表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウッディライフ! ~ この木なんの木? 私です ~  作者: 鷹山 涼
4章ですよ モーリン神殿? いえ、建てなくてもいいですが。
77/151

閑話 ちくわクエスト・後編

閑話なのに、長いです。

「ぎゃぎゃっ!?」


 「これで5匹めです。 どうやら、弓で倒せる相手であれば、私も戦力になれそうですわね」



 トレニアが、木の上にいたゴブリンを弓で射落とした。 実戦は初めてだって言ってたわりに、堂々としているね。 前に魔導甲冑に襲われた時は怯えてたのに。

 あっ、もしかして、そのお陰でゴブリン程度じゃ怖く感じなくなったのかな?


 「オラッ! こっちだぜ!? 来いよ!」


 ティートも思った以上に役に立っている。

 トレニアに襲いかかるゴブリンを切りつけて追っ払うだけで、無理に止めを狙わないし、ゴブリンが自分に集まり始めたら、ひたすら守って、素直に攻撃は仲間に任せてる。


 自分に出来る仕事をして、危険な事はしないっていうスタイルが徹底されてるね。 血の気の多そうな印象だったけど、戦い方は堅実だ。 ジーナの教育かな?


 「ふっ! やぁっ!!」


 そのジーナは、戦い方が巧いなぁ。 槍の長さを活かして、敵は攻撃できなくて自分は攻撃できる距離をずっとキープしているし、2匹以上同時に相手する時も、距離や立ち位置を考えて、一斉に攻撃されないようにしてる。 見てて勉強になるね。


 私は、自分に向かって来た相手だけを倒して、私からはあまり攻撃しないようにしてる。


 なんでこんな戦い方をしているかというと、私が力任せで戦いを終わらせてばかりだと、いつまでもお互いの強さの把握も、連係の確認もできないからだ。

 それで、強くない相手が出たら、一度、私が参加しないで戦ってみようって話になったんだけど、そこで丁度良くゴブリンの集団を見つけたから、早速やってみたんだ。


 今まであんまり他人の戦いを冷静に見たことなかったから、新鮮な感じだ。

 こう言うのも強くなるのに必要なのかもね。 今度、兄さんの戦いとかも、改めて見てみようかな? 分析するような目で見たことなかったし。



 私があまり攻撃しなくても、ゴブリンの20匹くらいは楽勝だね。

 結局、無傷のままで終わった。 でも、ジーナは喜ぶわけでもなく、難しい顔をして、何かを考えているみたいだ。 どうかしたのかな?


 「ジーナ、なんか考え事してるの?」


 「うん…… すぐ近くに洞窟があるのに、ゴブリンが洞窟の外にいるのが気になったのよ。 コイツらは、自分たちが危なくなっても洞窟の中に逃げ込もうとする様子もなかったし、もしかすると洞窟に、ゴブリンが恐れる何かが住んでいるのかもしれないね」


 「あん? じゃあ、もしかして例のアラクネがいるって事か?」


 「別にアラクネとは限りませんわ。 ですが、危険な何かがいる事を想定して、警戒はしておくべきでしょうね」



 そのトレニアの言葉に、ジーナはコクリと頷いてから言った。


 「洞窟に入る前に一度小休止よ。 食事と、武器の整備をしっかりと終わらせてから進みましょう」



 うん、じゃあ武器の整備をしておこうか。

 私は杖を地面に突き刺して、上から水をかけた。 これでいいね。

 私が武器の整備を終わらせて、ご飯を食べようとしていたら、ティートが何か言ってきた。


 「おいおい。 そりゃ何のまじないだ? そんなんじゃなくて武器の整備はしっかりやっとかないと、戦闘中に折れたりしたらヤバいぜ?」


 「むぅ…… この杖は、こうしておけば、勝手に傷が直るから大丈夫だよ?」


 「はあっ!? なんだよその特殊能力!? そういえば、その杖ってやたらと頑丈だし、なんか名前がある特別な武器とか、そういうのなのか?」


 「名前? 名前は『モーリンの取れた左腕』」


 「怖っ!! なんだその恐ろしい名前!? なんでそんな呪いの道具みたいな名前に!?」


 「むぅ……! 呪いの道具とは失礼な! これはモーリンが私のために、自分の腕を材料にして作ってくれた神聖な物だよ? 抱いて眠ると、心が暖かくなるんだよ?」


 「え…… えっ!? 何!? その杖ってマジでモーリンの腕で出来てるのか!? あれ? でもモーリンってちゃんと両腕あったよな? あれ?」


 「……フリージアさん。 まずはお姉様が何者かを説明するべきでは?」


 あれ? この2人にモーリンが精霊だって言った事無かったっけ?

