天才予備校講師にはランドセルがよく似合う
「これで……四浪か」
今年の三月に大学受験に落ち、四度目の浪人生活が確定した青年、桜田吾郎。
このままでは自分の名前と同じ「吾郎」もとい「五浪」になってしまう。笑えない話だ。
さすがに心配した祖母に、吾郎は呼び出される。
「お前、これからどうするつもりだい?」
「うーん、……そろそろ身の振り方を考えないといけないよあ」
教師になるという夢を叶えるため、ずっとねばっていたが家族も心配させ続けるのもしのびない。
次の受験も落ちたら、諦めて就職をしようと吾郎は腹を括った
「そうかい。吾郎、そんなお前に提案がある」
「どうしたんだよ? 改まって」
「あたしの知り合いが二年前から予備校を経営している。話を通しておいた」
「マジで!? ばあちゃんありがとう!」
数日後、吾郎は駅前のオフィス街の一画にある予備校を訪れた。
吾郎が受講したのは名門大学出身のカリスマ講師が、マンツーマンで指導してくれる特別コースだった。
担当講師に挨拶するため教室で待っていると――
「はじめまして。高瀬みさきです」
「…‥‥‥‥え?」
吾郎は面食らった。現れたのは――――どこからどう見ても子供。ランドセルを背負っていてもおかしくない少女だ。
「えーと、講師の方の……娘さん?」
吾郎が聞くと、少女はムッと眉間を寄せて、
「私があなたの講師を担当する高瀬みさき! 十一才です!!」
彼女はIQ二〇〇。アメリカのハーバード大学を飛び級で卒業した天才児であり、就任から一年足らずに七人の名門大学の合格者を出した敏腕講師である。
みさきの指導のもとに予備校が始まるのだが、。このコースでは講師と生徒がひとつ屋根の下、二十四時間勉強漬けの共同生活をすることとなる。
みさきの苛烈な指導に「何だこの子は!?」と、反感を覚える吾郎だったが、接していくうちに彼女の胸の内を知る。
みさきは天才的な頭脳により、幼い頃から大人達の意向で学問一筋の生活をしていた。
しかしその裏で、学問以外での喜びを知らないことに違和感を持っていた。
普通の女の子としての当たり前の日常に憧れを抱いていた。
吾郎はそんなみさきから講義を受け、休日には吾郎はみさきをいろんなところへと連れ出した。
おしゃれなパンケーキのお店や。同世代の女の子が集まる女児向けアニメのステージショー。
そうして少しずつ二人の間に絆が芽生えていく……。
2022年最初の投稿
今年もたくさん書きます(`・ω・´)b