「第一回報告」
佐和山トンネルを抜けると、そこは国道8号線の彦根市街方面だった。最初に入った場所に戻ってきた。
正澄さんの話ではお札を持っていればいつでも戦国時代の佐和山城に行けるようだが、頻繁に現れたら怪しまれてしまうので、依頼があれば正澄さんが迎えに来てくれる事になった。
依頼時は社長の笑田から連絡があると言われた。
とりあえず僕は着替えを済ませてスマホで社長に連絡をした。
道端でする話でもないから会社に来いと言われてむかった。
「お疲れ様です。」
僕が会社に入るとまだ数人の社員が残っていた。その一人が
「あっ、大谷さんお疲れ様です。
帰社されたらすぐに社長室に来るようにって社長が言ってましたよ。」
「ありがとうございます。」
僕は社長室のドアをノックして部屋に入った。
「いや~お疲れ。
どうだった戦国時代は?」
「まさかタイムスリップするとは思いませんでした。
佐和山城って見た目は豪華でしたけど中はそんなに豪華って感じではなかったですね。」
「まぁ、この辺は色々な説があるようだから明言は避けるけど、石田三成は豊臣秀吉の支配力の強さを強調するために見た目だけは豪華な造りにしたと言われているよ。
本来は三成本人が住むはずだったが秀吉の政務を代わりに行ってたから秀吉の側を離れるわけにもいかなかった。
もともとが豪華な建物とか好きじゃない感じの質素倹約だったりをする人だったから外側にしかこだわらなかったんじゃないかな。」
「あのタイムスリップに関しては何かご存知なんですか?」
「どうだろうね~。
例えば妖怪や幽霊って本当にいたと思う?」
「少なくとも見たことはないですね。」
「つれないね。
日本はあらゆる物に神が宿るとされ八百万の神がいたとされている。人に蔑まれるようになった神が変化して妖怪になったんじゃないか?っていう説もあったりなかったり。
現代日本で解明されてない現象はやはり神の御業と呼ぶしかないんじゃないかな。」
「神のイタズラじゃなくてですか?」
「大谷君には言葉で勝てそうにないな。
そこはほら見方が違えば美人にもそうじゃなくも見えるのと一緒だよ。」
「人の外見に例えるのはやめた方が良いですよ。
アメリカとかなら間違いなく差別だって言われますから。」
「ふっ、気をつけるよ。
じゃあ、報告を聞こうかな。正継殿の話を聞いてどう思った?」
「人を取り巻く環境は簡単に変わります。
本人が望んで環境を変えたなら、それは自己責任です。
ですが、正継さんの場合は三成さんの大出世に伴って強制的に環境を変えられています。
時代背景や身分的な話で不満を漏らせないというのも本人にかなりのストレスを与えていると思います。
僕はあまり歴史に詳しくないですが、石田正継という人物がどうなったのかも何かを成した人なのかも知りません。
まぁ、わかっていることは今後も定期的なガス抜きをしてストレスの蓄積を軽減した方が良いという事ですかね。」
「まぁ、先入観があるのは良くないから教えないけどなかなかに面白い人生を歩んだ人だよ。
まぁ、今後も依頼が来たら大谷くんに頼むからよろしく。」
「了解しました。では、失礼します。」
僕は挨拶をして報告を終えた。