我がプロローグ
意識高く生きていたかったのだ、俺は。
派遣社員からドラマティックな抜擢、正社員へ上り詰める人生計画は、アポなしで現れたそれにより儚く消える――
――やれやれ。
この日一日だけで二桁は超えたその独り言を吐き出し、馴染んだ夜空を見上げる。
思えば今日は散々であった。まぁ昨日から、遡れば随分と長い期間散々な訳ではあるが。
まず一つ、本日正式に正社員への道が閉ざされた。
俺の派遣先のお偉方は随分と陽キャラがお好きらしい。
奴が上っ面の愛想を振りまき、1時間に1度は欠かさない煙草休憩(ご丁寧に仲の良い上司が席を立てば追ってゆく)で遊んでいる間、こつこつこつこつとやってきた俺の姿は見えないものらしい。
まぁ俺もその合間にソシャゲ休憩はしていたのだが。
「来年もまた募集するみたいですから」そう取りなす派遣元の営業の言葉がまた刺さる。
同期が先をゆく、それを追うしかないと?
そしてふたつ。本日職を失った。モチベあがらんし、俺の1年は尊いのだ。
一瞬有給を使い切ってから等と思ったが、俺の怒りを思い知らせる為にそこはけちらない。
先に思い知るのは来月の俺かもしれんが。
……そこで最悪なそれらのカウントを止めた。きりがない。
「とっとと引っ越してベンガルの仔猫と暮らしたかったんだけどな」
俺の計画ががらがらと音を立てて何度目かの崩壊を知らせる。やれやれ、やれやれ。
スマホで戯れに探す求人情報は脳にまで届かず虚しく視界を滑る。
やたら明るい白地の一面が目に眩しい、ちかちかする。
いや、違う。明るいのは目の前だ。
そこには
変わった格好の女が立っていた