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ウッディライフ! ~ この木なんの木? 私です ~  作者: 鷹山 涼
4章ですよ モーリン神殿? いえ、建てなくてもいいですが。
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42話 プレミアムなマンゴーからの親方の情熱的なお仕事

どうもこんにちは、木です。


 ちくわちゃんが荷物をまとめ始めました。 村へ帰る日が近いんだと思います。

 つまり、セレブファミリーとのお別れも近づいてきたという事なので、お世話になったお礼に果物をあげようかと思って、ちょっとセレブファミリーのお庭を借りて、久しぶりに木の姿で果物を創っています。


 自分で言うのもなんですが、どうやら私の果物は美味しすぎるらしくて、慣れすぎると、他の果物が食べられなくなってしまうという話だったので、あまり果物をホイホイ配らないようにしようと思っていました。


 ですが、地球でも、お世話になった方に高級果物のギフトセットとか送るじゃないですか、あんな感じで、年に1~2回のご挨拶的な頻度なら、大丈夫かなー? って思い直したんですよ。


 お世話になった方にプレゼントする高級果物と言えば、メロンが定番のイメージですけど、あれは厳密に言えば野菜なので、創り難いですね。

 いえ、出来ない事もないのですが、消耗が倍以上違うので、できれば避けたいところです。


 んー、木に実るもので、プレミアムギフトっぽいものと言えば……

 マンゴーですかね? デパートとかで、目を疑うような値段で売ってたりしますし。

 この国で南国の果物を見たことないので、多分珍しいでしょう。 決定ですね。



 美味しくな~れ、美味しくな~れ、ソイヤ! っと念じてマンゴーが実った直後に、ぺルルちゃんが帰って来ました。 お帰りなさーい。

 丁度いいタイミングですねー、マンゴー食べます?


 「わあ、ありがとう! 早速いただくわ」


 ニッコリ笑うぺルルちゃん。 うん、いい笑顔ですねー。

 ぺルルちゃんが食べている間に、私は、ちくわちゃんに手伝ってもらって、実ったマンゴーを取り終わってから人間形態に戻りました。

 ふう、久しぶりにたくさん創ったので、流石に少し疲れましたね。 


 ぺルルちゃんがディアえもんと何を話したかも聞きたいですけど、まずはこのマンゴーをセレブファミリーに配りましょうか。 ぺルルちゃんは、食べながら待っててくださいねー。



 私は、たくさんのマンゴーを、葉っぱで作った袋に入れて歩いています。

 私もちくわちゃんも手先が不器用で、葉っぱを編んで袋を作るとか無理そうなので、最初から袋の形になってる葉っぱを作りました。

 手先が不器用な分、能力は器用になってきた気がしますねー。


 セレブファミリーを探して廊下を歩いていると、初めてこのお屋敷に来たときに案内してくれた、あの猫耳メイドさんがいました。

 ちわーっス。 今日も素敵な猫耳ですねー。


 セレブファミリーの皆さんはどこですか? って質問をしたいのですが……

 んー、ボディランゲージで伝えるのは難しいですねー? どうしましょうか?


 すると、どうやらちくわちゃんが言ってくれたみたいですね。 猫耳メイドさんが、こっちだニャンって感じで案内してくれました。 ありがとうニャン。



 案内された場所は、今までセレブファミリーとお話するのに使っていたようなキッチリしたお部屋ではなくて、もう少し生活感のあるアットホームな感じのリビングでした。


 今まで見たお部屋は、よく言えば豪華、悪く言えば成金趣味って感じで、正直なところ、私の好みではなかったんですけど、この部屋は良いですね。

 もちろん、ここも広くて立派ではあるんですが、なんと言うか、良い意味で隙がある感じで、私は好きですねー。


 ちなみに、前世の私の部屋は、隙があるどころか、完全なノーガード戦法みたいな部屋でした、読みかけの本とポテチの袋とエナジードリンクの空き缶が私のベッドにまで侵略を始めていましたし。 流石に、最後のプライドとして、生ゴミ系は散らかしてませんが。


 ……あ、もしかして、ポテチとエナジードリンクが主食だったので、単純に生ゴミになる物が無いだけでしたかね?


 おっと、今は私の部屋の話ははどうでもいいですね。

 セレブファミリーにマンゴーをプレゼントしなくては。


 私は、テーブルの上にマンゴーを葉っぱの袋ごとのせました。

 はい、どうぞー。


 セレブ奥さんが、これをくれるんザマスか? みたいなリアクションをしてたので、私も頷きながら、どーぞどーぞってアクションをします。

 それを見たセレブ奥さんが、猫耳メイドさんに何かを指示を出しました。

 猫耳メイドさんは、はいニャ! って感じで、マンゴーを持って部屋から出て行き、少しすると綺麗にカットしてお皿に入れて持って来ます。


 おお、横に花なんかも添えてあって、盛り付けもオシャレですねー。



 セレブファミリーの皆さんは、グルメ漫画のようなオーバーリアクションで、とても美味しそうに食べてくれました。

 その後は、話も弾んで…… あ、いえ、私は会話できませんから適当に首を振っていただけですが、話が弾んでる雰囲気は伝わって来ました。

 うんうん。 やっぱり、笑顔でお話しするのって良いですよね。




 セレブファミリーに果物をあげて楽しくお話しした後、部屋への帰り道に、ポワッと頭に浮かんだのは、今さっき見たセレブファミリー、そして、ちくわちゃんやぺルルちゃんや村の皆さんが、私の果物を美味しそうに食べてくれた時の事でした。


 うん。 やっぱり、自分の果物を食べて幸せそうな顔をしてくれると、すごく嬉しいですねー。

 農家の人が、自分の畑で育てた作物を、誰かに美味しいと言ってもらったときの嬉しさって、こんな感じでしょうかね?


