第二話 殺し屋と公爵家
「僕の従者にならないか?」
シャトンはあまりにも以外な言葉が飛んできたので、動揺している様子だった。それは周りの護衛たちも同じようである。
「お恐れながら、なぜ私なのでしょうか。私はただの乞食。慈悲は必要ございません。」
シャトンがこう言うと、護衛たちも口々に
「そうですよ!」
「従者なら貴族の令息から選べばよろしいかと。」
といった。そこに、彼の少し小さめの体からは想像もつかない冷たい声が走った。
「僕はシャトンと話しているんだ。黙ってろ」
(なるほど、この子が次期公爵なのも頷ける)とシャトンが悠々と構えていると、少年の顔がいきなり近づいて来た。
「駄目か?」
シャトンは上目遣いの可愛い表情を突きつけられた。しかし、その直後耳元で、
「君の観察力、教養、そしてなんといってもそのフィジカル。そのすべてが従者としての十分な才覚だ。お金もそうとうな額を出せる。君にとっても良い了見だと思うけど?」
と言われた。シャトンは思わず少し離れたところに飛び下がった。(この男、自分と交渉術をよく知っている。それに…)
「わかりました。そのお話謹んでお受けいたします。」
シャトンは少し口角を上げていた。
(こいつといたら退屈しなさそうだ。)
馬車で数十分ゆられ、ついたのは白と紺で上品に作られた公爵家だった。庭、館の合計面積は大体小さな町ひとつ分はありそうだ。シャトンは一足先に馬車を降り、令息を完璧な角度で迎えていた。本当はシャトンは馬車ではなく護衛の馬でいいといったのだが、令息が強引に馬車に乗せたのだ。
「帰ってきたのか。フォス。」
とても低く太い声が響いた。シャトンは冷静に頭を下げた。(この人が公爵閣下か。相当強そうだ。)そんな事を考えている間に、彼は強い殺気を放っていた。場にいる皆が凍りついたが、シャトンだけは違かった。その殺気の波を感じなかったのではなく、さほどの影響がなかったのだ。そして、
「おやめください公爵閣下。フォス様も萎縮していらっしゃいます。」
「はて、なんのことだか。」
「最初からとてつもない殺気を放っているではございませんか。私を試すのは十分なはずでございましょう?」
すると公爵はいきなり大きな声で笑い出した。
「フォスが連れてきた平民がどのようなものかと試していたが、これほどとは!フォス。好きなようにするが良い。」
フォスは殺気にあてられながらも、笑顔で
「ありがとうございます!父上!」
と返した。そしてこちらに振り向いて、言った。
「シャトン、ようこそ我がハイリッヒ公爵家へ!」




