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ウッディライフ! ~ この木なんの木? 私です ~  作者: 鷹山 涼
4章ですよ モーリン神殿? いえ、建てなくてもいいですが。
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45話 村への帰還からの将来のビジョン

どうもこんにちは、モーリンです。


 村の近くまで帰って来ましたよー。


 昨日は、窓・魔法(マド・マギカ)さんが生息する村に立ち寄ったんですけど、そこには泊まらずに、またキャンプをしました。

 あの村の規模だと、この人数が泊まれる宿が無いんだと思います。 まあ私たちは、かなりの大所帯ですから仕方ないですねー。


 しかも、ワイルド商人さん辺りがスカウトしたんでしょうかね? あの村からも4人ほどついて来たので、また人数が増えました。


 んー、そろそろ村の人口と同じくらいの人数がいませんか?

 私は賑やかなのは好きですけど、こんなに連れて帰って村の方は大丈夫ですかね?


 まあ、ワイルド商人さんはしっかりした人なので、トラブルを避けるために、あらかじめ連絡してるんだと思いますけどね。

 この世界に電話は無いと思うので、伝書鳩か早馬ですかね? まさか飛脚って事は無いと思います。 まあ他にも私の知らないファンタジーな連絡方法があるのかもしれませんけど。



 お? ……おお!? 村の近くまで来たんですが、なんか、道がしっかりと整備してあります!

 いえ、もちろんアスファルトになってるとか信号機があるとかではないですけど、一定の幅で草を刈ってあって、土もまるで私の胸のように平らにしてあります。 実にペタンとなだらかですねー。


 そろそろ村が見えるかな? と思った辺りで、広い範囲を柵で囲んであるのが見えて来ました。


 え? もしかして、この囲んである範囲を全部、村の敷地にするんですか?

 実際にもう整地してありますし、建物の骨組みができている場所もあります。

 でも、村ってこんなに急に何倍もの大きさにしちゃって問題は無いんですかね? もはやレベルアップというより超進化って感じですけど。


 そんな事を考えているうちにも、馬車は進み、村の入り口に到着しました。

 あ、門もありますねー、まだ枠だけで扉の部分は未完成ですけど。


 ん? この門の上のほうに大きく書いてあるのは、村の名前でしょうか?

 この世界の文字は読めないので何て言う名前かわかりませんけど、その名前を見たちくわちゃんとワイルド商人さんが、うんうんって感じで頷いていたので、きっと素敵な名前なんでしょうねー。


 門の前で馬車が止まりました。 あ、そうですね、村の中まで馬車で入るわけにはいきませんよね。 多分、中も工事中でしょうから、馬車を停めるスペースも無いかもしれませんし。


 私は、馬車を降りて、門をくぐりました。

 ただいまー! 皆さん! 元気にしてますかー!





 ーーーーー長老・タンジー視点



 信仰の対象に祈るときには、その宗教ごとに独自の祈りの作法があるものじゃ。

 なので、我々が精霊姫モーリン様に祈るにも何か、そういうものがあるべきじゃと思う。


 じゃが、あの謙虚なモーリン様ならきっと、貴方に祈る作法はどんなものがいいですか? と質問したところで、そんなものはいらないと(おっしゃ)るじゃろうから、儂らで決めておいたのじゃ。

 無論、モーリン様が嫌がるようならば、すぐにやめるつもりじゃがな。


 そして、その祈りの作法とは……。


 「皆の者、ヒースがモーリン様のご帰還を感知した。 あと数分でお姿が見えるはずじゃぞ。 さあ、整列して準備をするのじゃ」


 儂は、村の者を集め、整列させた。 さあ、モーリン様に練習の成果をお見せする時じゃ!


 やがて、先頭を歩くアウグスト殿の姿が見えてくる。

 そして数秒の後、アウグスト殿の後ろを歩くモーリン様のお姿が見えた。


 「さあ! 祈りを捧げるのじゃ! 儂らの敬意と感謝と信仰をモーリン様にお見せするぞい!」


 儂の声を合図に、村人達は一斉に両手を肩の高さで真横に広げ、ゆっくりとワッサワサと羽ばたいた。 当然、顔は無表情じゃ。


 儂らは、時々モーリン様が見せる、この動作を祈りの作法とする事に決めたのじゃ。


 大地に根差す大樹の力強さと、風を受ける枝葉のしなやかさ、そして羽ばたく鳥のような自由な心を示したであろう動作と、慈愛も怒りも喜びも悲しみも、等しく全てを内包したが故の無表情。


 まさにモーリン様の存在を表現したかのような、この動きを真似る事で、モーリン様のお心に一歩でも近づきたいという儂らの願いもこもっておる。


 儂らの祈りの形を見たモーリン様は、動きを止め、しばらく何かを考えるような雰囲気を見せてから、儂らの祈りに応えるようにワッサワサと羽ばたいた。


 おおっ! 儂らの祈りを受け入れて下さったか!

