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正継さんだって愚痴りたい  作者: Making Connection


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「過去からの手紙」

僕は仕事が一段落したのもあって市内にある実家に帰ってみた。

僕の実家は少し古い家で敷地の端の方には蔵があるくらい古い家である。

「ただいま。」

僕が言うと母が出迎えてくれた。

「おかえり。そういえば蔵の整理をしてた時に見つけたものがあってね。

はるに見てもらおうと思ってたの。」

「なに?お宝でも出てきたの?」

母は首をかしげながら

「う~んどうかな?とりあえず見てよ。」

母に促されて今に入って座ると母が何やら古い木箱を持ってきた。

「蔵の奥底に今まで全然開かなかった引き出しがある棚があったでしょ?」

「ああ、あのどこかが歪んでて開かなくなったんじゃないかって話の棚?」

「そうそれ!その棚の引き出しが急に開くようになってね。その中から出てきたのがこの木箱なのよ。」

「へぇー、それで何が入ってたの?」

「それがね、この木箱に鍵なのか何なのかわからないけど、ここにへこみがあるでしょ?ここに何かをはめれば開くんじゃないかと思って探したけど見つからなかったのよね。」

僕は木箱を手に取って母の言うへこみを見てみた。何か見た事がある形だなあと思って、ふっとズボンのポケットに手を当てると少し硬い物にあたった。ポケットから出してみると正澄さんから貰ったあの札だった。

試しにへこみにあててみると見事にぴったりはまった。

「はる、それなんなの?なんで春の持ってるものがぴったりなの?」

僕も理解できていないが母の驚きようがすごかった。僕は何とも言えずに木箱を開けてみようとした。

木箱は難なく開いた。ワイワイ言っていた母も箱の中身が気になったのか黙ってしまった。

箱の中身を見ると古い紙が入っていた。手に取ってみると手紙のようだ。

封筒などはなく大きな紙で包まれている感じだった。その紙に宛名が『大谷春継様』となっていた。

「えっ?はる宛の手紙?なんで?」

「昔の先祖の中には春継って名前の人はいなかったの?」

「さあ、家系図とかないからわからないけどどうなのかな。まあ、とりあえず見てみましょう。」

僕が手紙を開いて見始めた。

『大谷春継様、この手紙が貴方に届いていてくれるのかはたまた届く事もなく無くなってしまうかはわかりませんが、届いてくれている事を切に願います。

大谷さんに読んで頂けるように私が勉強した範囲で大谷さんが読める字を意識してこの手紙を書かせて頂いております。お見苦しい所もあると思いますがご勘弁ください。

大谷さんには父の件で大変お世話になりました。大谷さんにはお話ししていませんでしたが、今回の依頼に際して私と弟、そして弟の友人である大谷殿にもご協力を頂き実現できた奇跡でした。

本来の目的としては父に対する親孝行であり弟の父に対する人生を変えてしまった事に対する贖罪をしたいという事でした。実際に孤立しがちだった父の話し相手になって頂いた事により父の人生も少し楽になっていく様子を見る事が出来ました。

この事に関しては言葉では言い表せないほどの感謝をしております。

我々は自分の運命を変える事ができる立場にいながら変える事はしませんでした。

私の命だけなら歴史において特に大した影響もなかったのかもしれませんが、今まで共に生きてきた家族と決められた運命を共にする事が最終的にたどり着いた私の答えでした。

佐和山が炎で包まれたとしても我々の生きた証が残り、誰かが弟の人生を語り継いでくれるなら私はそれが幸せです。大谷さんが今回の依頼を受けて頂けたのも実は大谷殿の子孫であった事が理由となっています。なんのご縁があったのかわかりませんし私程度の人間が理解できる範囲ではない話でしたが、この件を受けてくれたのが大谷春継という貴方で本当に良かったと思っております。

人には言えない事も多々あり、大谷さんには負担をかける結果となってしまった事を申し訳なく思いますが大谷さんが幸せに暮らせるよう心よりお祈り申し上げます。 正澄 』

僕は驚いた。これは石田正澄さんからの手紙だ。母は内容を読んでも理解できていないようで、

「これは誰かへの感謝の手紙って事よね?ご先祖の大谷殿って人とこの手紙の宛名になっている大谷さんに宛てた手紙?」

母は言いながら混乱していくさまが見て取れた。それはそうだろう時系列がおかしいからタイムスリップしているという前提がないと意味がわからなくて当然だろう。

「この手紙・・・・僕が預かってても良いかな?」

「まあ、はるの名前宛だからいいんじゃない?私らには特にお宝感がないからいいわよ。」

母が言う通りこの手紙は僕にとっては大事な物なので手に取って僕の部屋へと移動した。

僕はとりあえず落ち着いて考えてみた。今回の依頼の本来の目的やそれに伴った石田兄弟による親孝行だったという事、そして僕が大谷吉継の子孫だったという事も含めて驚いたことが多かった。

僕は本当に貴重な経験と知識も得る事が出来た。この経験や知識を活かして今後も仕事を頑張って行こうと思った。愚痴を聞くだけの仕事と言われる事もあるが人の話を聞く事によって人を助ける事ができるし、ただ聞くだけの簡単な仕事でもない。そもそもが簡単な仕事などなく、すべての『仕事』には大切な役割があり、その道のプロがいる。自分のやりたい仕事やできる仕事をやり続けて匠と呼ばれる人間になるもよし、様々な仕事をこなせるオールラウンダーになるのもいいだろう。

仕事は誰かのためになる事をするのだから、どんな仕事にも優劣は存在しない。

貴方の就いてる職業は何ですか?貴方のなりたい職業はなんですか?それがなんであったとしても胸を張って『自分の職業はこれです』と言えるようになれたら人は幸せなのではないでしょうか?

学びと出会いを経て、貴方が幸せになれる職業と出会えることをお祈り申し上げます。

                                         完

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