 モーリンがいる時に一緒に街を散歩したりもしてたから、もう全部教えてたような気になってた。

 失敗失敗。 ちゃんと説明しなくちゃね。




 私とトレニアがモーリンの事を説明すると、2人は凄く驚いていた。

 ティートは普通に驚いてたけど、ジーナは驚きながらも納得しているみたいだ。


 「私は、モーリンちゃんの髪の毛が葉っぱに変わるのを見たし、実際にそれを使って怪我を治してもらったから、普通の人間じゃないのは予想してたわ。 ……まさか精霊だったとは思わなかったけどね。

 そっか、あなた達2人が精霊と魔物を一緒にする事を、やけに強く否定してたのは、モーリンちゃんが精霊だからだったんだね」


 「オレとしては、街で噂になっていた、空を飛んで花を咲かせたってやつが、実はモーリンだってのが驚いたぜ。 噂では、可憐な天使とか神々しい女神とか言われてたのに、まさかその正体が……なあ?」


 「むぅ……! モーリンが可憐な天使で神々しい女神なのは、紛れもない事実だよ? まさか、何か文句があるの?」


 「ちょっ! お前、目が怖いって!! も……文句なんかねぇよ! だからその、沼の底のヘドロみたいな目をやめろって!!」



 ティートもモーリンが天使で女神だって理解したみたいだから、睨むのはやめてあげた。

 ……ヘドロみたいな目をしたつもりは無いけど。



 「さて、休憩も食事も武器の整備も、もう充分でしょう。 日が落ちないうちに終わらせてしまいたいですし、そろそろ洞窟に入りましょうか」


 トレニアが矢筒を背負い直して立ち上がった。 うん、そうだね。 行こうか。




 当たり前だけど、洞窟の中は真っ暗だった。

 ジーナが魔法で槍の先を光らせて松明みたいにして、辺りを照らした。


 「私は他に大した魔法は使えないから、魔力を温存しても意味が無いわ。 だから明かりくらいは任せて」


 そう言ったジーナだけど、魔法が苦手な事を恥じている感じは無い。

 自分に出来る最善を、当たり前にやろうとする心構えみたいな物が伝わって来て、なんだか格好良く見えた。



 言われた通り、明かりはジーナに任せる。 魔力感知は、私より得意なトレニアに任せて、そのトレニアの守りはティートの仕事。 私は、戦いになった時に速攻で敵の数を減らすのが役目だ。

 パーティーでの役割分担っていうのが少しだけ分かって来たかも知れない。



 「この先に沢山の魔力の反応がありますね。 それがアラクネなのか他の魔物なのかまでは判断できませんが、少なくとも先程のゴブリンよりは大きな反応ですわ」


 トレニアが魔物らしき魔力を感知したみたいだね。 

 そのトレニアの言葉を聞いてジーナとティートは、顔を強張(こわば)らせて、足を止めた。


 「沢山の魔力か……。 アラクネが群れでいるなら危険ね。 フリージアちゃん抜きの私たちで、無傷で安全に勝てるのは、多分3匹くらいまでよ。

 洞窟の中だと強力な魔法は崩落の危険があるから、フリージアちゃんも全力は出せないだろうし」


 「じゃあ、何がいるのかだけ確認して、アラクネだったら逃げてギルドに報告だな」


 ジーナとティートが方針を決める。 むぅ…… アラクネの事はそれでいいけど……。


 「ねえ、目的のエンジェルなんとかはどこにあるの?」


 アラクネは諦めるにしても、本来の目的は果たさないと。

 だけど私の質問に、ジーナは渋い顔をした。


 「エンジェルティアというのは、この奥にある巨大な鍾乳石から落ちる雫の事よ。 多分、魔物の反応のある場所より奥だと思うわ」


 むぅ…… やっぱりそうなのか…… 何とか持って帰れないかな?

 でも、無理に奥に進んで、誰かが怪我をするのは嫌だなぁ。

 私だけで行く? でも、私はエンジェルなんとかがどれかよく分かんないし、そもそも1人で勝てるかどうかも分かんないよね。



 「フリージアさん。 何を悩んでいるか想像できますけど、危険は避けるべきですわよ? 今回の旅が無駄足になってしまうのは悔しいですが、アウグスト様の帰りを待てば、エンジェルティアはおろか、それで作る予定だった魔物除けも仕入れて下さる筈です。 ここはジーナやティートの案で行きましょう」


 うん……悔しいけど、そうしようか。 そう決断しかけた所で、トレニアが何かに気付いたみたいにピクリと動いた。 ……どうかしたの?


