ニートの島崎
俺は島崎健人、28才。
身長は180cm。日米の一流大学を卒業後、一部上場企業に就職し、若くして年収1000万超えを達成したエリートビジネスマンだ。今は都心のタワーマンションの上層階で、元モデルの妻、そして可愛らしい2人の子どもと共に家族4人幸せに暮らしている・・・。
というのは、ネットの中の話。現実の俺はただのニートだ。
出身大学はごく普通のFラン大学、就職活動はうまくいかず、やっと掴んだ内定先はブラック企業。3年でなんとか逃げ出し、工場や清掃の仕事をしていたが、これも長く続かず、半年前に無職になった。
とは言え、別に俺は元からダメ人間だった訳じゃない。勉強はトップではないが上の下くらいだったし、スポーツも下手じゃなかった。高校だって県内で8番目の高校だ。俺より偏差値が低い奴らはたくさんいた。実際、そいつ等は大学には行ってない。俺は曲がりなりにも大卒だ。
今日も昼に起きて掲示板に書き込む。
(『一流大学卒、一部上場企業勤務の上級国民だけど、質問ある?』っと」)
レスバのゴングが鳴った。嫉妬に狂う奴らの叫びが画面に浮かび上がる。
≫1 部屋から出ろよおっさん
≫1 昼間にこれ書き込んでも説得力なし
≫1 働け
≫1 俺ハーバードだし。はい、論破
(バカめ、昼間に書き込んでるのはおまえ等も同じだろ!
『≫6 君こそ昼間からなにやってるのかなー?』っと)
向こうはだんまりを決め込んだ。俺の勝ちだな。
≫1 証拠うp
(ここからが勝負だな。『証拠のあげかた知らん』っと)
≫1 はい、解散
(くそったれ、勝手に切りやがって!)
・・・・・・・
証拠なんてない。だって嘘だから。悔しさと悲しさがこみ上げてきた。何にもない1日。昨日も今日も、多分明日も、俺はここでパソコンと1日中睨めっこだ。なんでこんなことになったんだろう。俺よりもバカな奴はたくさんいる。なんで俺が・・・。
(とりあえず、外出るか)
俺はパートに行った母親の財布から千円札を3枚抜き取り、外にでた。