 ふむ! ならば今後は、モーリン様への祈りの作法はこの動きで統一じゃな。



 祈りに答えて下さるモーリン様と、その喜びから、更に祈りを捧げる儂らは、そのまましばらくの間、無表情で羽ばたき続けた。


 おおっ…… 少しだけじゃが、モーリン様と繋がれた気がするぞい。




 ーーーーー親方視点



 ワシは外から聴こえた長老の声で目を覚ました。


 今朝、38体の精霊様の像を完成させた所で、そのまま力尽きるように眠ってしまったようだ。 だが、なんとか精霊様が帰るまでに完成が間に合ったようで良かった。


 まあ、コレの方に力を注ぎすぎて神殿の完成が予定より遅れてしまったが、これからはワシも建築に参加するから遅れは取り戻せるだろう。



 さて、今の長老の声から判断すると、どうやら精霊様は、今帰って来たみたいだが、ワシの力作を見てもらえるのは、いつ頃になるだろうか?

 徹夜続きですっかり睡眠不足になってしまったが、今のままでは精霊様の反応が気になって眠れそうにない。 早く精霊様に見てもらいたいものだな。


 そう思いながら、外の空気を吸うために扉を開けると、精霊様がこっちに歩いて来るのが見えた。


 おお!? 村へ帰って来たその足で、ここに来てくれるとは……!

 もしかすると、精霊様もワシの作品を見るのを楽しみにしてくれているのか?

 もし、そうなら、とても光栄な事だな!


 精霊様は、ワシのそばまで来ると、片手を軽く上げて挨拶してくれた。

 それは、ワシが職人仲間と挨拶を交わす時にやるような仕草で、華奢で神秘的な精霊様の外見には、あまり似合っていない。

 多分、育ちの良くないワシに合わせて、わざと砕けた態度で気さくに挨拶してくれたんだろう。


 傲慢に振る舞っても許される立場なのに、自ら進んで下の人間に歩み寄ってくれる。 こう言う所に精霊様の器の大きさが感じられるよな。 



 ワシは神殿の広間になる予定のこの部屋に、精霊様を招き入れた。

 一緒にいた巫女の嬢ちゃんも、当然招き入れる。 この嬢ちゃんは精霊様の右腕だから、そういう面で見れば、ワシの先輩みたいなものだ。 年下とは言え礼儀は払うべきだろう。


 さあ、2人はワシの作品に、どんな反応をしてくれるだろうか?

 こんなにドキドキするのは久しぶりだ! へへっ! コイツは、初めて建築現場の指揮をした時の感覚を思い出すな。



 精霊様と嬢ちゃんは、38体の彫刻を見た瞬間動きを止めた。 そして……


 「スゴい! モーリンを祀る神殿の飾りとして、これよりふさわしいものは無い!

 親方! これは最高の仕事だよ! 私も1セット欲しい!」


 嬢ちゃんは、目を輝かせて大興奮で喜んでくれた。

 そんなに喜んでくれるとワシも嬉しいよ。 だが、1セット欲しいなどと言われても…… まさかワシにまた38体作れと? せめて1~2体くらいにしてくれ。



 ワシは、視線を横に動かして精霊様の様子を見る。 さあ、精霊様の反応はどうだろう?


 精霊様は…… うっ、無言だ、そして無表情だ。 

 これは喜んでるのか? それとも嫌がってるのか?


 「な、なあ嬢ちゃんよ。 精霊様が、どう感じているか判るか?」


 判断に困ったワシが巫女の嬢ちゃんに意見を求めると、嬢ちゃんは、ミスをした弟子を見る師匠のような目でワシをみた。

 お、おう…… こんな目で見られたのは40年ぶりくらいだ。


 「髪の毛の先が一瞬ピョコンと跳ねたから驚いたみたい。

 あと動きが少しだけくねくねしてるから恥ずかしがってると思う。

 髪の香りの爽やかさと甘さのバランスが、7対3から6対4に変わったから、機嫌は良いはず。 でも、ナッツみたいな香りも混ざってるから、少し戸惑ってるかな。

 むぅ…… これくらい判断できないと、真のモーリンの使徒とは言えないよ?」


 マジか!? 精霊様の使徒、難易度高いな!?

 くっ…… ワシもまだまだ修行が足りないって事か……。


 だが、少なくとも驚いてはくれたし、機嫌も損ねなかったって事だな?

 うむ、それだけでも嬉しいな。 ……だが、ワシはそこで満足はしない。 


 神殿そのものはまだ完成していないから、ワシが腕を振るう機会はまだまだある。

 精霊様が今回以上に喜んでくれるような神殿に仕上げてみせるぞ!





 ーーーーーモーリン視点・村への帰還直後



 馬車から降りた私たちは、ワイルド商人さんを先頭にして、村の中へと入りました。

 おお! 村の中も随分と工事が進んでますねー? まだまだ完成はしていないようですけど、今ある土台だけを見ても、かなり大がかりな工事だとわかります。

 んー、村が立派になるのは嬉しいですが、私の知っている村が変わってしまうのが寂しいという気持ちも、ちょっとありますね。


 ……おや? なにやら村の皆さんが整列してますね? もしかしてラジオ体操ですか?



