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ウッディライフ! ~ この木なんの木? 私です ~  作者: 鷹山 涼
4章ですよ モーリン神殿? いえ、建てなくてもいいですが。
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閑話 結成! モーリン四天王!

この閑話で4章は終わりです。


視点は何度か切り替わりますが、最初はトレニア視点です。

夜も深まっていき、今日も私はフリージアさんの家の藁のベッドに横になります。


 宿屋もいくつか完成しましたし、作業員向けの寮もありますから、私もそこで寝泊まりしてもいいのですが、この家での生活が気に入ったので、フリージアさんが迷惑でないなら、このままここにお世話になりたいと思っていますわ。


 やはり、そばにいつもお姉様がいるという環境は素晴らしいですわね。

 どうやら、外にある切り株の上がお姉様の定位置らしく、この小屋は窓を開ければ切り株に腰かけるお姉様の姿がよく見えます。


 窓のフレームに越しに見るお姉様の姿は、まるで一枚の絵画の様に見えて、実に素敵ですわ。


 いつもは、そのお姉様の素晴らしさについて、フリージアさんと語り合いながら眠りにつくのですが、今夜は少しだけ特別な夜になりそうです。

 なぜなら、同じベッドの中、私のすぐ隣でお姉様が一緒に寝ているのですから。



 フリージアさんに訊いてみると、お姉様は普段は横になって寝ることは少ないそうですが、たまに一緒に寝てくれる日があるそうです。

 今日はたまたまその日だったようで、外が暗くなる頃にドアをノックする音が聞こえたので確認すると、そこにはお姉様がいらっしゃいました。


 もし、私がお邪魔だと言うのなら涙を飲んで立ち去ろうと、そう思っておりましたが、お姉様はベッドの自分の寝ている隣のスペースを、ポンポンと叩きながら首を傾げました。


 ここに寝ないの? っと尋ねるようなその仕草は、つまり、私が隣に寝ることを当たり前の事として考えていて下さっているという事でしょう。


 お姉様の隣に、私の居場所があるというのなら、躊躇(ためら)う必要があるでしょうか?

 いえ、ありません。 むしろあり得ません。


 私は、まるで吸い込まれるように、お姉様の隣に潜り込みました。



 ああ、なんという幸福感なのでしょう。 お姉様の体温は人間より低いので、こうして密着すれば冷たく感じるはずなのですが、不思議と暖かい温もりを感じます。


 そして、普段は見ること事がない、この超・至近距離から見るお姉様の、素敵な無表情! そして、何よりも、髪から漂うこの香り! ああ、どうしましょう?


 普段は淑女であれと己に言い聞かせ、冷静な態度に努めている私ですが、今この時だけは、冷静な淑女でいられる自信はありません。

 眠るつもりで横になったというのに、ドキドキして眠れないかもしれませんわ!



 乙女心の高鳴りを抑えきれない私でしたが、そのとき、突然感じた強い視線に、冷や水を浴びせられたかのような気分になりました。


 「フリージアさん? あの……なにか?」


 その強い視線は、フリージアさんのものでした。

 彼女は私から見て、お姉様を挟んで反対側の位置に寝ています。

 私がお姉様を独り占めしているというのなら、強く睨まれても当然ですが、彼女は私以上に強く、ぎゅっとお姉様に抱きついています。


 一方的に嫉妬される状況では無いはずなのですが…… 何故そんなに強い視線を私に向けるのです?



 「トレニアはモーリンの事、好きだよね? ……本当に、心の底から大切に思ってる?」


 「まあ!? フリージアさんは、私のお姉様への想いを疑っているのですか!?

 失礼ですわよ!? 私が本気でお慕いしていない相手を『魂のお姉様』に選ぶような軽い女に見えるのですか!? 私のお姉様への想いは本物です!」


 私はそう言って、お姉様の体を強く抱きしめました。

 ……今の言葉は、フリージアさんに向けた言葉であると同時に、お姉様に、私の想いをストレートに伝えるための言葉でもあります。

 お姉様の反応は…… あ、あら? 相変わらずの無表情ですわね?


