44話 セレブお嬢さんのスペックからのダブルピース
ポイントが1000に到達しました。
皆さん、ありがとうございます。
どうもこんにちは、モーリンです。
あの街を出て、3日ほど経ちました。
もうすぐ、あの、魔力が澱んでいた休憩所につく頃ですねー。
今のところ大きなトラブルも無く、順調に進んでいますよ。
この3日間で、セレブお嬢さんの色々な面が見れました。
まず、仕草にセレブらしい育ちの良さを感じるのに、意外とタフでアクティブです。
弓で鳥を狩ってナイフでさばいたり、木の実を取って来たりと、食料調達もしますし、馬車の中でもしっかりと睡眠を取れています。
都会派っぽいとは言っても、やっぱりエルフはサバイバルに強いんですね。
ちなみに、ちくわちゃんは、弓で鳥は狩りませんが、素手で熊を狩って来ました。
凄いです! 格好いいです! ……でも、エルフっぽくは無いですねー。
次に気づいた点。 セレブお嬢さんは、スタイルが良いです。
旅の途中なので、お風呂というわけには行きませんが、休憩時間に、木にカーテンを張って、そこで体を洗うくらいはするんですよ。
で、背中を拭いてあげようと思って、ご一緒したんですが、その時に見たセレブお嬢さんの体が、同性の私も、うほっ! って言いそうになる、ナイスな体でした。
胸もお尻も、凄く大きいわけではありませんが、肌が綺麗で、全身が程よく引き締まっていて、水着コンテストで優勝しそうなスタイルです。
私は自分ミニマム体型に不満がないので嫉妬とかはしないのですが、ちくわちゃんは思うところがあるようで、セレブお嬢さんの体を恨めしそうな目で見ていました。
……気にしなくても、ちくわちゃんは今のままで魅力的ですよ?
他に気づいた点。 セレブお嬢さんは、リーダーの資質がありそうです。
私たちの集団は5~6人のグループごとにリーダー的な人がいるみたいなんですが、そのリーダーたちを集めての話し合いで、司会進行をしているようですし、ちょっと揉め事になりそうな雰囲気になっても、上手くなだめているようです。
本来のリーダーであるワイルド商人さんも、自分は前に出過ぎないようにして、セレブお嬢さんに指揮を任せるスタンスのようですから、セレブお嬢さんにリーダーの能力があると認めているんでしょう。
総合的に見て、かなりのハイスペックですよねー。
甲冑戦隊の時の反応を見た限り、戦いは苦手なようですが、他に弱点は…… あっ、ありました。 弱点というほどではありませんけど、セレブお嬢さんは、きっと幽霊が苦手だと思います。
セレブお嬢さんは、ぺルルちゃんの姿が見えていないようなんですよ。
なので、ぺルルちゃんが音を立てたり物を動かしたりすると、怪奇現象のように感じるらしく、顔を青くしたりします。
ちくわちゃんは面白がっているのか、ぺルルちゃんがいる事を、あえて教えていないみたいです。 イタズラ心が顔を出しちゃいましたか?
ぺルルちゃんの姿が見えれば、怖い存在じゃない事がわかるんでしょうけど。
……あっ、ちょうどいいのでこの機会に、前から疑問に思っていた、ぺルルちゃんが何で常にステルス状態でいるのかを質問してみましょうか。
ぺルル・エブリデイ・スケスケ・ナンデヤネン?
「……その言い方だと、私が毎日セクシー下着を愛用してるみたいに聞こえるからやめて。 えっと、私が普通の人に見えないようにしている理由を知りたいってことよね? その事は、正直もっと早い段階で訊かれるかと思ってたけど」
いえ、私とちくわちゃんに見えているので、普通は見えないって事を、つい忘れるんですよねー。
「姿を見せたらダメって規則があるわけじゃないのよ? でも、妖精族には、自分の姿が見える人には親切にしてあげるっていうマナーがあるのよ。
ルールじゃなくてマナーだから、別に、やらなくても罰則は無いんだけど、やらないとスッキリしないのよ。 だから、常に姿を見せていたら、会う人全員に親切にする事になるじゃない。 それは無理だから姿を消してるのよ」
素敵なマナーですねー。 でも、確かに全ての人に親切にするというのは難しいですよね、できるならそうしたいですけど。
「cや*eTzユ!」 「4iLひwアs!?」
おや? なにやら皆さんが何か騒ぎ出しましたね? あまり聞き覚えの無い声なので、新しく街から来た人たちでしょうか?
ちょうど、あの休憩所に着いたところですね。 あっ、馬車が止まったので、ここで休憩するようです。
んー、この辺に、騒ぐような珍しいものって、ありましたっけ?
