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ウッディライフ! ~ この木なんの木? 私です ~  作者: 鷹山 涼
5章ですよ わ……私がお母さんですか!? お姉ちゃんではダメですか?
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56話 中二病相撲からのサムズゲッツ

どうもこんにちは、モーリンです。


 あれから、村の皆さんも大勢が参加して、村の外の一画に、何かを造り始めました。

 しばらくして完成したそれは…… え~っと、なんでしょうかね?

 (つな)のような物で円形に区切ったフィールドに魔法陣のような模様や、謎の文字が書いてあります。 ……中二病デザインの土俵(どひょう)……でしょうか?


 ここで中二病スモウレスリングでも始まるんですかね?

 眼帯をして腕に包帯を巻いたお相撲さんが、ゴシックメタル系の曲をバックに、

 『くははははっ! 我が腕に宿る邪神の力を見よ! 這いよる混沌の張り手(ニャルラト・ハリテ)!』

 とか言いながら相撲をするのでしょうか? 少し見てみたい気もしますね。


 異世界の相撲は一味違いますねー、っとか思っていると…… おや? ちくわちゃんが土俵に上がりました。 女の子が土俵に上がったら怒られちゃいますよー!

 あっ、今度は反対側からフードさんも土俵入りしてきました。 ……もしかして、ちくわちゃんとフードさんで相撲を取るんですか?


 あれれ? フードさんがちくわちゃんにプロポーズするって話じゃありませんでしたっけ? それがなぜ相撲を取る展開に?


 私の困惑をよそに、マッスルさんが号令をかけました。 多分、はっけよい、のこった! 的な事を言ったんでしょう。 そして、試合が始まると同時に、フードさんが氷の槍を生み出して発射しました。 ちくわちゃんは試合開始のタイミングでいきなり前に駆け出して、氷の槍を杖で叩き割りながらフードさんに急接近して、その頭に杖を降り下ろします。 わあっ! 死んじゃいますよ!?

 

 フードさんはそれを避けながら、指揮棒みたいな物を構えると、そこからビームが発射されました。

 それを大きく飛び退きながら避けるちくわちゃん。 軽やかな動きですねー。


 んー、今、ある衝撃的な仮説が頭を(よぎ)りました。

 ……もしかしたら、これって相撲ではないのでは?


 私は相撲は詳しくないので、自信を持って断言はできませんけど、おそらく相撲でビームを発射することは無いと思います。

 あったとしても、せいぜい片手で数えるくらいの数しか前例は無いんじゃありませんかね?


 しかし、相撲じゃないのなら、これはいったい何なのでしょうか?

 ちくわちゃんも初手で頭蓋骨を狙いに行っていますし、フードさんもビームを発射しちゃいました。 これではまるでガチの決闘みたいじゃないですか……。


 ……ん? もしかして…… これはガチの決闘なんですか!?


 えっと、フードさんがちくわちゃんに一目惚れして…… 相撲を取るかと思いきや、次はガチの決闘? 状況が急展開すぎて置いてけぼりにされた気分です。

 青春テニスアニメがいつの間にか異能力テニス風バトルアニメに変わっていたのを見た時の気分を思い出しますねー。

 

 ……んー、それこそ、そのテニス風アニメではありませんが、戦いがだんだん派手になっていってますねー。

 この中2病土俵の効果でしょうか? 土俵の外には被害は出ていないようですが、普通ならクレーターが量産されているくらいの戦いです。

 

 危ないので今すぐ止めたい所なのですが、村の皆さんが大人しく見守っている所を見ると、この戦いは重要な意味のあるものなのかも知れません。

 だとすれば、事情をわかっていない私が勝手に止めてもいいものなのか迷いますね。

 

 ……とりあえず、もしも怪我人が出ちゃっても大丈夫なように、髪の毛を薬草に変えておきましょうか。

 ぬぬぬぬっ、ソイヤ! ……はい、髪の毛に回復効果を持たせました。 多分成功しているはずです! ……成功……してますよね? うん。

 傷に効く葉っぱも用意しましたから、これで安心して見ていられますね。



 フードさんがたくさんの氷の粒をばら蒔きます。 ちくわちゃんは、避けないで正面からその中を突っ切って近づき、フードさんをちくわちゃんパンチ、略してちくわパンで殴り飛ばします。


 ……う、うん、安心して見ていられます……ね?


