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レガリア国記~王と騎士は盤上で踊る~  作者: レガリア歴史保存委員会
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4節「召喚」

4節「召喚」

 

 シュルフトブルグへと戻ったフィシュカ大后は早速ヴィーサスの言う儘に軍備と整えその機会を伺った。


 そして夏の終わり、機が満ちる頃合いに大后はリュスタル卿の統率の元、周辺諸侯を集束し首都エライヒェンを奪還すべく進軍した。


 此の頃、ヴェストフレッヒェンと反乱軍の連合戦力はレガリア各地の反発によって分散されており、賢者ヴィーサスの神がかりと呼ぶべき軍略とシュルフトブルグで新たに編み出された魔術、リュスタル卿やバルシュティン卿、ライズフェルド卿率いるレガリア軍の主力の総動員によって幾つか領土を除いて王都奪還は果たされ、クレーベ王は捕縛され捕虜となった。



 この奪還戦によって自国の分裂はレガリアにさらなる影響を及ぼした。一度敗れた王大后フィシュカに対する権力を疑問視する者が新たに生まれ、逆に王都の早期奪還を成し遂げた王大后や騎士を支持する勢力も力を増したのである。

 

 大后が再びエライヒェンの王城へと帰還することが叶ったのは王の生誕より一年が経ちSYUU王は1歳の生辰を迎えた後の事、その年の秋の深まる頃である。


 秋の満月が昇る夜、フィシュカ王妃は次なる神秘を王に授けるべく王を連れて聖堂へと赴いていた。幸いにも聖堂は荒らされること無く、反乱が起こるまで間と収束後に改装が施された聖堂はさらに荘重さを増し、それは深淵に対する信仰の深さと比例している様である。

 

 王を玉座へ座らせ。この日のために用意された聖堂の最奥に据えられた巨大な鏡の前へと立ち、祈る。


 深い呼吸のあとに大后は静かに口を開いた。

 

 ──彼の深淵に座す碧き神聖の竜よ。我が夫、深淵に至りし彼方の王ヴェーグとの契約を今果たさん。


 先代が竜より齎されし神秘、我が先代より授けられし言葉、賜り託されし紋、此れより我が身を捧げ此方と鏡の彼方を繋ぎ、今此処に新たなる王とレガリアにさらなる奇跡を賜らん。


 ウルドの神秘を、竜の祝福を以てこの地を彼の深淵よろしく美しき永劫郷とせんがために──。


 そう言い終えた後、ヴェーグより受け継いだ詠唱を口にしながら、鏡に指で紋を描く。

すると眼前の鏡が目も眩むような碧い光を放ち、それが周囲に据えられた鏡に幾重にも反射して刹那に聖堂がその光に満ちた。

 

 「──鏡界の騎士、Ritter Spiegel。召喚に応じ参上いたしました」


 光がおさまると同時に一人の人物がフィシュカ王妃の前に片膝を着いていた。

その者は内に碧の入った美しく長い銀髪と今溢れた碧い光と同じ色の瞳を持っており、その水晶に似た角は鏡のようにフィシュカ王妃を映していた。彼は自らを鏡界の騎士、Spiegelと名乗った。


 フィシュカ大后はSpiegelに自らの名を告げると、契約を交わすのは王SYUUであることを伝えた。王を護り、国を護り、騎士としての矜持を全うすると。

 鏡の騎士はそれを受け入れ、まだ幼子であった王と鏡の契約を結んだ。すると、王の右目は騎士の目と同じに碧く染まり、反対に騎士の右目は王と同じく赤に染まった。

 「このSpiegel、契約に従い全てを捧げ、王のために力を尽くしましょう」

鏡の騎士は祭壇に眠る王に跪き小さな声でそう告げた。


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