 もう…… 私が、こんな間近で気持ちを伝えても、顔色1つ変えないなんて、お姉様は本当にクールですわね。 そ……そういう所も素敵ですが。


 私の言葉を聞いたフリージアさんはコクリと頷きました。


 「疑ってはいないけど、少し確かめた。 ……うん、合格。

 明日の朝、少しつき合って。 大切な話があるの」


 「えっ? あ、はい。 構いませんわよ」



 どうやらフリージアさんは、明日、なにか大事な話があるようですわね。

 そうと決まれば早めに休みましょうか。

 大切な話の途中でアクビでもしてしまえば、大変なマナー違反ですからね。

 ですが、お姉様と密着した状態では、ドキドキしてしまって、あまりちゃんと眠れはしない……ような……気が……。





 ……次の朝が来ました。

 胸のドキドキ以上に、幸福感と心地よさが強くて、天に昇る気分でぐっすりと寝てしまいましたわ。

 ……心地よく眠れたのは良いのですが、お姉様とベッドで寄り添っている時間を、もう少し楽しみたかったという気持ちもありますわね。


 まあ良いですわ、フリージアさんの話では、お姉様は時々一緒に寝てくださるとの事ですから、私がこの家にお邪魔している以上、また機会は訪れるでしょう。 

 今はまず、フリージアさんの要件を聞きましょう。 彼女が改まった会話をしたがるのは珍しいですが…… さて、どんな要件でしょうね?



 着替えを済ませるとすぐ、フリージアさんに連れられて外出しました。

 工事中の建物が並ぶ通りを抜けると、お姉様の神殿が見えてきます。

 外見はまだ未完成ですが、部屋の一部は完成していて、許可があれば中に入る事もできます。 私が初めて入った時は、室内に並ぶお姉様の像を見て、その芸術性に感動したものです。


 真っ直ぐそちらの方に向かっているようですが、目的地はこの神殿なのでしょうか?


 フリージアさんはスタスタと、慣れた足取りで神殿の中へと入って行き、奥にあるお姉様の像が並ぶ部屋まで進みました。 ああ、相変わらず素敵な部屋ですね。

 フリージアさんは、キョロキョロと周り見回して人がいない事を確認すると、中央にある、お姉様が両手を左右に伸ばしている像の前に行きます。

 何をするのかと思うと、なんと、フリージアさんは、そのお姉様の像の両手を下に引っ張りました。


 「お止めなさい! そんな事をして、もし壊れてしまったら…… って…… あら? 初めから動く様に作られていたのですか?」


 どうやらその像は、肩の部分に関節となるパーツが入っているらしく、腕が上下に動かせるように作られているようです。 フリージアさんは、その像の両手を、数回続けて上下に動かしました。


 あら、それはお姉様がたまにやる動きですわね? あの羽ばたく動作ですわ。

 そのまましばらくワサワサ動かすと、地鳴りのような音が響き、振動と共に像が台座ごと後ろに下がって行きます。

 そして、像のあった場所には下へと続くハシゴが! ……こ、こんな場所に隠し通路が?


 フリージアさんは、躊躇(ちゅうちょ)なくスイスイとハシゴを下りて行ってしまったので、私もついて行きます。 ど……どこへ繋がっているのでしょうか?



 ハシゴを下り、恐る恐るついていった先には会議室のような部屋があり、そこには2人の男性がいました。 あ……貴方たちは!?


 「ん? ああ、トレニア嬢か。 ……悪くない選択だな」


 「うーむ、ワシはムスカリかヒース辺りを選ぶかと思っていたんだが」


 アウグスト様と…… ええと、そっちの方は確か、お姉様の像を作った親方さんですわよね?


 「むぅ…… 兄さんとヒースさんは、モーリン個人より村全体を大事にしてるから、少し条件と合わない。 トレニアなら私たちの同志になるのに相応しいと思う」



 何やら私抜きで会話が始まっています。 あの、何の話なのですか?


 困惑する私に対し、フリージアさんがクルリと振り向いて言いました。


 「トレニア。 私たちは、トレニアを『モーリン四天王』の最後の1人として迎え入れたいの。

 ……この話、受けてくれるかな?」


 いきなりそんな、訳の分からない事を言われても困りますわ!