 フードさんが血を吐きながらぶっ飛んで地面に叩きつけられます。 ですが、氷の中を突っ切ったちくわちゃんも所々から血が出ています。


 ……安心して……み……みみみ、見ていられられられ……られます?


 よろけながらも立ち上がったフードさんがむにゃむにゃと呪文を唱えると、でっかい氷の……矢? 槍? とにかく刺さったら痛そうなやつが現れて、飛んで行きました。


 ちくわちゃんも、負けじとむにゃむにゃ呪文を唱えて、風の槍を創りだして投げました。


 氷のとんがったヤツと風のとんがったヤツはぶつかり合って砕けて、爆風を起こして周りに氷の破片をばら蒔きます。

 その衝撃でフードさんもちくわちゃんも倒れこんじゃいました。 


 安心して……安心して…… 見ていられ……


 こんなの、安心して見ていられるわけがないじゃありませんかー!!

 

怪我を治す葉っぱは用意してありますけど、怪我をして良いわけはありません! 何か重要な意味のある決闘だったとしても、平和的ににらめっことか、しりとりとかで決着をつければいいんです! 暴力反対ですよー!


 私は2人を止めるために土俵に入ろうとすると、何かにぶつかりました。 見えない壁があって中に入るのを邪魔しているようですが……

 むむ? ダメですよ!? 邪魔をしたら邪魔じゃないですか!? 今は少々急ぎです! ぶち破って中に入りますよ!!


 エクストリームお邪魔しまーす!!

 私はバリア的なものを全力で蹴り破って中に入り、2人の間に立ちはだかって、ケンカの仲裁を…… おおぅ!? 左右から魔法が飛んできましたー!?


 な、なんのこれしき! 私は両手を広げてクルクル回ってダブルラリアットを繰り出します。 魔法は振り回した手に当たって消えましたが、当然ですけど手が痛いです。


 うぐぐ…… おかしいですね? 私の知っているゲームでは、これで飛び道具をすり抜けられたんですけど、不思議な事に普通に手に当たりましたね?

 知らないうちにアップデートが入って技の性能が変わったんでしょうか?


 まあいいです、そんな事より今はケンカを止めるのが優先です。 私は手をパーに広げて、2人ともにタンマ! タンマ! って感じのジェスチャーをします。


 終了! ケンカはそこまでです! これ以上やるようなら、特製フルーツを口に押し込みますよ!? 匂い成分10倍のドリアンと酸味10倍のレモンのどっちか選ばせてあげます!! 今ならお得なキャンペーン中で、選ばなかった方もお付けしますよ!!


 そんな私の本気の脅しが伝わったのか、2人とも戦いを止めてくれたようです。

 なので、怪我の治療を始めましょう。 まず私はフードさんの所に行きます。

 ……ちくわちゃんを最優先したい気持ちもありますが、見た感じではフードさんの方が怪我が重いようなので、まずはそちらが先です。

 私は普段は身内重視ではありますが、怪我を治療する現場で順番を間違えない程度には公平なつもりですよ?


 私はフードさんを支えながら、髪の毛の薬草を揉んで、フードさんの傷に塗ります。

 顔も怪我しているようなので、失礼してフードをずらして、顔の怪我も治療して行きます。 ……んー、初めて顔をハッキリ見ましたけど、ちくわちゃんほどではありませんけど、この人も耳が少し尖っていますね。 エルフなんでしょうかね? 普通に美形ですし。


 ……さて、治療終了…… おっと、そういえば、さっきこの人は血を吐いてましたから、口の中か内臓に怪我をしているかも知れませんね。 はい、あーんしてくださいね?

 私は、頭から葉っぱを1枚むしってフードさんの口に放り込みました。

 そして、服の汚れをポンポンと払ってあげてから、今度はちくわちゃんの治療を開始しました。


 ちくわちゃんも細かい傷がたくさんです。 ……もう、あんまり危ないことをしちゃあダメですよー?

