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宝玉はまた輝く  作者: 日月星
地に這いつくばろうとも、泥水を啜ろうとも、人は歩まなければならず
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1話 すべてお前の影響

「クリスタル学園? 聞いたこともない学校だな」


「ほら、あの全中MVPのコウメイがいる学校だよ」


「えっ、あいつまだアメダスやってたんだ。てっきり上に所属してるもんだと思ってた」


「じゃあ、その学校ってすごいんじゃ……」


「いや、それ以外は寄せ集め。夏の予選なんてあのセントラルにボコボコに叩きのめされたって聞いてる」


「じゃあ俺らも勝てちゃうんじゃねー」


「もしかして俺達の時代、来ちゃったんじゃない?」


「この調子で地区予選突破しちゃうんじゃない?」






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「——というくらいになめられているだろうな」


私は現在向こうで行われている会話をある程度予想しながら説明する。まあ間違いではないだろう、相手から見たら私達は今年出来たばかりの弱小校だ。


一回戦の戦いとか見たらそう油断はしないが向こうは万年予選敗退の高校、そこまで士気が高いとは思えずこちらの試合とか見ていない可能性すらある。ちなみに私は全試合を見ており対策は考えている。


そう。私達クリスタル学園は今、冬の全国大会、それの出場するために行われる地区大会、それまた前戦である地区大会予選の初戦を戦おうとしている。


冬の部は夏とは違い全国を数ブロックに分け、そこのブロックの上位数チームが全国大会で戦うという仕組みだ。


ちなみに夏に好成績を納めた高校は予選は免除、地区大会本戦からのスタートである。当然ながら私達が夏の大会でコテンパンにされたセントラル学園は地区大会からの参加である。


「お前らはそれでいいのか?」


だからと言って、私が対策を十分に取り、かなりの確率で勝てるだろうと言うことを素直に伝えるつもりはない。言っても油断させるだけで万が一ということもある。だから逆に煽ってその気にさせる。


「よくねーだろ」


ほーら、いい具合に乗ってくれた。この部の中で煽り耐性がないシャクドさんが見るからにわかるくらい怒っている。


「そんな舐めている奴らは全員ぶっ潰す。いや、そいつらだけじゃねー。全国制覇するために全て叩き潰す」


「先輩、言葉遣いがよくないですよ」


対照的にデールは冷静だな。さすがにこんな単純な作戦には引っかかってくれないか。


「殲滅……でしょ?」


ああうん。そう言えばこいつもこいつで結構喧嘩早く頭に血が昇りやすかったな。何気に実家に喧嘩売って家出するくらいだもんな。まったく、うちの部はこうも戦闘狂ばかりで困る。いったい誰の影響だ。


「最低でもコールドゲーム。蹴散らせて来い」




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




静まり返る会場。それは見ている人達が少ないからではない。確かに無名校同士の試合というものは客は入りにくい。それでも両校の関係者やコアなファン、それから一部の記者などはいる。そのもの達のほとんとが声を出せずに呆気に取られていた。


それもそのはず。開始早々にクリスタル学園が猛攻を仕掛け、どんどんと相手高校の選手を狩っていき、旗を取りどんどんとゴールへと侵入していく。


あまりの圧倒的な差により呑気に見ていた観客達はドン引きしてしまう始末。挙げ句の果てにはコールドラインの百点差か敵の殲滅のどちらが先にたどり着くかと話題になっていたくらいだ。


それもわずか十五分ほどで百点差を達成されたから二チームの間にどれほど差があったかと言えよう。当然ながら試合は前半で終了した。だと言うのにクリスタルと対戦したチームのメンバーからは悔しさはなくどちらかと言えば早く終われたという安堵感が漂っていた。


「うーん、せっかく見に来たというのにこれじゃあ意味ないね」


逆に今の試合内容に不満を抱いている者もいる。その者は観客席の一席で見ており目にわかるくらい不満気だった。


アタルである。騒がれないように変装はしており意外とバレていない。それもそれで少し不満に思うところがある。


「まるっきり本気を出していない。ほとんど流している感じだった」


そうである。周りの目から見たら圧倒的実力を見せつけたように見えたが実際のところは最初の一当て以降はそれとなく流していた。それは主力メンバーが著しくあるものに至っては交代していた。どことなくあの策士の顔が目に浮かぶ。


「当然です」


そのいつものアタルの駄々に返事する者がいる。ストレートの金髪で目で追ってしまうほどの美女。アタルとは違う意味で目を引いてしまう。


「彼らは夏の時点でも地方の中堅レベルはありました。そのような相手が初戦、しかも万年初戦負けの高校相手に本気でやるはずがありません……こちらの目がありますので余計に」


「だからってあそこまでやることはないじゃん」


「確かに一気に決めるとは思いもしませんでした。いや、ここは手の内を晒さないためにあえて一気に勝負を決めたのでしょうか——」


ぶつぶつといつものように一人に思考に入る美女(イト)。その様子を見ながらアタルは「せっかくいつもと違う格好をしているのにもったいない」と密かに思っていた。


「これは地区大会まで待つしかないか。あーあ、早く上がってこないかな。また戦うのが楽しみだな」


一人思いを馳せる。今、長くて熱い冬への道のりが幕を開けた。

今日はお詫びの怒涛の連続更新

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