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ウッディライフ! ~ この木なんの木? 私です ~  作者: 鷹山 涼
5章ですよ わ……私がお母さんですか!? お姉ちゃんではダメですか?
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55話 フードさん登場からの被害額100円

どうもこんにちは、モーリンです。


 あれから村の人が何人か通ったりもしたのですが、誰もフラスケちゃんを見えてる感じではありませんでした。

 これはぺルルちゃんにも当てはまる事なんですけど、フラスケちゃんはとても良い子ですし、可愛いので、姿さえ見えれば人気者になれると思うんですけどね。


 ぺルルちゃんは理由があって姿を隠していますが、フラスケちゃんは見るからに透けているので、多分、姿を隠しているのではなくて、見えないのがデフォルトっぽい気がします。

 だとするとほとんどの人に見えないでしょうから、今まで寂しい思いをしてたと思うんですよね。


 うーん、フラスケちゃんに友達を増やしてあげたいんですけど、姿が見えないフラスケちゃんを会話ができない私が仲介して友達を作るというのは、かなりの高難易ミッションですよね。


 というかよく考えると、私はお母さんポジションなんですよね?

 お母さんが子供の交遊関係に深入りしすぎるのも不自然ですから、無理に友達を作ってあげるというのは、やっぱりやめておくことにしましょうか。

 そんな事をしなくてもちくわちゃんと友達になったようですから、ここにいる間は寂しい思いはしないですよね。 きっと。


 そんな事を考えながらフラスケちゃんの顔を見ると、彼女は、何かに気付いたような表情をしていました。 おや? なにか変わったものでもありましたか?


 そう思って彼女の視線をたどると、その先にはすっぽりとフードを被った謎の人物と、その頭上にパタパタ飛んでいる妖精さんがいました。

 ……あれれ? この妖精さんって、前にちらっとだけ見かけた妖精さんですよね? という事は、家出少年のジャッド君ですか!?


 ぺルルちゃん! ぺルルちゃん! ジャッド君がいましたよー…… って、今はぺルルちゃんがいないんでした! えっと…… ジャッド君って日本語で念話して通じますかね?

 とりあえず試してみましょうか。 んー……。


 ジャッド・ニホンゴ・ペラペラ?・ノット ・ペラペラ?・ドッチヤネン?


 ジャッド君は、ハッと私を見てから困ったように首をかしげながら、

 「d3RぶaAq1……」という念話を飛ばしてきました。 うん、ノット ・ペラペラのようです。


 ……困りましたね、コミュニケーションが取れません。

 いえ、まあ、この世界に来てから、コミュニケーションの成立した回数のほうが少ないので、いつも通りと言えばいつも通りなんですけどね?


 「ろd3dNg1s#sP! c2wQaii8!!」


 おっと、フードさんも話しかけてきましたが、こちらも当然理解不能です。

 ……ただ、ちくわちゃんとセレブお嬢さんが、『はっ? ふざけてるの?』とでも言いそうな、凶悪な表情をしましたから、あまり友好的な言葉では無かったんだと思います。


 あの、ちくわちゃん? セレブお嬢さん? 2人とも笑顔のほうが可愛いですよ?

 ほら、般若(はんにゃ)の顔真似はもう充分なので、笑ってください。


 私は、美少女がやってはいけない表情をした2人を、まあまあ、っと感じでなだめます。

 フードさんがどんなセリフを言ったかはわかりませんけど、いきなり喧嘩腰の対応は良くないですよ、まずは笑顔で接しましょう! ……まあ、私は無表情ですが。


 「jU6xx@よdEw!」


 フードさんは、更になにかを言いながら、急に私の手を握りました。

 おや? 握手ですか? OKですよー、はい、シェイクハ~ンド♪


 私はフードさんが、初めましての挨拶として握手を求めてきたと思って、あっ、礼儀正しい人じゃないですかー、と応じました。 すると……


 ほわぁ!? そっ……そうきましたか!?

 フードさんは、私の手の甲にキスをしちゃいました。 う……ううむ? これは怒るべきかどうか悩みます……、普通に考えるとアウトですが、欧米系なら手の甲にキスくらいはセーフかも知れません。


 はっ!? ここは、『欧米かっ!』ってつっこむ所でしょうか?

 フードさんがつっこみ待ちをしていたら、放置は失礼ですよね? で……では、適度に加減してつっこむとしましょうか、せ~の……


            ドグワシャアアァン!!!


 ちくわちゃんがつっこみましたー!? それにしても、ちょっと激しすぎませんか!? 今のは、人を殴った音ではありません! 新喜劇でもこれほど豪快なつっこみはしませんよ!?


 ……おや? フードさんはすぐに立ち上がりましたね? 正直、死んじゃった!? って思うほどの音だったんですが、あれはハリセンのように、音が派手なだけでそれほど痛くない技だったんでしょうかね?

 メッチャ拳を振り抜いてたように見えましたけど。


 「……$dxWりru42lK? ryAq1p?」


 「s2z8hGt@れs¥sWeる>d5Ts?」


 ああ…… ちくわちゃんとフードさんが険悪なムードになってます……!


 うむむ……おそらくコレは、フードさんが、

 『アホか! いくらなんでも本気でシバキすぎや! ちっとは加減しいや!』

 とか言って、それに対してちくわちゃんが、

 『アホはお前や! 本気でシバかなオモロないやろ!?』

 ……みたい感じになってるんだと予想します。 やはり初対面の相手へのつっこみは加減が難しいですねー。



 「s5yDw*2s!」


 そこに、突然割って入る声が聞こえました。 おお、マッスルさんです。

 その後ろにはデリバリー爺さんと係長さんもいますね。

 

 さっきの言葉の内容はわかりませんけど、状況から考えると喧嘩を止めようとしてる感じでしょうか?

