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聖女ってなんだろう  作者: ran.Dee
第5章
33/39

オベール辺境伯領へ

オベール辺境伯領へは学院の夏季休暇に入ってから行くことになった。

マユとしてはいつでもよかったのだが、マクシム王太子が王様の名代ということで同行することになったので学業に影響を与えないように考慮されたのだ。

マクシムは魔獣討伐がしたいのだろう。

マユも人のことは言えないわけだが。


準備として平民街の教会に聖女の予定を告知してもらった。

貴族にも聖女の活動を知らしめたことでオフィシャルになったのだ。

あれでだいぶ動きやすくなった。


夏季休暇前に学院の期末試験があったのだが、まあなんというか小学校並み…

授業でやったそのものが問題になっていて引っ掛け問題などひとつもない。

部外者の聖女がブッちぎってもいいことはないので王様にお願いして学院の成績順位から除外してもらうように取り計らってもらった。

なかには成績順位に人生かかってる子がいるかもしれない。


オベール辺境伯領は王都から馬車で3週間。

馬車の長旅は結構疲れるらしいがマユの身体は関係ない。

なんなら食事も睡眠も不要なので行こうと思えばひとりで行ける。

馬車も本当は要らないのだ。

地図で大体の座標が把握出来れば秒で行ける。

それをしないのは人の子の中にあれというお父さまからの言葉があるからだ。


---


「マユ殿、準備はいいか?」

「はい、マクシム様。参りましょう。」


馬上から車中のマユに確認するマクシム。

オベール辺境伯領に向けての旅が始まった。

馬車にはマユの他にクロエとアナベルがいた。

オリヴィエ&カミーユは護衛騎士なので騎乗している。

エドモンは聖女の追悼式を見たがったがお留守番だ。

大司教様が王都を長期間不在にするのはよろしくない。

特に教会本部となにやら揉めている今は付け入る隙を与えるべきではない。


今回の追悼式は当事者のカミーユには特別な想いがある。

聖女に話を聞いた時には泣いて感謝した。

マユとしては魔獣狩りの大義名分に持ち出した話だったが、カミーユのために真面目に祈ろうと思った。

聖女と自認しつつもちゃんと祈るのは初めてだったりする。

神の子が神に祈るってアリなのかどうか実は分かってない。

祈ることで何かあってもなくても悪いことにはならないだろうとお気楽なのが聖女クオリティ。


---


馬車の長旅でも疲れないと言ったが前言撤回。

サスがなく未舗装の街道をゆっくり走る馬車が超ガタついて振動が凄まじくても苦にはならない。

しかし、毎日別の街や村のいちばん偉い人のところに泊めてもらうのだ。

そりゃそうだ王家の馬車に乗った貴人だもの。

とどめに王太子殿下もいらっしゃる。


凄いもてなしてくれる。アチラからしたら名誉なことだ。

気合い入りまくりのオモテナシが毎日ですよ。

気疲れする。メッチャ疲れる。

大名行列を自分がやる方になるとは思わなかったマユ。


精神的にグッタリしながらもオベール辺境伯邸に着いた時には聖女の微笑みで辺境伯一家のお出迎えを受けたのだ。


「聖女様、王太子殿下、ようこそこの辺境までお越しくださいました。

オベール辺境伯デジレです。」

「妻のオレリーと申します。」

「聖女様、ようこそお越しくださいました。

王太子殿下、オベール辺境伯家嫡男ナルシスです。

お見知りおきください。」


「聖女マユです。私の我儘を聞いてくださいましてありがとうございます。

よろしくお願いします。」

「辺境伯、夫人、久しぶりだな。世話になる。

君がナルシスか。聖女殿とミレイユの学友と聞いている。

引き続きよろしく頼む。」


辺境伯は優しそうなオジサマだったが、いかにも武人といった物腰で視線や動きに無駄がない。

辺境伯夫人は控えめな女性のようだ。

夫の影に隠れるようにして口数も少ないが心から歓迎してくれているのは雰囲気で分かる。

ナルシスくんはあれから普通にクラスメイトとして接してくれるようになった。

実家に来た同級生に気恥ずかしそうにしている様子にシラタマちゃん時代の記憶がくすぐられる。


応接室に通されると、辺境伯がフッと。


「そちらは…」


カミーユに気づいたようだ。


「私の護衛騎士のカミーユ・アルノーです。

あの時、助けていただいたと聞いております。

ありがとうございました。」

「辺境伯様、お久しぶりです。ここでまたお目にかかる日が来るなんて…」


カミーユは万感の思いに声を詰まらせた。


「あ、ああ久しいな。しかしあの傷は…」

「聖女様に癒していただきました。」

「癒しとは…左眼は完全に…」

「それも含めて癒されました。聖女様は正真正銘神の子でいらっしゃいます。

王女殿下も聖女様に癒されて健康を取り戻しました。」

「噂は本当だったのか。聖女様、頼みがあります。

我が領の騎士団は常に前線で戦っております。

なんらかの傷を負ったものばかりです。

出来ればその、診てやってはいただけないでしょうか。」

「もちろんです。辺境伯様。

私が国王様から癒しを任された民は国に汗を捧げますが、辺境の騎士様は国に血を捧げる。

そこになんの違いがございましょう。

明日にでも一同に集めていただけますでしょうか?」

「ありがたいお言葉です。

そして貴女は騎士の心をよくご存知だ。心より感謝いたします。」

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