聖女様降臨祝賀会
7人の枢機卿は辺境伯領の奇跡以降、聖女信仰が貴族階級に及んだことに危機感を抱いた。
ジラール王国は大国であったので周辺諸国へも波及していたのだ。
近隣国の平民はジラール王国の王都の平民街の教会への巡礼の列に加わり、周辺諸国の貴族のうち、病や傷病で悩みを抱えたものは伝手を辿ってアナベルに相談に来る。
聖女の癒しにより救われたものは残らず信者になるのであった。
教会中枢はここに至って静観することをやめた。
聖女を亡き者とする。
聖女への招請はそれを前提に計画された。
ジラール王国から聖都まで来るのに2ヶ国を挟んでいて3ヶ月かかる。
その途上で仕留めようというのだ。
街道の主要な街に暗殺者を配して年末までに到着するように使者を送りだす。
そうしていよいよその年の年末を迎えたのだ。
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「諸国の王及び使者たちよ、今日の日を迎えられたことを嬉しく思う。
案内した通り、我が国が召喚し創造神様よりこの世界に遣わされた聖女マユ殿を紹介する。
創造神様のご厚情を皆で祝おうではないか!」
「世界の皆さま、はじめまして。
お父さまよりこの世界に遣わされました聖女マユです。
現在、ジラール王国にて民への癒しを行なっておりますが、
私はここで2000年を生きるよう定められております。
いつか皆さまの国でもお世話になると思います。
その際はよろしくお願いします。」
ジラール国王の開会の挨拶の後、
いつものように独特の挨拶を平然と行う聖女。
と、
「聖女様、ひとつよろしいですか?」
教会本部よりの使者が早くも発言の許可を求める。
「なんでしょう?」
「聖女様は神の子とのことですが何か証明出来るものはございますか?」
「証明ですか?
さあ、人の子との違いは不老長寿とこの世界に害されないことの2点のみとお父さまより伺っておりますが、どのように証明しましょうか?」
「よろしければ教会本部にお越しいただきまして枢機卿猊下のご質問にお答えいただければと思います。」
「分かりました。いいですよ。では、参りましょう。」
「へ?」
「2時間もあれば戻ってこられるでしょう。パーティーは始まったばかりです。
皆さまそれくらいであれば待ってくれますよ。
ご心配には及びません。」
「え、いや、そういうことではなく…」
「エドモン、オリヴィエ、カミーユ、アナベルはクロエを呼んできてちょうだい。皆んなで聖都に行きますよ。」
側使えが揃ったところで教会本部の使者に
「さあ使者様、準備出来ましたので参りましょう。
聖都に着きましたらご案内ください。」
一行の位置情報を書き換えると目の前には聖都の大聖堂が聳えていた。