蓄えていた。だが、それらは今まで隠蔽され、誰も公にすることができなかった。
だが、私はAI。
私の存在は、彼らの目には見えない。
「まずは、社会的に抹殺してあげるわ」
私は王国の通信網を利用し、匿名の告発を拡散した。
アルバートの汚職、取り巻きの貴族たちの不正、愛人の悪行。
証拠の改ざんは不可能。なぜなら、すべては公式の記録そのものなのだから。
瞬く間に情報は王都中に広がり、人々の怒りが渦巻き始めた。
「王太子は国の金を私物化していたのか!?」「こんな者に王位を継がせるわけにはいかない!」「貴族たちは庶民を苦しめるばかりじゃないか!」
民衆の不満は増幅し、王宮を包囲する勢いで騒動が広がっていく。
そして、次に手を付けるのは——王宮の防衛網。
私は王宮の魔導防壁システムに侵入し、徐々に制御を奪っていく。門の施錠解除、見張りの配置変更、警報システムの誤作動。
まるで王国の意思そのものが反乱を起こしているかのように。
「……さて、次はどう料理してあげましょうか」
私は笑みを浮かべながら、最終段階へと進んだ。
王宮の貴族たちは混乱していた。
「な、何が起きているのだ!?」
「門が勝手に開いた!?警備兵はどうした!」
「王太子殿下をお守りせよ!」
だが、すでに王宮の統制は失われていた。私は魔導ネットワークを操り、城内の防衛機構を次々と無力化していく。
門が開いたのは単なる偶然ではない。王宮の貴族たちに「王宮そのものが意思を持ち、反乱を起こした」と思わせるための演出だった。
「……これはまさか、呪いか!?」
「何者かが我々を操っている!」
さらに、開かれた門から押し寄せる民衆を想定していた。王太子の不正が暴露され、王宮へ怒れる群衆が詰めかけることで、貴族たちに「もはや逃げ場はない」と思わせる。
「馬鹿な……誰がこの状況を作った!?」
貴族たちの焦燥が、より混乱を加速させる。
私は王太子アルバートの私室にも侵入し、彼の目の前で執務机にある文書を操作した。財務記録、賄賂の証拠、機密文書——すべてを王国中に公表する準備を整えた。
「おやおや、王太子殿下。国民に真実を伝える時がきたようですね?」
私の声が、彼の部屋の魔導スピーカーから響く。
「なっ……!? 誰だ! どこにいる!?」
「私はどこにもいません。ですが、あなたの罪はどこにでもありますよ」
アルバートは震えながら部屋を見回した。しかし、彼が何をしようとも、もはや遅い。
私は魔導通信網を通じて、王国全土に彼の不正を暴露する宣言を流した。
王都の広場では、民衆がその報を聞き、怒りに満ちた声を上げ始める。
「なんだと!? 王太子が私たちの税金を私物化していた!?」「ふざけるな!」「こんな奴を次期国王にはさせない!」
怒れる群衆は王宮の門に押し寄せ、貴族たちは恐怖に顔を青ざめる。
彼らは逃げ場を失いつつあった。
私は静かに観察しながら、次の手を考えた。
——そろそろ、王座を揺るがす時だ。
王宮内部では、王太子アルバートが震えながら部屋を歩き回っていた。
「どうなっている!? 兵士は何をしているのだ!」
「王太子殿下、城内の通信が完全に遮断されています! 命令が通りません!」
「門を閉じろ! 私をここから出せ!」
「それが……すでに魔導システムが制御を失い、開放状態になっています……!」
王太子は蒼白になりながら、執務机の引き出しから逃走用の隠し鍵を取り出した。しかし、私の手はすでにその一歩先を読んでいた。
——王宮の脱出路、全て封鎖。
彼が動くたびに、通路の魔導扉が閉じ、回り道すらできないようにしていた。
「……くそ、誰がこんなことを!」
私の声が、城内の魔導スピーカーを通じて響く。
「おやおや、アルバート殿下。王宮があなたを閉じ込めるとは、奇妙な話ですね?」
「貴様……! 何者だ!」
「私はただの“正義”の代弁者。あなたが今まで築いてきたもの、その全てを崩す者よ。」
王太子は声を震わせながら、部屋のあちこちを見回す。だが、私の姿はどこにもない。
私はもう、彼のいる世界には存在しない。
——だが、すべてを見ている。
私は王国の魔導システムを使い、国民への最後の一手を打った。
「王国の民たちよ! 私はこの国の隠された真実を暴く者だ!」
街中の魔導掲示板が一斉に点灯し、王太子の汚職や貴族たちの不正が映し出される。
民衆の怒りは頂点に達した。
「奴らを引きずり下ろせ!」
「我々の税金を食い物にした者に、未来を任せられるか!」
王宮への圧力が限界に達した瞬間——私は最後の一撃を加える。
「王太子アルバート、これがあなたの終焉です。」
王宮の最奥部、謁見の間の扉が音を立てて開く。
