聖女爆誕
騎士のマントの中に戻ったようだ。
抜け出た時点だったので神の領域にいた時間はカウントされないのだろう。
その瞬間、マントが捲られ消えたと思われた聖女が輝く白いローブを纏って現れたため、ジラール王国の王侯貴族たちはどキモを抜かれた。
「聖女殿、これはいかなる魔法かな?」
とっさに平静を装ったがジラール国王ディオンは心底驚いていた。
弁はたつが口の悪い異界の娘が急に消えたと思ったら神々しい聖女として再臨したのだ。
「魔法ではありません。
お父さまに呼ばれまして説明を受けたところでございます。」
先程の追い詰められた野良猫のような態度から一転しての堂々とした受け応えに居住まいを正す。
「お父上とな?そのような人物はここにはいないようだが?」
「人ではありません。創造神です。
私は手ずから創造された神の子ということでした。
異界の人物の記憶を与えられたとのことです。」
驚愕の事実に沈黙が支配した。
そんななか、大司教が勢いこんで尋ねる。
「おお!創造神さまとお話をされたのですか?聖女さま!」
「はい。私が遣わされたのは人が造られた理由を思い出させるためだということでございました。」
「して、その理由とは?」
それこそが大司教が人生を賭して探求してきた命題であった。
目は血走り両の手が震えていた。
「人は世界に変化を齎す存在としてお造りになられたそうです。」
「世界に変化を齎す存在…」
大司教は言葉を噛み締めるようにしばし呆然とした後、平伏した。
「神の子であらせられる聖女さま、創造神さまから賜れた御言葉をお伝えくださり誠にありがとうございます!我々教会は聖女さまの手足となって働きましょう。
いかようにもお使いください!」
「ありがとうございます。
ですが、まだ私がここで何を成すべきかは定めておりません。
お父さまからは私が人の子の中にいるだけで変化を齎すと言われましたので、聖女としての行いは今後の私の課題となっております。
私の人生は人の子よりも長いようですので慌てずに課題に取り組むつもりです。
見定めたあかつきには是非ご協力をいただきたく思います。」
「分かりました。その際には必ずや。おお、なんと喜ばしい!今日は人生最良の日じゃ。」
あっという間に教会が聖女に跪くとは。
ジラール国王は大司教とのやりとりを眺めながら聖女の扱いを考えていた。
(神の子と人の子…身分差以上のものだろう。
教会が跪いた以上、国賓待遇以外の選択肢はない。
なにより国事として召喚してしまったのでホストとして振る舞うことが必須だ。
拙速な側妃の提案は悔やまれるが、今のところ蒸し返す気はなさそうだ。
敵対する意思も感じられないが信用されているとも言い難い。
召喚直後から今まで隙をまったくみせないところから頭は相当切れるようだ。
政治には利用出来ないと思ったほうがいい。
神の子の出現は他国にもすぐに伝わるはずだ。
心象を害するわけにはいかないな。)
「聖女殿、神の子というのは前例がないが我々人の子よりも尊い存在ということを理解した。
国賓として遇したい。
可能な限り尽くすよう取り計らうのでなんでも言ってもらいたい。」
「国王さま、ありがとうございます。
申し遅れました、マユと申します。
しばらくお世話になります。よろしくお願いします。」
その後、聖女マユは国賓として迎賓館に案内された。