 「……少し面倒な事になるかも知れませんね。 魔物の群れの中に、人間らしき魔力を感じます。 ……かなり消耗しているようですわね。

 私たちが命懸けで助ける義理はありませんから、私としては見捨てる事も視野に入れるべきだと思いますが…… どうしますか?」


 

 「そりゃあ死にそうな人間がいるなら助けるべきだろう!? ほら! 早く行こうぜ!? 敵を倒しきれなくても、抱えて逃げるくらいはできるだろ!?」


 ティートは助けたいと迷わず言ったけど、ジーナは辛そうな顔で口を開く。


 「私も助けたいわ。 ……助けたい。 でも、リーダーとしてはメンバーの安全が第一よ。 辛いけど無理をして助けるのは……」


 むぅ…… そろそろ悩むのが面倒になって来た。

 だから私も意見を言ってみる事にした。


 「出来そうならやればいいし、ダメそうならやらなければ良いだけだよ? とりあえず行ってみようよ」


 私がそう言うと、ジーナはキョトンとした後、笑いながら言った。


 「あははっ! そっか。 うん、それくらいシンプルでいいのかもね。

 私は、リーダーの責任とかそういうのを考えすぎてたかもしれないね。

 じゃあ行ってから決めようか」


 そう言ってジーナは歩き出した。

 むぅ……? 私は別に変わった事を言ったつもりは無いんだけど……

 でも、ジーナの足取りが少し軽くなったみたいだから良かった。




 そろそろ、この洞窟の奥のほうに着いたと思う。

 エンジェルなんとかって素材を取りに来る人がいるからかな?

 足場は整備してあるみたいで、歩きやすいし、アラクネさえいなければ、そんなに危ない洞窟じゃあないんだろうね。

 あっ。 危なくないはずの場所に危ない魔物が出たから大騒ぎしてるのか。



 そのまま進むと、明らかに気持ち悪い気配がしてきた。 むう……魔力感知をしなくてもわかる、これはゾワゾワして不快だ。

 目の前には、人口的にくり貫いた穴が、建物の入り口みたいな形に空いている。 ううん、実際に次の部屋への入り口なんだと思う。 そして嫌な気配はその部屋からしている。


 私は戦いの準備を始める。 洞窟を崩落させちゃうのが怖いから、どうせ強い攻撃魔法は使えない。

 だから、その分の魔力を肉体の強化に回す事にした。 ……うん。 体が軽い。


 この前、ゴーレムを杖で叩き壊した時と同じくらいに肉体を強化してるから、余程の相手じゃなければ力負けはしないだろう。



 私は準備が出来た合図として、ジーナの方を見てコクンと頷いた。


 ジーナもコクンと頷き返してから、みんなに向けて話し始める。



 「じゃあ作戦を確認するよ。 トレニアさんの魔力感知によると、人間らしき反応は、向かって左側みたいだから、フリージアちゃんは右側で派手に暴れて。

 苦戦しそうなら私が援護するから、すぐに引き返して撤退よ。

 1人でしばらく戦えそうなら、私は左側に突入して人がいる場所まで道を開くから、ティートは隙を見て、その人を助けて逃げるのよ。

 トレニアさんは中には入らないで、部屋の入り口の外から弓で援護に徹して」


 「ああ、わかったぜ」

 「ええ。 援護は任せてくれて結構ですわ」


 みんなも準備が出来たみたいだ。 よし! それじゃあ……


 「行くよ!!」


 私は、杖を構えて、目の前の部屋へと飛び込んだ。


 飛び込んですぐ、目の前に()()は居た。

 人間くらいの大きさのクモで、胴体の上には人の上半身みたいなモノがある。


 アラクネだ! 私は、相手が反応する前に、先手必勝とばかりに杖を降り下ろして、人の上半身っぽい部分を叩き潰す。 むぅ…… 感触が気色悪い! でも、出来るだけその事は考えないようにして、残ったクモの体の部分を蹴り飛ばした。


 近くに居たもう1匹を、薙ぎ払うように杖を横に振って弾き飛ばして、その勢いでクルリと回転しながら周囲を確認。 むぅ……! 結構多い! 