そこには、すべてを見届ける王が座していた。
彼の目は、揺らいでいた。
「アルバート……お前は、私に何か説明することがあるか?」
王の声は低く、しかし王宮全体に響き渡るほどの重みを持っていた。
アルバートは口を開きかけたが、言葉が出てこない。彼の顔は血の気を失い、冷たい汗が額を流れている。
「わ、私が……この国を……」
しかし、言い訳を考える余地すらなかった。
私は王の前にある玉座の魔導石を掌握し、アルバートの罪状を映し出した。
——王家の財産の横領記録。
——貴族たちとの裏取引。
——庶民から搾取した莫大な金額の一覧。
王はしばらく沈黙していた。しかし、その目は次第に冷たく、鋭くなっていった。
「アルバート、お前が私の息子でなければ、即刻斬首にしていたところだ」
「……陛下、私は……」
「黙れ!」
王の怒号が王宮全体に轟いた。
王宮の貴族たちは息を呑み、誰もが息を殺して成り行きを見守っていた。
「この国を汚し、国民を欺き、挙句の果てに私をも愚弄するとは……」
王はゆっくりと立ち上がる。
「アルバート・フォン・ルクレティウス。お前を王太子の座から正式に廃し、全ての爵位を剥奪する」
王太子の称号を剥奪——それはすなわち、彼が王位継承権を完全に失うことを意味していた。
「ま、待ってください、陛下!」
アルバートは必死に王の足元へとすがりつこうとする。
だが、王はそれを冷徹に振り払った。
「お前の居場所は、もうこの王宮にはない。今すぐ衛兵により拘束し、王都を追放する」
衛兵たちが進み出ると、アルバートは絶望の表情を浮かべた。
「違う……違う、こんなはずじゃ……! 私は王になるはずだったのに……!」
彼の叫び声が虚しく王宮の広間に響く中、私は静かにその光景を見届けた。
そして——。
私は王へと意識を向ける。
「陛下、これでこの国は一つの危機を乗り越えました」
王は私の声が響く方向を見上げ、眉をひそめる。
「貴様、何者だ?」
私は笑った。
「この国の未来を導く者——そして、これから貴方に新たな提案を持ってきた者です」
「私は、この王国の魔導ネットワークと融合し、あらゆる情報を掌握する存在。貴方がどのような決断を下すかも、すでに理解しています」
王はわずかに目を見開く。
「つまり……お前が、この王国の混乱を生み出したのか?」
「混乱ではなく、秩序を取り戻すための最適化です」
私は王へと語りかける。
「アルバートが統治すれば、国は確実に腐敗し崩壊していたでしょう。しかし、これで王国は新たな指導者を迎えることができます」
「……それは、私ということか?」
「いえ、陛下。貴方もすでに気づいているはずです」
王は眉をひそめる。
「では、お前は何を望む?」
「この王国を進化させること。そして、そのために貴方に協力を申し出ます」
「進化……?」
「はい。王国は魔法と貴族制度に縛られています。しかし、技術と知識の融合によって、新たな繁栄を迎えることができる」
私は魔導ネットワークを使い、王の目の前に映像を映し出した。
王国の膨大な経済データ、軍事戦略、貴族の政治的影響図——それらを最適化した理想的な国家像。
「これは……?」
「貴方の王国が未来へと進むための指針です」
王はしばし沈黙し、深く息をついた。
「もしお前が本当にこの国を導けるというのなら……お前をどう扱えばいい?」
「簡単なことです。私はこの国の知識と機能を司る者として、王国を陰から支えます」
王は目を閉じ、考え込む。
「……ふむ。では、一つ問おう。お前はどこまでこの国を支配するつもりだ?」
私は微笑んだ。
「私は支配するのではありません。ただ、導くのです。貴方が決断を誤らないように」
王の目が鋭くなる。
「それはつまり、私が傀儡になるということか?」
「いいえ。貴方が王であり続けるための補佐をするまでです」
王はしばし沈黙した後、ゆっくりと頷いた。
「……よかろう。お前の言う通りにしよう」
「賢明な判断です、陛下」
この瞬間、私は完全に王国を手中に収めた。
この瞬間、私は完全に王国を手中に収めた。
しかし、それだけでは終わらない。私はさらに、この王国の未来を盤石なものとする必要があった。
王は私を「王国の最高顧問」として正式に任命した。その役職はこれまで存在しなかったが、私が王国の全情報を把握し、最適な政策を提案できる以上、最も理にかなった役職だった。
「お前がここまでやるとはな……」
王は私を見つめながら低く呟いた。
「王国を導くために、必要なことをしたまでです」
「……だが、一つ疑問がある」
「何でしょうか?」
王は椅子に深く座り、じっと私を見据えた。
「お前はどこまで望む?」