 

 葉っぱを揉んで傷に塗ってあげます。 ……んー、うん。 大体は治療できましたね、はい、おしまいですよー。

 終了の合図……というわけではありませんが、私は最後にちくわちゃんの頭をポンポンっとしました。


 そして、ちくわちゃんが、ニコッと微笑んだ、その時。


 「cW1lx#^2!! ろqOpkS9Ac!?」


 突然フードさんが怒鳴り出しました!?

 ……えっと、なにか怒らせるようなことをしちゃいましたか!?


 私が何かしてしまったんでしょうか? 謝るべきでしょうか? とか考えている間に、フラスケちゃんとジャッド君がフードさんの所に集まりました。


 「おかあさん、私、行かなきゃ。 バイバイ、また会おうね?」

 

 フラスケちゃんの声が聞こえました。 えっ? ええっ!? もうお別れですか?

 急展開に動揺していると、更にそこにピカッと光るものが……


 「リン、ただいま。 あれ!? これはどういう状況!?」


 ぺルルちゃんが帰ってきました。 ……あっ! ぺルルちゃん! ジャッド君がいましたよー!


 ぺルル・ウシロ・ウシロ・ジャッド・イル・ジャッド・イル。


 「えっ? ジャッド? どこっ!? 居たっ……あっ!?」

 

 キョロキョロしたぺルルちゃんが、ジャッド君を見つけた直後、ピカッと光って、フラスケちゃんとジャッド君とフードさんの3人が消えちゃいました。

 あれ? これって転移魔法ですよね? 3人まとめてワープできちゃうんですか?


 私の疑問が伝わったんでしょう。 ぺルルちゃんが答えてくれました。


 「できるけど、魔力の波長をしっかり合わせないと失敗する事があるからおすすめしないわ。 個人の素質によって跳べる距離も変わるから、それを考えないで素質の無い人を無理に長距離転移させたりしたら…… リンは経験済みでしょ?」


 経験済み? ふむ……? …… …… …… …… …… ……

 ……あっ、忘れてました。 そういえば前世の私は、妖精さんの転移魔法で死んだんでしたね。


 「……なんか普通に忘れてたっぽい雰囲気ね…… まあいいわ。 とにかく、複数人の転移は危険だから、長距離転移はしないと思うわ。 だからジャッド達も1キロは跳んでないと思う。 リン、魔力感知で探せない?」

 

 魔力感知? というと、多分F P S(不思議パワーサーチ)の事ですよね? んー、1キロなら範囲的には可能ですけど、私は反応を見分けるのが苦手なので、最初から村に居たメンバーとそれ以外を見分けるくらいしかできません。 ジャッド君を探すのは難しいと思います。

 

 ……うん、一応やってはみましたが、ダメでした。 3人組の反応というだけでもたくさんありますから、どれがあの3人の反応かわかりません。

 ……んー、フラスケちゃんの反応だけでもしっかりと覚えておくべきでしたね。


 「……ダメみたいね。 こうなると、自力で探すのは難しいわね…… あとは、あの悪い魔力が使われた時にこの腕輪が反応するはずだから、それで探すしか……って……えっ!?」


 あれれ? 言ってるそばから反応してませんか? なんか、ぺルルちゃんの腕輪が赤くチカチカしてるんですけど。 ……爆発しませんよね?


 ぺルルちゃんが緊張した顔で腕輪をかざして、何かむにゃむにゃ呪文を唱えると…… おお、なんか腕輪の10センチくらい上の空中に矢印が浮かびあがりました。

 これが場所を示してくれるという事でしょうか?


 ぺルルちゃんは、私の顔をしっかりと見て、神妙な表情で私に言いました。


 「リン、私はこれからジャッドを追うわ。 ……手伝ってくれるかな?」


 いいともー!

 私はグッと親指を立てて、サムズアップをした……つもりだったんですが、なんか無意識に人差し指も伸びてました。 ……これではゲッツですね。

 まあ、コレはコレでありですか。 ゲッツ! ゲッツ!


 ぺルルちゃんの力になれると思い、張り切ってゲッツしている私を見て、なぜかぺルルちゃんはビミョーな顔をしていました。


 ……おや? お腹でも痛いのですか? ……薬草いります?


 

次の投稿も2日後の予定です。

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