「第三回報告」
現代に戻って、社長室に戻っていた。
「大谷君、今回はどうだった?」
社長の笑田は笑顔で聞いてきた。戦国時代に行くと必ず直接報告する決まりとなっているが、こうして対面するのも緊張する。
「歴史の授業で習った朝鮮侵攻の話を正澄さんから聞きました。
武士として働くというのがいかに大変な事だったかという話を聞きました。」
「ほう、それは詳しく聞きたいですね。他には何かありましたか?」
笑田は楽しそうに言った。
「正継さんからは京極氏の木材伐採の話を聞きました。
何でも元主家だったらしく相手にするのは大変だったらしいですね。」
「人間関係とは難しいですよね。
対面していても相手との間に距離を感じるときもある。
上下関係とは常に枷になり自由な発想を阻害する。だが、楔がなければ目標に辿り着く事もなく彷徨う事になる。人を導くために必要な紐でもある。常に発想は阻害するが経験や知識に基づいた先導により彷徨う事なく道を進むことができる。
だが、その関係を良くない方に使おうとする者もいる所が人間関係を難しくしているのだろうね。」
「正直に言うと、働き方だったり人間関係だったりっていうのは現代でも通じる問題だなとは思いましたね。
生き方が決まっていない現代ではある意味でこういう風に生きろという感じの強制があった方が幸せなのかなと思う部分もありますね。」
「自由でいるというのはやりたい事が何でもできると思いがちですが、環境や自分の能力の限界で自分の思い描いたような自由は手にできないものです。
だからと言って何もかも決まった生き方をするのはしんどいので、どちらが良いとか決められません。
ですが、何になりたいかを決められてそのために努力する事ができる現代の方が幸せなんだろうなと思います。もう少し将来に役立つ勉強を子供の頃から教育しないといけないなとは思いますけどね。」
「次は教育関係の事業を始めるんですか?」
僕が聞くと笑田社長はにやりと笑って
「それは・・・面白そうですね。
コミュニケーションの取り方とかの授業なら大谷君に講師をお願いするのもいいかもしれませんね。」
どこまでが本気なのかわからない社長なので適当に流して聞いていたが、その眼の奥には何か炎のようなものが見えた気がした。