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宝玉はまた輝く  作者: 日月星
堕ちた一等星、もう一度輝きを取り戻すために希望(そら)に手を伸ばす
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5話 フラグは回収するもの/私はどこで間違えたのだろうか

はい、ということでやって来ました第二タウン前のエリアボスが根城にする森の中。


先ほどまでの草原とは打って変わり、森の中ということで昆虫系のモンスターが増えてきて容赦なく状態異常の攻撃をお見舞いしてくる。


私は昆虫などは苦手としていないが人によっては苦手なものはいるだろう。


どうやらうちの女性陣は平気みたいでミミちゃんはケラケラと笑っておりターレットさんは触ろうとしている。


反対にカミノコ君は若干引いており、オレックスさんに至ってはキモいキモいと言いながら魔物でもない昆虫を大きな剣で振り回して蹴散らしている。


この様子ではボスも昆虫系である可能性が高い。いや、ただの昆虫系ではないような気がする。


あの人達が「ついてからのお楽しみ」というメールを送っているから間違いなくそうであろう。


「うげっキモ」


「おー、大きな芋虫さんだ」


「……ウネウネ」


「よ、良きに計らえ」


ほらやっぱりな。案の定ボスモンスターは昆虫系、しかもウネウネと気持ち悪い動きをしている大きな芋虫だ。


あー、嫌な予感が当たってしまった。これによってうちのメンバーの半分が即効で戦闘不能になってしまった。


嫌な顔を浮かべているオレックスさんてまだマシな方。カミノコ君なんて顔を真っ青にして怯えている。


カミノコ君、少しはミミちゃん達女性陣を見習おうよ。


ミミちゃんなんかは何故かわからないけど目をキラキラさせて喜んでいるしターレットさんは興味深く見ておりなお触りたがろうとしている。


「ハイハイ、珍しいのはわかりますけど戦闘準備。オレックスさん、いつものやつお願いします」


「あれやんのかよ!」


「当たり前です。やらないと攻撃が後衛組に行きますよ」


「わかったよ! やればいいんだろやれば!」


よっぽど芋虫が苦手のようでやりたがらなかったが私が言えばやってくれる。これぞ私の人徳がなす技か、自分の徳の高さが怖いくらいに思える。


狼の遠吠え(ファング・オー)


技名が唱えられると共に芋虫に向かって三連続の透明の渦が飛んでいく。


狼の遠吠え。挑発系のスキルで相手の注意を自分に引き寄せるもの。これでタゲはオレックスさんに移った。


近接戦闘職だから体力は他のメンバーよりも多く物理防御も高い。まさに壁役には相応しい。けど言ったら怒るだろうな、この人もまたプライドが高く自分を盾代わりに使うことをよしとしないだろう。


オレックスさんが盾役に徹している間にカミノコ君にはその彼の補助を行ってもらう。


オレックスさんには防御力アップのバフをかけ、代わりに相手には攻撃力ダウンのデバフをかけてもらう。


その間に私たち三人が攻撃に専念する。これが私達が今まで行っていた必勝パターンだ。


だが流石はエリアボス。今まで戦っていた敵とは段違いに防御力が高く硬い。ダメージゲージの減りもあまりよくはない。仕方ない、戦法を変えるか。


「スイッチ。私が囮になりますんでオレックスさんは代わりに攻撃に参加してください」


「よし来た!」


生き生きした掛け声とともにオレックスさんは容赦なく持っている大剣で敵に攻撃を仕掛けていく。


一撃一撃の攻撃力は高いがその分大振りでになってしまう。なので隙が出来てしまい被弾の数は増えていき、それに伴ってダメージ量も増えていく。それをカミノコ君の回復と私の回復アイテムで回復していく。


「ミミちゃん。大技解禁、大きくて派手なの頼むよ」


「任された!」


カミノコ君のMPも私の回復アイテムにも限りがある。だからこそ早期決着が望ましく切り札を切る。


私からの指示を受けたミミちゃんはウキっウキになりながら魔法の準備を開始する。


どうにもこの子は盛大な攻撃を放つことに快感を得ているみたいで初めの方は大技を狙おうとしていた。調教……ゲフンゲフン、指導するのには苦労したよ。


大技を放つにはそれなりの時間がかかる。まあそれまでの時間を稼ぐことは出来るけど。


私はすでに体力ゲージの半分を超えたダメージを受けている芋虫に対してとあるアイテムを投げつける。


投げつけたのは火炎瓶、初期で手に入るアイテムの中でも意外と攻撃力は高く攻撃力のない私にはとてもいい代物だ。ただそれほど用意できなく今の私には虎の子だ。


どうやら火の属性が弱点のようで普通の攻撃よりも攻撃が通る。流石に初期の方はなんの捻りもないか、これで別属性が弱点だったら何の嫌がらせかと訴えるところだった。


「ファイヤーランス」


何よりミミちゃんに用意させた魔法が決め手になりそうだ。手の上に浮かんでいる炎の槍を可愛らしい声と共に投擲する。


炎の槍は見事芋虫に突き刺さり三割近く残っていたHPは一気に吹き飛んでしまった。


なにこの魔法、この子どれくらいスキルポイントを魔法系列に注ぎ込んだんだ。極振りにも程があるでしょう。


まあそのおかげであっさりと決着がついたからよしとするか。ミミちゃんも特大の魔法を決められたことに満足しているみたいだし。


さて……ここを過ぎればやっと東の第二タウンに着く。そこには私を置き去りにしたリキッドが待ってるはず。


待ってろよリキッド。その浮かれた顔面に拳叩き込むから。私はしっかりとフラグを回収する男なのだ。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「やあ、無事に森を超えて来たようだね。やっぱりカエクス君はやれば出来る——」