 私は、理性ではそう答えていました。 ですが……


 「……ええ。 そのお話、喜んで受けさせて頂きますわ」


 私の体は…… いいえ、私の魂は、迷わずその話を受け入れました。

 そう、『モーリン四天王』なんて名前の組織に、この私が入らないなんて、許されません。 ええ、他ならぬ私自身の魂が許しません。


 私の答えを聞いた3人は、微笑みながら私を見つめ、声を揃えて言いました。


 「「「ようこそ、歓迎する」」」



 目の前に、楽園への扉が開かれたのが見えました。

 この先に進めばきっと、今までよりも一歩、お姉様の近くへ行くことが出来る。

 そう感じた私は、迷う事もなく、その先へと進みます。


 「ええ、これからよろしくお願いしますわ」


 その瞬間から、私は『モーリン四天王』の1人となりました。





 ーーーーー ティート視点



 今、オレと姉さんは、モーリン村って所にいる。

 王都からここへ移住するの一家から依頼を受けて、村まで護衛してきたところだ。

 最初は、王都からわざわざこんな村に移住するなんて、変わった家族だって思ったんだけど、村まで来てみて、少しだけ理由がわかった気がした。


 この村は今、凄いスピードで発展しているんだ。

 立派ではあるけど、もう完成しきっている王都よりも、未完成だけど、エネルギーに溢れていてワクワクする何かを感じるぜ。

 いろんな可能性が転がっていそうで、オレみたいな若手冒険者の拠点にはいい場所かも知れないな。


 「なあ、姉さん。 このまましばらく、この村で活動してみるのもいいんじゃねえか?」


 オレがそう言うと、姉さんは困った顔で返した。


 「う~ん…… それがね? この村は、冒険者ギルドが無いのよ。 今後ギルドの支部が建つ予定も無いみたい。

 ……考えたら当然よね。 この村は、精霊であるモーリンちゃんを中心にしてできた村なんだから、冒険者ギルドが精霊を魔物扱いする限りは、相容れないわよね」


 あっ、そうか! その問題を忘れてたなぁ。 確かにこの村にギルドは来れないよな。 あ~、じゃあここを拠点にして冒険者活動をするのは不便だよな。


 「仕方ねぇ。 2~3日観光してから王都に戻るか。 とりあえず、村を一周してみようぜ」



 それからオレたちは村を見て歩いた。

 まだ作りかけの物も多かったけど、いろんな物があって楽しかった。 でも、所々にモーリンの像や絵が飾ってあるのが可笑しくて、何度も笑っちまったぜ。

 で、今はモーリン神殿(笑)のそばにあった軽食の店で一休みしている所だ。


 「あー、笑った。 村中がモーリンだらけだもんな。 笑いすぎて腹が痛い」


 「でも、あれが気になったわね…… ほら、ティートがモーリンちゃんの像や絵を笑いながら突っついたりした時に、周りの人たちが言ってた事」


 「ああ、あれか? 『モーリン様を笑うとは恐ろしい! あの方々の怒りを買うぞ!』とか、『悪い事は言わない、あの方々に知られる前に立ち去れ!』とか言ってたヤツか? 確かに気になったけどな。 でも仕方ないだろ? だって大の大人がみんな、あのちんちくりんを(まつ)ってるんだぞ? 面白すぎるじゃねぇか。 あれ、絶対になんのご利益も無いぜ?」


 オレが思い出し笑いしていると、店員が茶を持ってきた。 あれ? 頼んでないぞ?


 「……こちらのお茶は、特別なお客様だけにサービスでお出ししている特別な1杯で、『ツギハオマエダッ!』という銘柄となっております。 どうぞ、お召し上がりください」


 「へへっ! そうか、オレが特別なお客様だって事か? 嬉しい事言ってくれるなぁ。 じゃあ遠慮なくいただくよ!」


 丁度喉が渇いてたオレは、ガブリと一息で飲み干した。

 おお、爽やかな香りで、なかなかウマいなぁ!


 「ええっ! それ、飲んじゃうの!? ちゃんと銘柄を聞いてた? それに、今のウェイトレスさん、仮面を着けてたし、エプロンに『悪・即・斬』って書いてあったけど、怪しいと感じなかったの!?」


 あ? そうだっけ? 喉が乾いてたから、お茶しか見てなかったな。

 でも、別に何とも…… なん……とも……無、い?


 なんだ? 急に眠く……




ーーーーーー



 ……? あ~……なんか頭がボーッとするな。 オレは、なにをしてたんだっけ?


 気がつくとオレは薄暗い部屋の中で、椅子に座っていた。

 ……!? ち、違う! 座っているんじゃない? これはっ……縛り付けられている!?



