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空色アスカ

思い思われアスカくん

作者: 油揚げ

翼「あれ~? ボク、ライバルとして登場したと思ったんだけどな。とりあえず、面白くなってきたね。……習作としての期間もこれで終わりかな」

 某学校、オカルト研究部にて。空色アスカという少年と彼の親友たる天瀬翼がいる。男ふたりでお茶会を開いている。

「まったく、桃花ときたら」アスカは困り顔をしている。雪内桃花、アスカに好意をもっている少女のことだ。

 彼はティーカップを見つめつつ親友に語る。

「ああいう好意の向けられ方は対応に悩む」

「好かれているのは良いことじゃない。アスカくん、女の子とうまく付き合うの逃げてばかりいるけど、いつまでも逃げられないってことだよ」

 翼はほがらかに笑う。

「……最近は、お前にも好意をもっているだろ」アスカは重々しく言う。

「べつに、桃花ちゃんはアスカくんの正式な恋人じゃないからね。悪いことじゃないでしょ」

「いや、オレの親友である翼がモテるのは嬉しいさ」

 これに翼は微笑みで応える。ふたりの友情関係なら分かりきっていることとはいえ、実際に言葉にしてくれると嬉しい。

「ただ、それが桃花の意志薄弱を表しているように思えてな」

「あははー。アスカくん、なんだかんだ桃花ちゃんのこと気にしてるじゃない」

 ぱきっ、翼はクッキーをかじる。飲み込むまで沈黙が生まれる。

「あー、これ砂糖の量まちがえたかも」

 翼につられてアスカもクッキーを食べる。ボリボリと噛んで飲み込んだ。

「甘いな」

「甘い物は美味しいんだよ。糖分の摂り過ぎが気になるだけで」

 翼は自分自身にスタイルの良さを求める少年である。学生食堂でまっさきにサラダを注文する男子は彼ぐらいだ。

「ま、運動量を増やせばいいからね」

 翼はごく普通に言い、もう一枚食べる。この少年、かわいい顔して意志が強いから油断ならない。

 アスカはそんな翼を見ているだけで、二枚目は食べない。

「そういえば、今日は桃花ちゃんはこないの?」

 半分に欠けたクッキーを手にしたまま尋ねる。

「なんか、病院で健診があるらしい」

「あー、あの子は虚弱そうだからね」

 ふと翼は、あるものが部室に置かれていることに気づく。それは一冊の小説、表紙とタイトルで中身を察した。変態ぶりを誇るような男でも、ここまでのぶっ壊れ性癖はそうそういないだろう。

「うわー、こういうものを学校の部室に、見えるように置いておくのはどうかと思うな」

 その小説本を見つめつつ、アスカに指摘する。いかにこの学校がフリーダムな校風とはいえ、誰もが同じことを言うだろう。

「……わかってるだろ、桃花が置いていった」

「でもさ、見えないトコに置いとこ?」

 翼の顔はひきつった笑みだ。

「あいつがいうには、自分の趣味をさりげなく明示したいらしい」

「うーん。やっぱりボク、あの子のことが分からないや」

 翼の表情は、感情に合わせて大きく動く。アスカはそんな素直さを持つ彼が好きなのだ。

「ま、アスカくんに惚れこむのはわかるけど」

 ぐいっと最後の一滴まで紅茶を飲み干した。そして立ち上がり伸びをする。

「ん~、それじゃ食べた分は動こうっと」

「運動部に飛び入り参加するのか?」

「それもいいけどさー、裏山で薬草を集めるよ」

 この言葉を聞いて、アスカも席を立つ。

「最近は薬草が不足しているからな。そういうことならオレも参加しよう」

 廊下を並んで歩くふたり。

「ま、桃花ちゃんのことは心配しなくても大丈夫だよ。ここから『まったく別の男を選びます』なんてオチもありえるから」


――

 なんだろう、誰かわたしのウワサをしている気がする。待合室ではボーっとしているだけだから、気持ちが繊細になるんだよね。わたしだけかもしれないけど……。

 周囲をきょろきょろした。あ、外科の秋本先生だ。明らかに疲れていそう。あんな状態で診察できるのかなって思ったけど、先生はそのまま病院をでていった。これから帰るところだったらしい。

 お医者さんは大変だね。ゲームみたいに魔法やアイテムひとつで瞬時に治る、なんてわけにはいかないから。

 わたしはそんなことを思いつつスマホを取り出し、アルバムを開く。アスカくんの写真をタッチする。

「はあ……」

 これは一番お気に入りの一枚だ。撮影の角度が良いのかもしれない。

 ドタドタドタ! さっき秋本先生が出てきた方向から、看護師の集団が歩いてきた。

「うわ」

 この人たちは、プロレスラーかボディビルダーと勘違いするような肉体の持ち主だった。こういう体の男性にはドキッとする。正反対の体をしているアスカくんにときめいて、翼くんにもふらついているんだけど……。