「死に晒せこのニート野郎!」


「会って早々顔面にパンチを決めにかかるなんて流石はカエクス君だよ」


チッ、こいつ、俺の会心の一撃を難なく掴みやがった。後衛職のバッファーじゃないのかよ、相変わらず無駄にいい反射神経してやがる。


俺はどこで選択肢を間違えたんだ。やはり意地を張らずに戦闘系にしとくべきだったか、それとも意表をついて飛び蹴りにしとくべきだったか。


なんにせよこのニヤついた表情のニート野郎を殴らないと気が済まない。イライラが収まらずストレスでどうにかなってしまいそうだ。


だから俺のストレス解消のために殴らせろ、この野郎!


「……とまあ二人がいつも通りに戯れあっている間にこっちはこっちで挨拶しておこうか」


私達が殺し合い(戯れあい)をしている間に私の今のパーティーと昔ながらのフレンドが会話を始めた。


「僕はクロード、格闘家だよ。そして隣にいるのがサリバンさん」


「よろしくな坊主ども。見ての通りの双銃使いだ」


クロードさんは陽気で飄々としている格闘家。私とは歳が近いようでまだ学生らしい。本当のところは謎であるが。


その隣にいるのがサリバンさん。渋い系のおじさんのアバターをしており言動も若干荒っぽい。でも私は見た目通りではないと睨んでいる。俗に言う成り切りプレイだろう。


「で、こっちの鎧の姉ちゃんがルイスさんで向こうで気持ち悪い笑みで動物を愛でているのがバルベルサIII世さん。僕は長くてめんどくさいからバルさんって呼んでるけどね」


「よろしく若人達」


胸を大きく叩いて挨拶をする。が、盛大に咳き込んでいるので締まらない。ルイスさんしっかりしてるようでうっかりしているんだよな。


まあそれでもバルベルサIII世さんよりはだいぶマシ。あの人は自分がやりたいことをひたすらやるだけなんだから。こっちの指示なんてまったく聞こうともしない。


けど、そのくせ天才肌で夢中になることにはとことん夢中になりいい結果を残している。


それを証拠に第二シリーズでいくつもの伝説を残しており、第二シリーズにおいてはナンバーワンプレイヤーと言ってもいいだろう。


「で、向こうでカエクス君を完封しているのがリキッドさん。うちのリーダーでああ見えてもしっかり者で常識人だよ。まあそれ以上に好奇心が旺盛でこのチームきってのトラブルメーカーなんだけどね。そのくせ本人の性能が変人じみて高いから困ったものだよ」


まったくその通りだよ。完全後衛職のバッファーでサブ職鍛冶職人なのにその辺の格闘家よりも手強い。


ちなみに初代の時は様々な職業をやっておりいずれも高スコア取ってんだよな。この人、ムカつくほど戦闘技術高いんだよ。


まあその初代の時にトラップなどを使って散々罠に嵌めたりこっそり暗殺したりしたのがこの私だし、真正面からボコボコにした人も居るから最強っていう訳でもないんだけどな。


そう言えばやっぱりあの人もこのゲームやってんのかな? 逆にやっていない方がおかしいって話だけど。


「ハアハア……そう言えばさ……ハアハア……セラフィムさんとはもう会ったのですか……」


「うん、あったよ」


私が息切れを起こしているというのにリキッドさんはまったく息切れしてないどころか汗ひとつ掻いていない。


ホントこいつ私と同じ人間なのか? 実は高機能性AIだと言われても私は信じるよ。


「サービス開始早々にログインして周りなんて気にせず一目散に北の第二タウンに向かって行った。お陰で第二タウンのファーストトラベラーは取られてしまったよ。まあ東の第二タウンのファーストトラベラーは私達なんだけどね。どう、羨ましい?」


「頭かち割るぞテメー」


「悔しかったら私に攻撃を入れてみなよ。話はそこからだね」


ホントムカつくこいつ。いい歳して子供じみたことしやがって。


まあ、とりあえずまた今度この子供大人を殴るとしてやっぱり凄いなあの人、強ちNPC疑惑は嘘ではないかもしれない。


セラフィムさんはこのシリーズの古参中の古参。初期の頃からやりこんでいてスーパー廃人であるリキッドさんよりもさらにプレイ時間が長いウルトラ廃人。


ホントいつ寝てんだよって言うくらいやり込んでいる。ついた通り名がNPC。


運営側っていう説も出てたけどファーストトラベラーを取るっていうことは違うのか? けどそれだとプレイ時間の説明はつけようがない。


いや待てよ、一つだけ可能性がある。けど、それじゃああの圧倒的運動量はどう説明するんだ?


いかんいかん。考えれば考えるほどドツボにハマってしまうような気がする。


まあいいか、あの人が何者であろうとも。


この目の前にいる社会不適合者とは違って常識人だし怒らせなければ普通にいい人だし。また今度会った時にでも挨拶しとこ。


とりあえず、今日は第二タウンまで行けたことだしログアウトして寝ようか。


次回掲示板回

なので水曜日くらいに更新します

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