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聖女ってなんだろう  作者: ran.Dee
最終章
38/39

創造神教会

「ひゃ、ひゃあ」


使者は腰を抜かして間抜けな声を出した。


夏季休暇に辺境伯領まで物見遊山気分で馬車の旅を選んだはいいが、途上の宿泊先毎の熱狂に気疲れしてしまったのに懲りた聖女はそれ以降、コツコツと地図を頼りに各国の首都に移動してはちょうどいい移動先の位置情報を記録していっていたのだ。

そう、密かに聖都には一度来ていたのだった。


「さあ使者様、着きましたよ。ご案内をお願いいたします。」

「は、はい〜只今…」


一同は毒気を抜かれた使者に先導させて大聖堂に入っていく。


「こちらでお待ちください。枢機卿猊下に聖女様のお越しをお知らせしてきます。」

「はい、よろしくね。」


創造神教会である。信仰対象の娘なのだ。

ぞんざいな物言いでいいだろう。

証明しろと言われては聖女であっても面白くない。


---


「何?聖女が向こうから来ただと?途上で会ったのか?」

「いえ、確かにさっきまでジラール王国の王宮にいましたが…」


枢機卿5は要領をえない使者の返事に痺れを切らせた。


「もうよい!向こうから来るとは飛んで火にいる夏の虫というもの。

異端審問官どもの準備が出来次第、連れてまいれ。」

「はい…」


物言いたげな様子のまま使者は下がった。


「計画は大幅に狂ったが結果オーライだな。

この教会本部で神の子であることを証明してもらおうではないか。」

「出来るものならな。ハッハッハッハ」


枢機卿2の言葉に同調する枢機卿4。


---


「聖女様、どうぞこちらへ。お付きの方々はここでお待ちください。」


露骨に引き離されることに難色を示す側使えたちを制して


「分かりました。参りましょう。貴方たちはここで待っててね。」


使者の先導で大きなすり鉢状の議場の真ん中に連れてこられる。

円形の底を囲んだ上の等間隔に置かれた7つの座席に紫色のローブに同色の頭巾を被って御簾で顔を隠した7人が座していた。

御簾には1から7までの数字が書かれていた。


(ゼ◯レかよ…)


そのさらに上の段に玉座がひとつあり、ギンギラな衣装に包まれたデッカイ宝石ジャラジャラの超デブがヨダレを垂らして眠りこけていた。


(絵に描いたような腐った偉い人…)


「さて聖女様、あなたは神の子ということですが、どうのように証明しましょうね?」


1が代表のようだ。


「使者にも話ましたが不老長寿と世界に害されないこの身体。どのように証明してほしいのかしら?」

「不老長寿は時間がかかりそうだ。では、害されないなら首を落とされても死なないのでしょう?それでいかがかな?」

「神の子を害したいと?それは皆さんの総意ですの?」


1から7までが頷く。


「あちらのおデブちゃんは?」

「あれも同意の上だ。貴女が決意しやすいように協力してやろう。」


1が合図するとデブ教皇の玉座とすり鉢の底を挟んだ反対側に縛られた側使えたちが引き出され、真っ黒い装束に同色の仮面を付けた男たちがそれぞれに剣を突きつけていた。


「脅迫ですね?いいでしょう。やってみなさい。」

「その態度だけは神の子らしいな。」


御簾の下のニヤニヤ笑いが見えるようである。

聖女マユのもとにベ◯ダー卿が剣を手に近づいてきた。


「その者は異端審問官の中でもいちばんの手練れだ。安心して逝くがよい!」


ベイ◯ー卿が鋭い風音を鳴らしつつ聖女の首筋に向けて剣を振った。

振った…ように見えたがそのままだ。

聖女は微動だにしていない。


(ああ、私を害す行為や事象はキャンセルされるんだ)


マユはようやくお父さまの言う「世界に害されない」という意味が理解できた。

実はこれを確認したくてここまで我慢していたのだ。


「何をしている?さっさと斬れ!」

「斬ったのですが…斬ってないというか…」

「オマエは何を言っているのだ?」


「バッカねー、害せないと言ったでしょ?」

「ハア?クッ、だったらそこの者どもを斬ってしまえ!」


悔し紛れに側使えを殺すらしい。

聖女マユは魔法をベイダ◯卿にかけた。


「な?」


◯イダー卿全員の両腕が落ちる。


「私は大抵のものは癒せる。人体に精通してるからね。逆もしかりってこと。」


両腕を失ったベイダー◯どもが泣き叫んでうるさいのでさっきの控え室に移動しておく。


「分かった?私は神の子なの。

ここは創造神教会ってことなんでオマエら纏めてクビね。

信仰対象の娘に害意を持った罪で破門でいいよね。

魔獣の棲む森に追放しまーす。じゃあねバイバイ。」

「ま、待…」


側使えたちが縄を解いて降りてきた。


「大司教エドモン・レヴィに命じます。新たな教皇として創造神教会を纏めなさい。」

「御心のままに。」

「さあ使者を連れて帰りましょうか。」


聖女一同はエドモンを聖都に残して使者を連れてジラール王国の王宮に戻った。

使者が震えながらことの顛末を証言したので聖女を疑うものは誰もいなくなった。

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