 そして、皆さんとフードさんの間でそのまま話し合いが始まりました。 ……話し合い……ですよね? なんか険悪なムードなのが気になるんですけど。


 フラスケちゃんも心配そうに見ていますね、って、あれ? 今、フラスケちゃんとフードさんが2~3言、お話をしましたね? あっ、ジャッド君もです、知り合いですか?

 あっ! もしかして、このフードさんとジャッド君がフラスケ・フレンズの人たちですか?


 じゃあ、さっきの手の甲へのキスは、迷子のフラスケちゃんを保護してくれてありがとう! 的な意味もあったのでしょうかね? 

 お礼の気持ちは受け取っておきますが、挨拶としてキスは、やはり日本人感覚では少しハードルが高いです。 んー、やはり文化の違いに困惑する事ってありますよねー。


 こういうのって確か英語で、ヤック・デカルチャーって言うんでしたっけ?

 ……あれれ? なんか微妙に違うような気もしますね? まあいいですか。


 「ケdEd5れ¥hhYsよ」


 ん? フードさんが、私に何かを言ってますか? あー、ごめんなさい、ヤック・デカルチャーについて考えていたので、聞いていませんでした。

 いえ、聞いていても言葉はわからなかったとは思いますけど、それでも話は聞くのが礼儀でしたよね、失礼しました。 で、なんの話でしょう?


 私はフードさんの表情を見て、何を言いたいのかを判断をしようとしました。

 ……でも、フードが邪魔で顔があまり見えません。

 あの、お話しする時は、フードくらい取ったらどうでしょうか?

 あっ、ですがフードさんからフードを取ったら、ただの『さん』になってしまいますよね? では取らないのも仕方ないですか…… 納得です。


 フードさんの表情がわからないので、他の皆さんの様子を見てみます。 ……皆さん、がっつり私に注目しています。

 ……私は今、そんなに注目するほど重大な決断を迫られているんですか? もしや、私の決断で晩御飯のおかずが決まるとかそう言う話でしょうか? そ……それは責任重大ですねー……。


 ん?……ちくわちゃんが、やけに心配そうな顔をしていますね…… 

 ちくわちゃんのその顔を見たとたん、私はもう条件反射的に彼女に近づいて、左手で手を握り、右手で頭をなでなでしました。

 ……半分、無意識でやってしまいました。 もう私はちくわちゃんをなでなでするのが習慣になっているみたいですね。


 視線を感じてふと我に返りました。 ……あっ、皆さんの注目が集まっている中なのに、ついちくわちゃんをなでなでしてましたね……

 人目を気にせずイチャイチャするカップルみたいで少し恥ずかしいです。



 「d4Rv!? $>d2XzめkIus9sW!!」


 ほわぁ!? フードさんが突然怒りだしました!?

 ……はっ!? 私がちくわちゃんとイチャイチャしたとたんに怒ったということは、やきもちでしょうか? ということは…… 謎は全て解けました!!


 つまり、こういう経緯ですね?

 フードさんはちくわちゃんに一目惚れして、妹さんをください的なことを私に言っていた。

 で、皆さんが私に注目していたのは、ちくわちゃんをお嫁に出すかどうかの決断を私に(ゆだ)ねていたということでしょう。

 そして、ちくわちゃんが不安そうな顔をしていたのは、お嫁に行きたくなかったからですね?

 で、最後に私とちくわちゃんの仲の良さを見て腹を立てた……っと。


 どうですか? 私の名推理は。 IQ180の高校生探偵にも負けていませんよ!

 まあ、私のIQがどれだけかは知れませんけどね。

 ……IQテストの後から先生の視線がすごく優しいものに変わりましたが、結果は教えてくれなかったんですよねー。


 ですけど、ほら。 血糖値なら180どころか200に余裕で到達していましたから、まあIQ180といい勝負にはなっているはずですよね?


 まあとにかく、このフードさんは、私からちくわちゃんを盗もうとする悪逆非道のちくわ泥棒なのですね!?

 ……ちくわ泥棒というと、被害額が100円くらいに聞こえますが、このちくわちゃんはプライスレスです。 とてもとても大切な宝物です。 なので、ちくわちゃんは渡しませんよー!


 私は、ビシィ! っとフードさんを指差したのですが…… フードさんは、ちくわちゃんの方を見ていて、もう私を見ていませんでした。

 お……おや? これでは、私が1人でビシィ! っとポーズを決めているみたいになっちゃってるじゃないですか。


 ちくわちゃんが、ポーズを決める私をじっと見たあと、こくりと頷きました。

 えっ!? 1人寂しくポーズを決める私を見て、いったい何を納得したんですか!?


 周りの皆さんも、神妙な表情でこくりと頷くと、何かの準備を始めました。

 あの……何が始まるのでしょうか?

 

 なんかちくわちゃんとフードさんはピリピリしてますし、フラスケちゃんとジャッド君は心配そうな顔をしています。

 セレブお嬢さん、マッスルさん、係長さん、デリバリー爺さんの4人は冷静に見守るような目をしていますね。

 表情に違いはありますが、皆さん真剣そうな雰囲気は共通しています。


 ……おや? じゃあ一番緊張感が無いのは私ですか? んー、これでもそこそこ真面目にしてるつもりなんですけどねー?

次の投稿も二日後の予定です。

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