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聖女ってなんだろう  作者: ran.Dee
第2章
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お試し

迎賓館にてメイドさんに湯浴みを勧められた。

お風呂は大好きである。

いや、シラタマちゃんがそうだったので、マユもそうだろうと思った。

実際には人生初の入浴なのだ。めんどくさい。

本当は入浴は不要なのだと思う。神の子は汚れないはず。仕様的に。

ローブは洗濯不要と言っておいた。

しかし、風呂には入りたいから喜んで入ることにした。

メイドさんに(必要ないけど)身体を洗ってもらい髪も洗ってもらう。

湯上がりにマッサージもしてくれた。

気持ちいい。

記憶にある母親のエステ並みに気持ちよかった。


湯浴みを済ませて身支度を整えてもらっていたら食事が用意されていた。

至れり尽くせり。

「もう聖女とかいんじゃね?」って気分になってきたが、働かざる者食うべからずと記憶のシラタマちゃんが言っている。

真面目な良い子だった。

たぶん食事も不要なんだろうが、せっかくだから頂く。

美味い。普通に美味い。

異世界でも贅を尽くした料理は美味いに決まってる。

なんといっても毒とか寄生虫とか気にしなくていいのがいい。

神さま、いや、お父さまに感謝した。


食後にお付きになったメイドさんがお茶を淹れてくれた。

美味しい紅茶だ。エステも上手いし器用だ。

このメイドさんは白髪に赤目。

たぶんアルビノだろう。マユの黒髪黒目とは正反対だ。


メイドさんは食器をかたしてくれていたが、ウッカリお皿を落としてしまい割ってしまった。

慌てて片付けようとして指を切ってしまったようだ。痛そうだ。


「メイドさん、ちょっと見せて。」

「聖女様、そんな滅相もない。」

「いいから。悪いけどちょっと試したいのよ。」


治癒魔法なるものもこの世界にあるはずだが、聖女として同等以上のものが出来なければまずい。

自分で勝手にそう思ってるだけだ。プライドとして。


傷口を見せてもらう。

切れる前の血管と皮膚をイメージする。

裂けた皮膚と血管の位置を戻し、血小板を使って血液を凝固させて毛細血管からの出血を抑え、裂傷付近の組織の再生を促す感じで。

ザックリしてるようだが人の子の魔法はもっと適当なものだろう、これでも精度は高いはずだ。

あっという間に傷がなくなっていた。


(大成功!)


「出来たみたいね。どうかしら?」

「!!!」


メイドさんは、ザッと身を離し平伏した。


「聖女様、ありがとうございます!私のようなものに治癒魔法なんて…」

「いいから立って。平伏なんてしなくていいから。

初めてやってみたのよ。私の方が試させてもらったんだから気にしないで。

あなたお名前は?」

「…クロエと申します。貴族様に名乗るようなものでは…」


クロエはマユより少し歳上と思われるが白い肌に白髪、赤目でプルプル震えている様はまるでウサギのようだった。


「私は神の子だけど貴族ではないわ。私の前で身分は気にしなくていいの。」

「神の子…」

「そう、創造神が私のお父さまなの。」


安心させるために言ったのだが、また平伏された。

それはそうなるだろう。


「いいから立って。それでちょっとそこのソファに横なってちょうだい。」

「え…」

「もうちょっと試したいことがあるのよ。協力してちょうだい。クロエさん。」

「はい…」


クロエは恐る恐るソファに仰向けに横になった。

マユがクロエの身体を上から覗き込む。


「ああやっぱり。あなた最近時々お腹が痛くなるでしょう?」

「どうしてそれを…」

「身体の悪いところを見てるの。取るわよ。」


クロエは軽い喪失感とともに身体が軽くなった気がした。


「盲腸だったのね。破裂する前に診れてよかったわ。」


魔法は無から何かを作り出すことには多大なエネルギーを要するが、指定されたものの情報を提供したり移動させることはイメージが具体的であるならば簡単に出来る。

魔法とは対象に作用する力として設計されたもののようだ。

創造神は人の子がいつまでたっても例外的な使い方に終始するのが腹に据えかねていたのだろう。

しかし最初からこんな便利なものがあるなら科学が発達しないのも当然かもしれない。


マユは医学の知識はないが人体の構造は知っていた。

X線検査やMRIのイメージもあるので身体の内部を視ることができる。

しかし良いのか悪いのかまでは分からない。

そこで自分の身体をリファレンスとして使うことを思いついた。

神の子の身体も人の子と同じと聞いている。

さらにこの世界に害されることはないとも。

つまり、マユの身体は常に正常なのだ。

マユの身体の部位と比較して著しく異なるものを異常と定義する。

異常部位をピックアップして見せてくれる魔法。

診断魔法とでも名付けるか。

そこからクロエの盲腸が膿み始めていることが分かった。

摘出手術などは出来ないが体内で切り離し、血中の血小板を使って傷口を塞ぐことは出来る。

問題は患部をどう処理するか。

移動は簡単だ。A地点からB地点に対象の位置を変えることをイメージするだけ。

誰でも出来るのだが「具体的に」というのが難しい。

絶対位置という概念が必要なのだ。

対象の絶対位置をイメージすると3次元の座標が返ってくる。

これはたぶん世界の中心を(0,0,0)とした位置情報だ。

切り離した盲腸の座標を(a,b,c)から(x,y,z)に変えればクロエの体内から世界のどこかに移動したことになる。

移動途中はないが瞬間移動をイメージしたものでもない。

ゲームプログラミングみたいなものだ。まさにオブジェクト指向。

人の子がそこに到達するまでにどれほどの時間がかかることか…


神の領域の位置は覚えていたので、そこに膿んだ盲腸を体内から移動してポイした。

不敬ではあるが神の領域であればバイオハザードも発生しないだろう。


(お父さまごめんなさい)


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