 まあ、どちらかと言えば、私は農家側というより、作物側の立ち位置なんですが。



 んー、農家……ですか。 いいかも知れませんね。

 私は、土や水の良し悪しが感覚的にわかりますし。 私の葉っぱは良い肥料になるようですから、農家というのは天職かも知れません。

 普通に土を耕して作った物なら、多分、美味しすぎるって事もないでしょうし、自重しないで存分に食べてもらうこともできますよね?


 ……ありですね。 将来のビジョンの1つとして考えておきましょうか。



 何となく自分の将来について考えながら部屋の扉を開けると……

 部屋の中で、ぺルルちゃんが倒れていました。


 !……ぺ、ぺルルちゃん! 大丈夫ですか!! いったい何が……!?


 ぺルルちゃんのそばには、空っぽのお皿が転がっていました。

 そう、8個のマンゴーがのっていたお皿が、空っぽになって転がっています。

 ……そして、辺りに漂うフルーティーな香りと、お腹を押さえて倒れるぺルルちゃん。 ……うん。 状況が見えてきました。


 あの……もしかして、1人で8個全部食べました?

 1つでもぺルルちゃんの半分以上のサイズがあるんですけど、どこに入っているんですか?



 「うう……面目ないわ。 あまりにも美味しかったから、つい……。 けぷっ」



 んー、ぺルルちゃんって、普段はしっかり者なのに、食べ物が絡むと、ちょっとだけポンコツになりますよねー。

 最初にちくわちゃんにミートソースにされそうになったのも、つまみ食いが原因でしたし。


 まあ、そんなところも含めて、可愛いんですけどね。



 本当は、ぺルルちゃんに、ディアえもんとお話しした事を訊いてみたかったんですけど、今のぺルルちゃんにあまり喋らせると、口からマンゴーチャツネが出てきちゃいそうなので、安静にさせておきます。


 ベッドに寝かせるために、そっと持ち上げたぺルルちゃんの体には、ちゃんとマンゴー8個分の重さがプラスされていました。

 ……どうやら本当に中に入っているみたいです。 どこにどうやって入っているかは謎ですが。



 私の体も謎の性能ですが、ぺルルちゃんの体も結構な謎スペックですねー。





ーーーーー その頃、村では……



 「順調っちゃあ順調なんだが…… もう少し早く進めたい所だな」


 モーリン神殿(仮)の建設の指揮を執る、体格のガッシリした初老の男性…… 通称・親方が、首を捻りながらそう呟いた。


 「おいおい爺さん。 文句があるなら自分でやれば良いだろ。 アンタ、腕利きなんだろ? 若造に任せるより早くできるんじゃねえのか?」


 木材を運びながらそう言ったのは、Bランク冒険者のロドルフォだった。

 よく見ると彼以外にも、『魔喰いの(あぎと)』のメンバーが作業員に混じって、汗を流して働いているのが見える。


 今は、彼を最も敵視しているフリージアが村にいないので、その隙に作業の手伝いをさせているのだ。

 村人たちの中にも最初は反対の声もあったのだが、ヒースがニッコリと笑って、


 「ああ、助かるよ! 彼なら倒れるほど酷使しても、心が痛まないよね。

 いや、良かった! これで仕事が進むなぁ」


 と言っていたのを聞いて、彼に同情する者が現れた事から、案外早くに受け入れられた。


 ヒースの言葉が、村人の反対意見を消すためのものだったのか、本当に倒れるほど酷使するつもりだったのかは、今となっては不明だが。



 「まあ、ワシが建築のほうに参加すれば、そりゃあ今よりも作業は早くなるだろうが、()()()()を他の奴に任せるわけには行かねえ。 コレはワシの仕事だ」


 情熱を燃やす親方が作っているのは、神殿の内部に並べる予定の38体の彫刻だ。


 それは、どこかで見たような、無表情のちんちくりんが、今にも奇妙な冒険を始めそうなポーズを決めている物だ。 当然38体、全てが別のポーズをしている。


 だが、親方がアイデアに困ることは無い。 なぜなら、懐の中のメモには、まだまだ大量の香ばしいポーズがスケッチされているのだから。


 「精霊様が戻るまでに、どうにかこの彫刻だけは完成させておきたいからな。 ふんっ! 秘蔵のポーションを飲みまくって、徹夜を続けてまで作業してるんだ。 意地でも完成させてやるぞ!」


 そういって親方は、目をギラギラさせながらニヤリと笑った。


 「コイツを見た精霊様が、どう反応するか楽しみだな。 ビックリしてくれるといいが」


 香ばしいポーズを決めている自分の姿が神殿に大量に並んで、不特定多数に公開されているのを見た時、はたして本人がどういう方向性でビックリするか……という部分は、情熱の炎で脳まで温まっている親方には、見えていないようであった。

次回も2日後の予定です。

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