 「目が覚めた? じゃあ、これから再教育するね?」


 突然聞こえてきた声に、顔を上げると、そこには4人の人影が立っていた。


 1人は、身長はさほど高くないけど、ガッシリとした体格のひげ面の爺さん。 無表情な仮面を着けていて、顔は見えない。


 次の人影は、身長も体格もゴツい、威圧感のあるオッサンで、仮面で顔は分からないけど…… 胸に、商人ギルドの役員の身分を証明するバッジが付いている。


 次の人影は、スタイルのいい女の人で、仮面で顔を隠している。 でも、その背負ってる弓矢、見たことあるんだけど。


 あと、最後のチビ。 仮面で顔を隠してはいるけど、その杖もめっちゃ見たことあるんだけど。


 「なあ、そこのひげ面の爺さんは知らねえけど、後の3人って、アウグストさんとトレニアとフリージアだよな? これは何の真似なんだ?」


 「アウグスト? 知らねえな。 俺は、モーリン四天王の1人『鉄腕商人』だ」

 「ワシも、同じくモーリン四天王の1人『造形美の求道者』だ」

 「私は『お姉様の妹』、同じくモーリン四天王ですわ」

 「そして私はモーリン四天王のリーダー。名前は『モーリンの友達』」


 「おい! 女2人! それ二つ名としておかしくねえか!?」


 「ティートは、この村に来てからモーリンの事を何度も笑った。

 モーリンを知らない人ならまだしも、ティートは一緒に散歩した仲なのにモーリンの素晴らしさが分からないなんておかしい! もう重大な病気を疑うレベル!」


 オレのツッコミを無視して喋り続けるフリージアらしきチビ。

 どう考えても、フリージアのほうが重大な病気っぽい気がするよな?


 「だからこれからモーリンの魅力をたっぷり教え込む! 大丈夫、ジーナは、晩御飯までに宿に戻って来てね、って言ってたから、それまでは時間がある。

 まず、私たち4人が、1人1時間を使ってモーリンの魅力を語るから、よく聞いていてね?」


 晩メシまでに戻って来て、って…… 姉さん、完全に遊びだと思ってるよな!?

 違うんだよ、姉さん。 これは遊びじゃねぇんだよ、コイツらマジだよ。


 「じゃあ私から話すよ? モーリンの素敵は所はたくさんあるけど、私が最初に好きになったのは…………」




 ーーーーーージーナ視点



 少し暗くなって来たわね。 ティートはそろそろ戻って来るかしら?

 せっかくフリージアちゃんやトレニアさんと再会したんだから、私も一緒に行きたかったけど、ティートに用事があったみたいだから遠慮したわ。


 それにしても、ウェイトレスさんを巻き込んでまで、お茶に薬を入れるなんて、フリージアちゃんかトレニアさんか知らないけど、意外とイタズラが好きなのね。


 だけど、ちょっと楽しそうだったかな? 明日は私もみんなと話したいわね。



 そんな事を考えていると、部屋のドアが開く音が聞こえた。 ティートが戻ってきたみたい。



 「ただいま、姉さん! それにしても、モーリンは素晴らしいぜ!」


 「お帰りなさい。 でも、何で急にモーリンちゃんの話を? あっ、もしかしてモーリンちゃんと会ったの?」


 「ん? モーリン? いや、モーリンとは会ってないぞ? それにしても、モーリンは素晴らしいぜ!」


 「あ……そ、そう? ……所で、何の用事だったの?」


 「あー…… 何かボーッとしててあんまり覚えてないんだよなぁ? それにしても、モーリンは素晴らしいぜ!」


 「えっと…… それは罰ゲームかなにか……かな?」


 「罰ゲーム? なんの事を言ってるんだ? それにしても、モーリンは素晴らしいぜ! じゃあ、メシの前にちょっと水浴びしてくるよ。 それにしても、モーリンは素晴らしいぜ!」



 そう言って部屋を出ていくティート。 ……ティートがおかしい……。

 これ、フリージアちゃんやトレニアさんの仕業よね? いったい何をしたの?



 次の朝にはいつものティートに戻っていたけど、最終的に3泊4日の滞在の中で、もう一度再発した。


 ティート自身は自分が変な事を自覚してないみたいだし、フリージアちゃんとトレニアさんもニヤリと笑うだけで何も教えてくれないし……

 後遺症も無さそうだし、見てて面白いからいいけど、いったいティートは何をされてるのかしら?


 モーリン村はいい所だったけど、1つ謎が残っちゃたわね。

これで4章は終わりです。 少し休んで、15日の木曜日から5章を開始する予定です。


それと、活動報告にも書きましたが、13日の火曜日の午前中に、短編を1つ投稿する予定です。

大瑠璃の恋歌と言う作品で2000文字ちょっとの短いものです。

詩と物語の中間みたいな作品で、ジャンルは自分でもはっきり分かりませんが、とりあえず

文学作品という扱いで投稿してみます。


興味の無い人は本当に興味の無いタイプの作品かと思いますが、短い作品なので、お試し気分ででも読んでもらえると嬉しいです。

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