神さま
「では、私の処遇と仰いましたが、まずハッキリさせたいのは私はあなた方の国の国民ではないということです。
民でも臣下でもない。
それを前提にお決めください。」
「うむ、言われてみればその通りだ。其方は私の客人として遇しよう。
その上で私の側妃として迎えたい。」
「ハア?何言ってんの?側妃?ちょっとやめてよ。
私まだ15才なんだよ。王様?は見たところ30代だよね。
倍以上離れた歳のよく知らない人の2番目とか3番目の妻とか私の感覚では無理すぎる。ダメです、却下します!」
その時、シラタマちゃんはようやく出来た感覚がした。
状況を把握してから密かに試みていたことだ。
いいタイミング。
シラタマちゃんは透明になって騎士のマントから抜け出した。
召喚魔法があって、わざわざ世界を跨いで呼ばれたくらいだから自分でも魔法が使えるのだろうと考えた。
魔法はイメージである。
小説を書くのが好きな友人がファンタジー小説の設定アルアルとして教えてくれたものだ。
合っているのか間違っているのか分からないが試すだけなら損もないだろう。
イメージしたのは光学迷彩。
複数の方式が考えられているが、自分がイメージしたのは対象にあたる光をそのまま反射させずに180°逆の位置から放出するというものだ。
対象の表面全体の各点の全ての角度からの光を反対側に受け流す。
外部からは光が透過したように見えることだろう。
これがたった今発動した光学迷彩魔法。
対象は自分自身とルームウェア。
囲みから素早く抜けると急に消えた聖女に現地人たちが大混乱している。
さて、どうするか…と考えていたら、急に屋外にいた。
抜けるような青空にまばらに生えた緑の樹々、透明度の高い小川が流れていて非常に長閑で落ち着くところだが、急展開過ぎて事態が飲み込めない。
「おーい!コッチだ。」
近くの小さな白い神殿のような作りの建物から出てきたオジサンがシラタマちゃんを呼んでいた。
(あれ?光学迷彩魔法が効かない?)
とりあえず行ってみると、
「ソレ良いねーやっぱり俺が見込んだだけある。」
オジサンがニコニコして話しかけてきた。
「ソレというのはこの光学迷彩魔法のこと?」
「そうそう。そんな高度な魔法は初めてだね。
いきなりカマしてくれた。素晴らしい。」
「えーと、あなたはどちらさま?」
なんとなく大物歌手みたいになってしまった。
「ああそうか、俺は創造神。神さまだよ。」
「え!うーん、神さまだから神殿に住んでる…って、そうじゃなくて!
分からないことだらけなんで、出来れば召喚のあたりから教えてもらえませんか?」
「そうだね。そのためにここに来てもらったんだ。
キミはシラタマちゃんでいいのかな?」
「ああそうですね。先に名乗りもせずに失礼しました。白田麻由です。」
神さまに愛称で呼ばれるのも居心地が悪いのでフルネームで答えた。
神さまなんで好きなように呼ぶだろうし、なんか全知全能っぽいのでなんでもいいのだが。
「たぶん誤解してると思うけど、キミは地球の日本に住む白田麻由じゃないよ。
俺がさっき直接造りだした創造物だ。
肉体も魂もこちら産。記憶を白田麻由から頂いてきたんだ。」
「!…私はニセモノってことですか?」
衝撃の事実に驚くが、それ以上に傷つく。
「いやいや、ホンモノの創造物。
キミは神の子であり、その要素として白田麻由の記憶がある。」
「えーと、お父さまとお呼びするべきでしょうか?
受け入れ難いですが納得も出来ます。
質量保存の法則から異世界転移はあり得ないと思っていましたので。」
「さすが俺の娘。賢いねー
うん、お父さま、イイね。それで呼んでよ。
もう一度言うけど、キミは神の子で王宮の彼らは人の子だから身分的な話だったら誰にも頭を下げなくていい。
まあ王国なら王様以上はないんで同等の扱いにしてもらいなさい。
俺の娘が無理矢理人の子の王の側妃になんてないんでね。
でも、恋愛は自由だよ。」
そう言って神がウィンクした。…オジサンだけど。
「さて、魔法についてだけど早速使ってくれてありがとう。
といってもちょっと先に行き過ぎてるから、確認をしておこうか。
キミは火は出せるかな?」