気になったので、馬車の窓から、ニョキッと顔を出して確認をします。 ……あ、皆さんが何を見て騒いでいるのか、わかりました。
私が魔力を浄化したときに咲かせた花ですね。 まだ枯れてませんでしたか。
皆さんがチラチラと私の顔を見ていますね。 すぐに私がやったと気づいたみたいですね、街で同じ花を咲かせたのを知っているからでしょうか。
……ん? ということは、ここにいる皆さんは、あのときの天空のコスプレイヤーの正体が私だと知っているという事ですか!?
そ、それは正直、気まずいですねー。 ですが、恥ずかしがってると思われると、更に恥ずかしくなるので、ポーカーフェイスで気にしてないフリをしましょう。
幸い、ポーカーフェイスは得意です。 というか、私はポーカーフェイスしかできませんが。
ところで、馬車を降りたちくわちゃんとワイルド商人さんが、花の前でドヤ顔をしながら何かを喋っていて、それを聞いた人たちが、私の方をキラキラした目で見ているのが気になるんですけど……。
もしかして、私が花を咲かせたときの事を言いふらしてます?
しかも、そのドヤ顔で自慢気に話している姿を見ると、なんか大げさに脚色して話しているのでは? という疑惑が頭に浮かぶんですけど……。
うっ…… 皆さんのキラキラした尊敬の視線が、普通に恥ずかしいです。
私は、大勢の前で一発ギャグをするとかは平気なんですけど、褒められたりして注目されるのは、どうにも苦手なんですよ。
あまり褒められなれていないので、なんか体がムズムズしちゃいますねー。
体のムズムズに耐えるため、馬車の中で、ゴロゴロと転がっている時に、ちくわちゃんが戻ってきました。
無言で転がり続ける私を見て、何事かと心配するような顔をしていたので、私が元気だとアピールするために、とりあえずダブルピースをしてみると、ちくわちゃんは安心したような顔で、何事もなかったように馬車に入って来ました。
うん。 ちゃんと伝わったようですねー。
おや? その後ろにいたセレブお嬢さんは、まだ困惑しているようですね?
「そっちの人の反応が正解だと思うわよ? 無言で転がり回っている人が、目が合うと同時に、突如ダブルピースをしたら、体の健康とは違う意味合いで心配になるのが普通じゃないかしら」
ぺルルちゃんが、そう言いました。
ふむ……言われてみると、なんだかそんな気もしますね?
まあ、ちくわちゃんには意図が伝わったので、OKとしましょう。
セレブお嬢さんも、困惑しながらも馬車に入ってきたので、私が起き上がって席に座ると、馬車が動きだしました。
あ、動くんですか? 休憩所もあるので、今日はここでお休みするかと思ったんですが……。
ああ、でも考えたら、あの休憩所はあまり広くないので、この大所帯があそこでキャンプをしたら、貸し切り……というか、もはや占領です。
そんな事になったら他の旅人さんがお休みできなくなっちゃいますよね。
そういうのは感じ悪いので、他の場所に移ってから休むのは賛成です
その日の夜は、少し進んだ先にあった平地でキャンプをしました。
相変わらず、準備や見張りは私に任せてもらえません。
私だけ楽をするのは不公平なので、せめて余興でもしようと思って、阿波おどりを披露してみたんですが、数人の人が私に膝をついて祈り始めました。
ち、違います! 私は、皆さんに盛り上がって楽しんで欲しいんですよ! そんな神聖なものを見たような顔で祈ったりしないでください! むしろ一緒に踊るくらいでいいんですよー!?
予想外の反応に困惑して、踊りを止めるタイミングがわからなくなってしまった私は、私を囲んで祈る人たちの中心で、1人で阿波おどりを続けました。
……我ながら凄くシュールな光景だったと思います。
んー、皆さん、もうすこしライトな踊りのほうがノリやすかったですかね?
次の機会があれば、函館イカ踊りにしてみましょうか。 うん。
ーーーーー その頃、村では……
村の主要なメンバーが集まり、村の名前を考えていた。
「……では、この村の名前は、『モーリン村』でいいかのう?」
「だが、個人の名前を村の名にして問題は無いのだろうか?」
「問題無い、土地の守り神の名前をつけた街などもあったはずだ。 精霊様の名をつけてはいけないという事は無いだろう」
「でも、大きな神殿が完成した後も『村』って扱いでいいのかしら?」
「じゃあ、神殿が完成したら『モーリン神殿』に改名して、将来、大きな街に発展する事があれば、『神殿都市・モーリン』に再度改名したら?」
「よし! それでいこう!」
本人の知らないうちにモーリン村、将来的にはモーリン神殿、そして神殿都市モーリンという名が、地図に正式に記される事が決定していた。
次回も2日後の予定です。