聖女の計画
翌日マユの側仕えがエドモン大司教も含め揃ったのでプロジェクト聖女の旗揚げとして話すことにした。
「皆さん、当面の間、私に仕えてくれるということでありがとうございます。
私にはまだお父さまに与えれた異界の記憶しかありません。
身分制度のない社会に暮らした記憶なのでそのようにしか振る舞えないのです。
この中では私が主というのは理解しております。
メイドのクロエ以外に敬語となってしまうのはそういったことなので慣れるようにお願いします。
さて、改めて皆の役割について明確にしておきましょう。
メイドのクロエには身の回りの世話を引き続きお願いします。
オリヴィエさんとカミーユさんは護衛として努めてもらいますが、私は神の子として害されない存在と聞いております。
悪意を向けられても恐らく傷一つつかないでしょう。
なので出来れば他の側仕えも護っていただけるとありがたいです。
騎士の在り方として主人を第一に考えるのは理解しますので可能な範囲で構いません。
エドモンさんは教会とのパイプ役となるのでしょうか。
今後は街や王都外、もしかしたら外国にも出向くことがあるでしょう。
各地にあると思われる教会にお願いすることは多いと思います。
よろしくお願いします。
そしてアナベルさんには相談役を。
それについてはこれからお話しする聖女としての計画のなかで重要な役割を担っていただくことになるでしょう。
私は神の子としてお父さまから遣わされた存在ですが、この国に召喚された聖女という存在でもあります。
お父さまからは人の子の中で神の子として在ること以外に指示も要望もありませんでした。
しかし聖女というのは私の異界の知識によると民に癒しを与える存在なのです。
つまりこの国が召喚した私に求めるのは民への癒しということになります。
それを助力するためにあなた方側仕えが国によって用意されたということを知っておいてください。
民への癒しといっても全てに満遍なく施せるものではありません。
基本的には求めに応じるかたちをとりたいと思います。
必要に迫られた者は待っていればあちらから来てくれます。
とはいえ王宮に篭っていてはそれも難しいでしょうから定期的に外に出る必要があります。
そこで週に1日程度、教会に行くことにします。
エドモンさまに手配をお願いします。
これが主な聖女の活動となりますが副業も行います。
それは貴族、富裕層の要望に応えることです。
ここで財務出身のアナベルさんの出番です。
民への癒しはいってみれば国の事業ということになるでしょう。
異界の言葉で言うところの公共の福祉、資金は税から。
私の今の処遇の資金は税から出ているはずなのでこれは当然のことです。
しかし私自身はこの国に所属しませんから今後を考えると蓄財は必須です。
そのための副業となります。
聖女の癒しは民は無料ですが貴族、富裕層は有料とします。
しかし富裕層は別として貴族が必ずしも裕福とは限りません。
相手に合わせて料金を決める必要があります。
取れるところから取れるだけ取る。
アナベルさん、料金は相手に合わせて上限ギリギリに設定してください。
人の子の治癒術師の仕事を奪うつもりはありません。
そして貴族、富裕層に対する窓口と私の活動予定の管理をお願いします。
今後の私の日々の予定はアナベルさんに決めていただきます。
以上です。」
予想外に理路整然とした聖女の話に沈黙が降りたなか、ひとり興奮に目を輝かせている女がいる。
アナベルである。
「聖女様!素晴らしい!さすが神の子、分かってらっしゃる。
お金は大事です。そうです「取れるところから取れるだけ取る」。
これぞ人の子の上に立つ神の子の言葉。まさに金言。尊敬します!
このアナベル、粉骨砕身、努力いたします!」