 デリバリー爺さんの号令で、全員が一糸乱れぬ動きで両手を横に広げました。

 そして、全員が同時に、ストンと魂が抜け落ちたような能面フェイスになると、そのままゆっくりと両手を羽ばたかせます。

 お、おおぅ…… これはまた…… 夢に出そうな光景ですねー。


 ……んー、しかし、なんか覚えのある動きですね? っと思ったら、私の動きじゃないですか!?


 え? では、ラジオ体操ではなくてモーリン体操ですか?

 それは、ちゃんと健康の維持の役に立つんですか? むしろ発育不良になるイメージがあるんですけど。


 謎の状況ですが、なんだか私に見せつけるように羽ばたいてるようなので、この場合は私も返事をするのが礼儀ですよね。 うん。



 私は、皆さんの羽ばたきに応えるように、心を込めて羽ばたき返しました。

 ワサワサ  ワサワサ  ワッサワサ


 整列して羽ばたく村の皆さんと、それに対して応えるように羽ばたく私。

 そして、その全員が無表情です。

 んー…… なんだかちょっと楽しくなってきましたねー。


 「うわっ……」


 微妙な表情で呟くぺルルちゃん。

 その、『うわっ』の一言に、色々な気持ちが滲み出ているのを感じます。



 しばらくの間みんなで仲良くワサワサした後、村の皆さんとキャラバン隊の皆さんでお話が始まりました。

 ああ、キャラバン隊の皆さんの受け入れとか、作業員の人の振り分けとか、今晩の献立とか、決めておく事はたくさんありますよね。



 私は、そういう話し合いに参加してもできる事が無いので、村の真ん中にあるでっかい建物を見に行ってみる事にしました。 あれ、気になってたんですよねー。


 あ、ちくわちゃんとぺルルちゃんも来るようですね。

 では、3人で行ってみましょう。



 近くまで来ると、そこには作業用の足場が組んであったり布が張ってあったりして、まだ未完成なのがわかりましたが、中から親方さんが出てきたので、ご挨拶をすることにしました。 オイーッス!



 挨拶を交わすと親方さんは、ドアを開けてから、どうぞ、って案内する感じで手を動かします。

 入っていいんですかね? 作業中では? まあ、入っていいと言うなら、少しお邪魔させてもらいますが。


 入ってみると体育館のように広い部屋があり、そこは沢山の彫刻が並んでいました。

 お……おや? この彫刻のモデルは、まさか!?


 「んっ!? ブフッ! な……なにコレ!? あっはっはっ!!」


 その彫刻を見たぺルルちゃんは、お腹を抱えて笑い出しました。 いえ……まあ、ちょっと気持ちはわかりますが……。



 そこに並ぶ彫刻は全て、私がポーズを決めているものだったのです。


 こ……これはまた……。 部屋に入ると、ポーズを決める自分の彫刻が並んでいる光景と言うのは、なかなかにパンチが効いていますね~。

 ノリノリでポーズをする自分を、形にして見せられるというのは正直、かなり恥ずかしいです。


 さっきのモーリン体操といい、このポージング美術館といい、なんか皆さん、全力で私をイジリに来ていませんか?


 でも、なんか…… こうやって愛を持ってイジられる感じって、実は嬉しいです。

 こう言うお笑い芸人みたいな扱いをされると、皆さんと距離が近づいた感じがしますねー!!

 うんうん。 ゴッド的な扱いをされるよりも、こういう方が私は好きですよ!



 「あー、リンってば、すっかり神様扱いね。 大きな神殿を建てられて、そんな彫刻を作られて…… さっきのも、多分、村の人なりのお祈りでしょ?」


 神様……ですか? ぺルルちゃんは、変わった解釈をしますね?

 確かに最初のうちは、皆さん、私をゴッド的に見ていたようですが、きっと私がそんな大層なものじゃないと気づいて、マスコット扱いする方に方針転換したんだと思いますよ?


 ほら、動きをモノマネされるのも、ポーズを取っているグッズを作られるのも、芸人かマスコットキャラにありがちじゃないですか。


 ここだって神殿のわけないですよ。 モーリン神殿なんて、そんな何の役にも立たなそうな建物いりませんってば。

 ここは、私のポージング彫刻なんてお笑いグッズが並んでいるくらいですから、多分、娯楽施設か何かじゃないですか?


 あっ! もしかして、ここはライブ会場でしょうか!?

 み……皆さん、こんな立派な会場を作るほど、私のライブに期待しているんですか!? こ……これはプレッシャーですねー。


 うーん、私のようなサイレント芸人は、大きな会場でネタをするにはあまり向かないんですけど、期待してくれているなら、頑張らないといけませんね。


 よーし! 私はこの世界で、立派なエンターテイナーになってみせますよー!!

 農業とかもやってみたいと思ってましたけど、兼業でもOKですよね?

 ほら、日本でも、農業や水産業をやったり、無人島で味噌を自作したりしながらアイドルをやってるグループもいますし。


 うん。 少しずつ、私の将来のビジョンが定まってきましたねー。

次回も2日後の予定です。

多分、次回で4章の本編は終わると思います。

その後は、また閑話を何話か投稿した後、数日休んで5章開始の予定です。

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