 1匹が、振り上げた足を私に向けて降り下ろす。 私は杖で防ぎながら蹴りで反撃して、ぽーんと壁までふっ飛ばした。 ……うん、1人でも戦える相手だ。


 「大丈夫そうだよ! 作戦通りで行こう!!」


 私が入り口の方にそう声をかけると、ジーナも部屋に飛び込んできた。

 ジーナは槍で1匹を突くけど、一撃では倒せないみたい。 でも、始めからジーナの目的は道を開く事だから、追っ払えれば充分だ。


 ジーナを狙おうとするアラクネにトレニアの矢が刺さり、怯んだ所をジーナが攻撃して道をこじ開ける。 その隙を見て、ティートが奥へと走った。

 ティートを追おうとした1匹に、またトレニアの矢が刺さる。 トレニア、巧いね!



 部屋の奥の隅っこでは、魔法使いっぽいロープ姿のおじさんが、ガタガタと震えながら、必死に結界魔法を維持していた。

 そっか。 結界を張ったまではいいけど、囲まれてそこから出られなくなってたんだ。


 「オッサン! もう大丈夫だ! しっかり掴まってろよ!」


 そう言っておじさんを背負ったティートが全速力で入り口へ向かって走り出すと、アラクネたちは一斉にティートに向かおうとする。 ダメ! 行かせないよ!


 作戦は半分終わったんだ。 あんまり余力は考えなくていいよね?


 私は肉体強化魔法の出力を更に上げた。 むぅ……! 体が痛い!? 

 でも、もう少しだから頑張ろう!! 私は気合いを入れ直して、ティートを狙うアラクネを優先して、力まかせにぶっ飛ばした。

 トレニアやジーナも、ティートの逃げ道を作る事に専念してるみたい。

 うん、あと少し!


 「オレは部屋から出たぞ! みんなも逃げろ!!」


 ティートの声を合図に、みんな逃げ始める。 私は最後だ。

 一瞬だけ、このまま倒せるかも? って考えが頭に浮かんだけど、すぐ振り払う。

 もしも私が負けたら、みんなはきっと私を助けに戻って来ちゃう。

 今はパーティーで行動してるんだ! 勝手な行動は、ダメ! 絶対!


 私は追ってくるアラクネを振り払いながら、逃げ続ける。

 たまに立ち止まって、追い付いてきた先頭のアラクネだけ倒して、また逃げる。

 トレニアも、余裕がある時は弓を射ってくれているし、近づかれたら私がぶん殴る。

 それを繰り返しているうちに、諦めたのか、追ってくるアラクネはいなくなっていた。


 辺りを見回す。 あっ、ここはちょうど洞窟の入り口だ。 ……逃げきれたみたい。


 イテテ……気づいたら所々怪我をしていた。

 むぅ…… やっぱり無傷ってわけには行かないか。 明るい所で見ると、結構血が出てる。


 「っぐぅ!? な……なんだよ……? 急に胸が苦しく!?」


 えっ!? 急にティートが苦しみだした!?

 それを見たジーナが、すぐにティートの体を調べ始める。


 「脇腹に傷があるわ…… どうやらアラクネに咬まれたみたいね。

 獲物を生かして捕らえるための毒だから、死ぬようなものじゃないけど、内蔵の動きも弱ってるから、しばらくは動かさないほうがいいわね」


 「困りましたわね。 私の回復魔法は、血止めくらいはできますが、毒の治療はできませんし」


 トレニアも困った顔をしてる。 あれっ? でも……


 「ねえ。 私も何回か咬まれたけど、傷が痛い以外は何ともないよ? 毒は受けてないみたい」


 「まあっ!? フリージアさん! 血だらけじゃないですか! 今、血止めしますわ!」


 トレニアは、私に回復魔法を使いながら、1つの仮説を言った。


 「貴女は、日頃から、お姉様の実を食べていますから、体が丈夫になっているんじゃないですか? あるいは、お姉様の実に解毒効果でもあるのかもしれませんし」


 モーリンの実のお陰かもしれないのか…… あっ! なら!


 「ねえ。 モーリンの葉っぱならあるけど、これをティートに使ってみようか?

 もし解毒効果が無かったとしても、体に害があるものじゃないから、少なくとも悪化したりはしないし」



 私は葉っぱを潰してティートの傷に塗ってみた。 私の大切な物だけど、帰ったら本当のモーリンに会えるんだし、今はティートの回復が優先だ。

 ……これを使ったのに効果が無かったら泣くけど。



 しばらくすると、ティートの熱と脂汗が止まったみたい。 よかった! 効いたみたいだ!

