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聖女ってなんだろう  作者: ran.Dee
第3章
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お引越し

生まれ落ちて1週間とちょっと、その日から住んだ迎賓館から引っ越すと思うと感慨深…くもないか。

なにやら迎賓館の使用人一同が勢揃いして見送ってくれている。

主人でもなく多く来るであろう客の1人に過ぎないのに。

一応、あちらの皇族スマイルを思い出しつつ微笑んで小さく手を振って馬車に乗り込む。

深々とお辞儀されて内心ビビったのは秘密だ。

ゆっくりと走らせた馬車が10分もかからずに千年宮に到着した。

もし仮にここに一生住んだとしたら三千年宮になるのか…なんてつまらないことを考えていた。


迎賓館で付いてくれていた騎士さまに先導されてクロエを従えて王宮を歩く。

今まで来たことのないエリアだ。王族の居住区だろう。

そこそこ歩いて結構奥まったところの宮に到着した。

どうやらここに部屋を頂けたらしい。

正面玄関に王様が待っていた。


「ようこそ聖女殿。我が王妃の宮に歓迎しよう。」

「住まいをご用意くださり感謝します。王様。

王妃様にもご挨拶したいのですが。」

「そうだな。まずは顔合わせだ。応接室にて待たせてある。

王妃と聖女殿の側仕えとなった者たちだ。では行こうか。」


国王陛下自らが案内してくれるらしい。

使用人たちの緊張感がハンパない。

気軽に話ているがそういうものなんだろう。

応接室に着くとすぐに扉が開かれ待つこともなく室内へ。


「これが私の妃のデルフィーヌだ。

フィー、こちらが神の子の聖女マユ殿だ。

まだこの世にきて数日足らず、気にかけてやってほしい。」


王妃デルフィーヌは王様と同様に金髪に青い瞳で強めの美人さんだった。

なんとなくハーフの美魔女だったシラタマちゃんの母親を思い出させる。


「初めまして王妃様。礼儀作法を知らぬゆえ失礼いたします。

創造神より遣わされた聖女マユと申します。よろしくお願いします。」

「まあ!礼儀だなんて。我々の方が礼を尽くす立場ですのに。

ここを自分の家だと思って寛いでいただけたら幸いですわ。

至らぬところがあればなんなりとお申し付けください。」

「あの、あまりその、上下関係に慣れないもので…

どうか居候が来たくらいの感じでお願いします。」

「まあ!ホホホホ、面白い方ですのね。いいわ。

こちらこそよろしくお願いします。」


「うむ、フィーとはうまくやっていけそうだな。

次に相談役の文官だ。こいつがアナベル・マルロー。

クセの強いやつだが頭は切れる。聖女殿なら使いこなせるだろう。」


アナベルはブルネットにヘーゼルの瞳、背が低くよく見れば可愛い系なのだが残念な企み顔なので印象はあまりよろしくない。


「財務部より参りましたアナベル・マルローと申します。

よろしくお願いします。」

「財務!数字にお強いのですね。それは頼もしいです。

それについては近いうちにお願いすることがありますが、とりあえず一般常識的なところを補っていただきたいと思います。

よろしくお願いします。」

「ほう、もう既になにやら画策されていると。

アナベルには聖女殿の動向報告も行ってもらうので事前の確認は不要ではあるが、相談ごとがあればいつでも受けるのでな。

一般常識等については別途家庭教師を用意するのでアナベルにはそこから漏れたものを教えてもらうといい。

次に護衛騎士だ。オリヴィエ・ラカンとカミーユ・アルノー。

オリヴィエは要望されたマントの騎士、カミーユはその婚約者だが騎士としても一流だ。」


オリヴィエは白みがかった金髪にグレイの瞳の優男。

騎士の装束がサマになっていてモテそうだ。


「オリヴィエさん、その節はお世話になりました。この世界に来て初めて親切にしていただけて感謝しております。よろしくお願いします。」

「自分は国王陛下の命に従ったまでですが少しでもこの国の印象が良くなったのなら幸いでした。聖女様に安心して過ごしていただけるよう身命を賭してお護り致します。」

「カミーユさんは…」


そこでシルバーブロンドの女性騎士の左眼の眼帯に気づく。

探ってみると眼球が失われていることが分かった。

これはチャンスである。

マユはかねてから欠損部位の修復の可否を確認する機会を伺っていたのだ。

遺伝子情報には全ての人体のパーツの設計図が記録されているという。

シラタマちゃんはiPS細胞などの再生医療についての文献も理解出来る範囲で読んでいた。

魔法はそんなザックリしたイメージでも実現出来てしまう不思議な力なのだ。

出来そうな気がすると思うと同時にやっちまっていた。


(ああ!まだ本人の同意も得てないのに…)


出来てしまったようだった。


「!!!」


話途中で言葉を途切れさせた聖女と急に慌てだした女性騎士に、周囲は困惑するばかりだ。


「カミーユさん、すみませんが眼帯を外して見せてもらえますか?」


聖女が人間的にどうかと思うような発言をしたので普段を知っている王様とクロエが目を剥く。


「…はい。」


女性騎士が恐る恐る眼帯を外すと…


「カミーユ!君の眼が!美しい君の眼が!!

ああ聖女様、これは奇跡だ。神のみ技に他ならない。

ありがとうございます。本当にありがとうございます!!!」


騎士オリヴィエが婚約者カミーユを抱きしめながら叫んでいた。

呆然としたままの婚約者を気遣う騎士に配慮して2人に下がってもらった。


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