「秋本先生は、技術が優秀だが虚弱なのが残念だ」

「ま、彼じゃないと我々の傷は治療できないから」

「秋本の医療は魔法だ」

 わたしは彼らの言葉に聞き耳を立てていた。彼らも病院を出て行った。

「しつれいします」入れ違いに男子が入ってきた。あ、この前話した図書委員の男の子だ。彼は本が入ったカゴをさげている。

「待合室本棚に収蔵する本、持ってきました」

 彼は受付にそういうと、本棚へ向かう。カゴの本を入れる。わたしはその作業を眺めていた。

「あ、雪内桃花さん」

 作業が終わると、彼は私に気づいた。

「わたしを知っているんですか」

「うん、まあね」

 図書委員くん。メガネをかけて内向的な雰囲気を持つ、いかにも文学少年だ。

「自己紹介が遅れたね。ぼくは図書委員を務めている栗山奏多」

「わたしは雪内桃花」

 奏多くんか……。なんだろう、温和な感じだけど気弱さは感じない。むしろ不思議な強さを感じる。

「図書委員って、こんな活動もしているんですね」

 わたしは奏多くんの背後にある本棚を指さす。

「そうだね。どんな本を選ぼうかなんて、医師の人たちが考えているヒマはないからね」

 奏多くんは自分のメガネに触れる。メガネの人特有の仕草だ。

「病院の待合室に相応しい本を選ぶの、わりと難しいけど」

「そうなんですか?」

「病院に来なきゃいけない患者さんに、人があっさり死ぬようなマンガは読ませられないから」

「ああ!」

 うちの学校の図書委員会、そういう気配りができるんだ。学校なのに流行りのマンガとかたくさん入荷するから、好き勝手に選んでいるんだと思ってた。

 どうせなら、わたし好みの本も入れてほしいけど。

「こ、好みの本ってありますからね」

「桃花さんの好み、知ってるよ」

「え!?」

 わたしの性癖を! そのわりに奏多くんは極めて落ち着いている。

「図書委員だから、本を読んでいる人は気になるんだ。ちらっと表紙を確認するクセがあってね」少し恥ずかしそうにしている。

「雪内さーん」その時、会計に呼ばれる。

「じゃ、また学校で」奏多くんは控えめに手を振る。

 病院を出ると寄り道しようかな、という気がでてきた。でも、どこにしよう。

 とりあえず、ふらっと歩きまわった。

「おや、桃花さんじゃないですかー」

 わたしに声をかけてきたのは、西園寺優也くんだ。報道部員の男子。記者らしいからという理由で、鳥打帽と万年筆を装備しているヘンな人。いや、わたしの方が遥かにヘンなんだけどね。

「じつはですねー、さっき病院に入ったところを目にしていました」

「そうだったんですね、わたしは気づきませんでした」

 優也くんは、万年筆でペン回しをしつつ語りだす。

「病院といえば、おれの爺さんが通院を続けていますよ。骨格に歪みがあるみたいで、定期的に診察を受ける必要があるようで」

「ご高齢になったら、多くの人がそうなりますよねえ」

「まったくです。元気なうちから体はいたわらないといけませんね。それと健康に関する知識も学ばないといけませんか」そう語った時の優也くんの表情が気になった。にこやかだけど、何かを感じた。

「そうですね、勉強しないと」

「ああ、ですが健康情報なんて一般常識でしたね。偏食して運動不足なら不健康になるのは、誰だって知ってます」

「そ、そうですね……」

「だから後は実行するのみ。ま、あまりに清く正しい健康的な生活というのはツマラナイかもしれませんがねー」

 優也くんは万年筆をクルクル回した後、前を指す。それはまるで武将が軍配を振るうかのようだった。

「……はあ」わたしはため息をついた。

 優也くんは黙ってそれを見ていた。

「さて、おれはそろそろ行きましょう」足早に去って行った。

 アスカくんにアプローチしないとな……。


アスカ「いよいよ本格化していくのか?」

翼「だけど、新規で【大人向け】にも行くつもりでしょ。同時進行する気かな?」

奏多「作風が違うから、無理に探さなくていいよ」

優也「おれたち、こっち側の面々を出したくなったらどうする気ですかねー」

桃花「(あっち側の話を確認)わたし、あっち側に行きたかったな……」

???「いや、こっち側の話しろよ」

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