 うん。 これくらい回復すれば、抱えて運んでも大丈夫だと思う。


 「この少年は、ボクの命の恩人だ! ボクに抱えて運ばせてくれ!」


 洞窟で助けたおじさんが真剣な目をしてそう言ったから、お言葉に甘えて、ティートを運んでもらうことにした。


 おじさんは、ティートの体を、大切な宝物を扱うように優しくそっと、それでいて、強くしっかりと抱きしめて、潤んだ瞳で見つめながら、


 「ヘイ、ボーイ。 さあ、力を抜いて、ボクに身を任せるんだ」


 って言ってティートを運びはじめた。 うん。 優しそうなおじさんだね。

 ……あれ!? ティートが苦しみだした!? いけない! 早く連れて帰らないと!



 私たちは、駆け足でギルドの施設へと帰った。




 受付に行って、洞窟にアラクネの群れがいた事や、半分くらい倒したけど、まだ残っている事などを伝えると、あの受付嬢さんが、詳しく聞きたいから奥の部屋へ来て欲しいって言ってきた。


 あっ、でも、先にティートを休ませないと……



 「行ってきたまえ、この少年は我々が心を込めてお世話しよう」

 「ああ、仲間の恩人だ、ぜひお礼させて欲しい」

 「安心してください! 我々は紳士ですよ!」

 「大丈夫! ちょっとだけ! ね? ちょっとだけだから!」


 あのおじさんと、そのパーティーメンバーがそう言ってくれたから、おじさんたちにティートを預けて、私たちは奥の部屋へ行くことにした。


 「じゃあ行ってくるね。 ……あっ!? またティートが苦しみだした!? 大変! おじさん! 早くベッドに連れて行ってあげて!」


 「ふっ…… 任せたまえ」


 そう返事をしたおじさんの笑顔が、実に頼もしく見えた。




 私たちは奥の部屋で、一通りの報告を終えた。

 幸運な事に、私がエンジェルなんとかを欲しがってる事を知ったギルドの偉い人が、報酬の代わりに、ギルドに保管してあった物を分けてくれたんだよね。

 やった! これで、任務完了だね!!


 用事も済んだから、宿に戻ろうかな? って思った所で、受付嬢さんが話しかけて来た。


 「ティート君が負傷したって報告があったけど、今はどうしてるの?」


 「紫色の服を着た冒険者パーティーのおじさんたちが、お世話をしてくれるって言ってくれたから、預けてきた。 なんか紳士的な雰囲気の優しそうな人たちだったよ」


 「紫色の服のおじさんたちというと、冒険者パーティー『薔薇(ばら)の園の紳士』かな? 確か、リーダーは棒術使いのゲイデス・ヤラナイカさんで、他のメンバーは、

ビーエルン・オシリスキーさんと、ダン・ショクカーさんと、メガネノ・キチックさん。 あとは、今回洞窟で助けられた、ガッチー・ホモルマンさんだね。

 あー……あのパーティーにティート君を預けちゃったかー…… そっかー」


 気の毒そうに、それでいてワクワクしているような受付嬢さんの表情が気になったのか、ジーナが少し不安そうな顔で尋ねた。


 「えっと…… ティートに何か? もしかして、あの人たちって、何か問題のあるパーティーだったとかいう話ですか?」


 「問題があるか無いかでいえば、大問題かもしれないけど、私はわりと、そういうのも美味しくモグモグいけるほうだから大丈夫かなー、とか思ってみたり?」


 受付嬢さんの言ってる事がよく分からなかったけど、大丈夫だっていうなら、気にしなくてもいいよね? じゃあ部屋に戻ろうか。

 ティートは、おじさんたちの部屋で少し休ませてから、後で迎えにいこう。




 私たちが部屋に戻って、荷物の整理をしていると、突然、部屋のドアが乱暴にノックされた。


 「たっ……頼む! 開けてくれぇ!! 早く! 奴等が! 奴等が来る!!」


 ティートだ。 元気になったのはいいけど、もう夜だよ? 騒いだら迷惑!


 ドアを開けてあげると、青い顔をしたティートが、泣きそうになりながら転がり込んで来て、そのまま頭からベッドに潜り込んで、結局朝まで出て来なかった。

 むぅ…… ティートに何があったんだろう?



 ティート関係で謎が残ったけど、私たち『モーリン親衛隊とその他1』の初めてのクエストは、大体は成功と言っていいのかな?


 待っててね、モーリン。 今、帰るからね!

閑話だから本編よりは気軽に書けるかなー? っと思ってたのに、書いてみたら本編より疲れました。

しかも後編なのにスッキリ結末まで入りきりませんでした。 すいません。

なので、次回は、『ちくわクエスト・後日談』にして、残りのエピソードを入れるつもりです。


次回も2日後の予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