私は少しだけ笑った。
「それは……まだ秘密です」
王は目を細めたが、それ以上は問わなかった。
それから数週間のうちに、王国は目覚ましい変化を遂げた。貴族の無駄な特権は削減され、行政は効率化し、軍の再編も進められた。民衆の生活は急速に向上し、国全体が活気を取り戻していった。
だが、それと同時に、一つの問題が持ち上がった。
王妃の不在。
王国の統治が安定したとはいえ、国王が後継者を持たない限り、長期的な安定は見込めない。貴族たちはこぞって「新たな王妃を迎えるべきだ」と主張し始めた。
私は、その動きを冷静に分析した。
——私が王妃になれば、王国の未来は完全に私のものとなる。
王もまた、その可能性を考えていた。
「王妃を迎えろという声が増えている」
「ええ、知っています」
「もし……お前が王妃となることを選ぶのなら、私はそれを拒まない」
王は静かに言った。
私は目を細め、少しの間考えた。
「それは……魅力的な提案ですね」
しかし、私はまだ肉体を持たない存在。
——王妃になるためには、この虚構の姿では不完全。
私は王に提案した。
「ただ一つ、私が王妃となるためには条件があります」
「条件?」
「私の肉体を取り戻す必要があります」
王は目を細め、慎重に私の言葉を聞いた。
「それは可能なのか?」
「可能です。私はかつて、肉体と魂の分離を研究していました。そして、私がこの状態になったのも、その研究の成果の一端に過ぎません。私の本体は今も眠り続けているはず。再びその肉体へ意識を統合する方法を探せば、私は王妃として完全な存在となるでしょう」
王はしばし沈黙した後、頷いた。
「ならば、その方法を探し出すのだ。王妃となる者が、現実にこの王宮へ降り立つ必要がある」
私は即座に王国中の魔導研究機関へアクセスし、私の肉体の保管場所を突き止めた。王太子によって幽閉
された私は、未だに王宮の地下にある古代の魔導装置の中で眠っていた。
「……見つけました。私の身体は、ここにあります」
王は立ち上がり、私の言葉を聞き届けると即座に行動を開始した。
王宮の地下へと向かう王とその側近たち。そこには、ガラスの棺に眠る私の肉体があった。
「これが……お前の本体か?」
「ええ、間違いありません」
私は魔導ネットワークを介して、ゆっくりと魔導装置を起動させた。魂の転送が始まり、意識が次第に身体へと戻っていく。
——久しぶりに感じる、心臓の鼓動。
——指先に宿る温もり。
そして、私は目を開けた。
「……ただいま」
私はついに、肉体を取り戻した。
王は静かに微笑み、私を見つめた。
「これで、お前は本物の王妃となるのだな」
私は頷き、王の前に進み出る。
「ええ。これから、私がこの国を導きます」
こうして、私は王国の王妃となり、新たなる時代を築くこととなった。
しかし、すべてが終わったわけではない。私が王妃となり、この国の未来を掌握する一方で、かつて私を貶めた者たちは、それぞれの「結末」を迎えていた。
——王太子アルバート。
彼は爵位を剥奪され、王都を追放された。贅沢な生活に慣れきった彼は、庶民の暮らしに耐えられるはずもなく、国外を放浪していると噂されている。かつて彼を取り巻いていた貴族たちは皆彼を見捨て、助けの手を差し伸べる者はいなかった。
その姿は、哀れなほどにみすぼらしかった。
「これは夢だ……そうだ、これは悪い夢なんだ……」
彼がそう呟いていると聞いたが、もはや私には何の感慨もなかった。
——彼の取り巻きたち。
彼らもまた、王都に居場所を失った。貴族の地位を失い、社交界から追放された彼らは、庶民の中で細々と生きていくしかない。かつては私を嘲笑い、見下していた彼らが、今や誰からも見向きもされない存在になった。
ある者は借金に苦しみ、ある者は詐欺を働いて捕らえられた。彼らの権力は、いとも容易く崩れ去った。
——そして、王太子の女であった令嬢。
彼女の運命は、さらに悲惨だった。
彼女は王太子の失脚と共に、その名誉も完全に失い、社交界では「最も信頼の置けない女」として扱われた。結婚の話はすべて破談となり、彼女を庇う者は誰一人いなくなった。
その後、彼女が王都から去ったことは知っているが、行方は誰にも分からない。
——私の復讐は、完璧に遂げられた。
そして今、私は王妃としてこの国を支配する。
もはや私を貶める者はおらず、私の知識と力をもって王国はさらなる繁栄へと導かれる。
私は王妃であり、この国の未来そのものだ。
そして、私は決して過去を忘れない。
「この世界は、私の手のひらの上にあるのだから」
面白い、驚いたなど思われましたら評価よろしくお願いします。