旅は道連れ編
「さて、これからどこの街に向かいましょうか」そんな独り言を言いながら歩いていると、森の奥から何か巨大な生き物の咆哮が聞こえ、気になったので行ってみる事にしたもちろん見つかったら命の危険があるかも知れないので、透明化と静寂そして気配霧散の付与をしたネックレス(自作)をしてから向かった。
数分後、私の目の前にいたのは、かなり大きい火竜(レッドドラゴンの成体)の死体を見下ろしている身の丈2メートル弱の黒騎士だった。
私はその鎧の心当たりがあった、「確か隣国で活躍しているソロ冒険者の、"闇色の騎士"ことバルサーク•ライベルという人物だったはず、兜の下の顔を見た人が少ないせいで、男性なのに、実は女性という変な噂があったな。中性的な人物なのかもしれない。」そう思っていると彼が、ドラゴンを引きずって行こうとしたので声をかけるために、ネックレスを外し、「こんにちは、重そうな獲物ですね。持つの手伝いましょうか?」と声をかけた。
いきなり声をかけられて驚いたのか勢いよくこちらを振り向き、「誰だお前は」と言われたので、「いえ、森から大きな咆哮が聞こえたので何かなと思って来たんですよ」「そんな装備でか?見たところCランクぐらいの冒険者に見えるが…採取依頼の途中か?」「いえ、王都から引っ越そうと思って荷物をまとめて出て来た所です。」「何やら事情がありそうだがまあ良い、このデカいヤツを運ぶのを手伝ってくれ。」と言われたので「よければ解体もしますよ」とお節介を焼いてみる事にしたら、「本当か!助かる。自分はどうも戦闘以外は苦手でな、いつもギルドで解体してもらうんだがやってくれるのか、ありがとう」と言ってもらい引き受ける事になった。
まず私は、カバンからよく切れる自作の解体用ナイフを取り出し、ドラゴンの解体を始めた。最初に、地面に穴を掘りそこに収納庫の付与をしたタライをセット、そしたらドラゴンの頭をタライの上に置きナイフで血管を切断し、血をタライに入れて血抜きをするその時に、ドラゴンの胴体を、光の国から来た銀の巨人の体重が支えられるぐらい頑丈な10メートル×10メートルの巨大な台に仰向けに乗せてワイヤーで固定し、台に付与した魔法で台ごと傾けつつ、浮かばせて高さをつくり血がちゃんと抜けるようにする。
そうして血抜きが終わったら首を一周するようにナイフで切れ込みを入れ、解体用の包丁(刃渡り80センチぐらいある)で肉を切断していき、骨にあたったら骨と骨の間に包丁を入れ、頭を落とす。頭を一旦生もの用の無限収納袋に入れ、ドラゴンの喉のあたりからナイフで腹の一番下まで皮を切り、内臓を取り出す。このときに、組み立て式の足場を使ってドラゴンの内臓を傷つけないように作業する。切り取った内臓は、生もの用の無限収納袋に入れていき、内臓を全て取り終わったら、皮を剥ぐ、この作業のコツは、皮下脂肪に合わせて刃をいれながら剥いでいくのだ、こうすれば後で皮に残っている脂が少なく、買取りの際、金額が上乗せされるのである。
皮を剥ぐ作業が終了したら、次は部位ごとに肉を切り分ける。まずは前脚の関節に包丁を入れて関節を外しスネ肉とウデ肉に加工する。次に後脚を外し、スネ肉とモモ肉に加工、加工が終わった肉は、生もの用の無限収納袋に入れていく、そして胴体部を切り分けて、ヒレ肉、バラ肉、サーロイン、肩ロース肉、ムネ肉、ハラミ、リブロース、ネックなどに加工し、尻尾も忘れずに加工して、その全てを無限収納袋に入れて、作業は完了した。
私が、使った道具やナイフを片付けていると、ずっと黙って作業を見学していたバルサークさんが、「いやー実に見事な腕前だな、君は器用なんだね。」と褒めてくれた。「いえいえ自分の腕前もそうですが、やっぱり良い道具があってこそなので。」とナイフを見せて言ったら、ズイと顔を近づけて「ちょっと見せてくれ」と言われたので、貸すとナイフで近くの木を斬りつけたので、「あの、ナイフはそうゆう役割じゃないですよ。」と注意した瞬間、斬りつけた木がスーという感じで、ズレて倒れたのである。
バルサークさんが「このナイフ、なんという切れ味!これをどこで!」となんだか興奮した口調で尋ねてきたので、「自作です」と答えたら「本当か!すごいな君は、解体もできてとんでもない程の鍛治の腕前もある、どんな冒険者でも欲しがる人材だよ」とかなりベタ褒めされた。私は、「それはそれとして、あなたは一体どうしてこんな森に?」と聞いた。「それはだな、依頼で討伐対象のドラゴンをうっかり逃がしてしまってな、追いかけいたらこの森だったわけだ。ところでここはどこの森だ?」「以外とこの人は抜けてるのかもしれない」と思いながら「ここは王都近くの森ですよ。どこから来たんですか?」と言ったら、「ガワラスという街から来たんだが、帰り道が分からないんだ。どっちか分かるか?」と言われたので、「分かりますよ、私もそこに行こうと思いましたので、一緒に行きますか?」と答えたら、「そうかそれはありがたい、では出発するか。」と言われて、私はバルサークさんと一緒にガワラスの街へ向かった。