マユ
とりあえずイメージしてやってみると手のひらの上で拳大に燃え盛る炎が。
「うん、いいね。それが正しい。」
「正しくない魔法があるのですか?」
「正しくないというのはちょっと違うか、無駄が多いんだよ。
キミがやったのは空気から水素と酸素を取り出して混合させ、一部の温度を発火点まで上げたんだね?」
「そうです。燃え続けるように一定量ずつ水素と酸素を足していくようにイメージしています。」
「百点満点の魔法の使い方だ。でもアイツら人の子にはまだそれが出来ない。」
「科学が達していないということですか?」
「そういうこと。魔法って何か分かる?」
「不思議な力…ですか?」
「その通り。言い足すと科学ではない不思議な力。
コイツが万能でね。なんでもイメージした通りに出来ちゃう。
アイツらは火そのものをイメージしちゃうけど魔法はそれでも働く。」
「問題なさそうですけど。」
「魔力ってのがあってね。
キミのやり方を1とするとアイツらのやり方は1000万くらいの魔力が必要になる。
魔力は徐々に回復していくけど最大値は決まってるんで本来出来ることの1/1000万しか出来ないことになる。
問題だろ?」
「そうですね。でも私が地球の科学をあの人たちに教育するなんて無理ですよ?」
「それで構わないよ。」
「だったら聖女ってなんなんですか?」
「神と会話が出来る神の子を他になんと呼ぶのかな?」
「あ…」
「べつになにか特別なことをして欲しくてキミを造ったんじゃないよ。
キミが神の子として人の子の中にいるだけで変化するだろ?
俺が人を造ったのはこの世界に変化を齎すためさ。
人は世界に変化を齎す存在として造られた。
そいつを思い出してもらいたいわけさ。」
「えっと、その人の子というのは…」
「ああ、そこからだったね。
キミは俺が直接造ったから神の子だがアイツらの親は人だ。
だから人の子。
もちろん最初の男女は俺が造った神の子だったんだが。」
「なるほど。何か違いがあるのでしょうか?」
「構造は同じ。魔力も見かけ上はキミの方が1000万倍多いようにアイツらからは見えるのだろうがまったく変わらん。
大きな違いはキミはこの世界に害されるものがないこと。
キミを害せるのは創造神である俺だけだ。必ず寿命まで生きる。」
「その寿命というのはどれくらいですか?」
「だいたい2000年くらいかな。」
「なっがッ!それじゃあ1900年以上はおばあちゃんでいろってことじゃないですか。
どんな罰ゲームなんですか…」
「ああ、いや容姿は寿命まで変わらないよ。
不死ではないが不老ではある。寿命まで子どもも作れる身体だ。」
「もー、お父さま、もっと言い方を工夫してください!」
「おっと、急なお父さま呼び、これはイイもんだねー
まあ最初の男女がそういう目的で造ったから長寿で不老なんだけどね。神の子の仕様ってことだ。」
「それなら納得です。」
「だいたいの事情は把握出来たようだね。そろそろ戻すかな。」
「あ、着るものありませんか?またルームウェアでは恥ずかしいので。」
「ああ、これは気づかず済まないね。何がいいかね?」
「うーん、聖女っぽい感じで白いローブとか。」
「じゃあそれで。」
その瞬間、可愛いピンク色のモコモコのルームウェアが神々しく輝く真っ白なローブに変化した。
「ありがとうございます。聖女として頑張りますね、お父さま。」
「それでキミの名前はどうする?」
「…ではマユということにします。」
「じゃあマユ、頑張っておいで。」