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ウッディライフ! ~ この木なんの木? 私です ~  作者: 鷹山 涼
4章ですよ モーリン神殿? いえ、建てなくてもいいですが。
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39話 セレブな会食からの甲冑戦隊

思ったより長くなったので、区切ります。

どうもこんにちは、モーリンです。


 さて、現在、謎のセレブファミリーと会食中ですが、私は何をすればいいのでしょうか?


 こうなった経緯も、話の内容も、そもそもこの人たちがどちら様かも不明です。

更に言えば、この料理を食べるべきかも悩ましい所ですし。

 ほら、今の私って、味がわからないので、なんか私が食べるのって勿体ない気がするんですよねー。


 でも、こういうセレブな家って、残り物を食べたりしないでしょうから、私が食べなければ捨てられちゃうでしょうし……。


 ぺルルちゃんにも分けてあげますけど、いくらぺルルちゃんがサイズのわりに大食いとは言っても、人間基準の一人前は食べきれませんし……。


 うん。 ぺルルちゃんが残したら私も食べるとしましょうか。

 とりあえず今は、会話の合間に、適当にノリで首を縦に振ったり横に振ったりしてましょう。

 これで何となく会話に参加してるような雰囲気はしますよね?


 会話は、ちくわちゃんとワイルド商人さんにお任せして、私はセレブファミリーの皆さんを、改めてしっかりと見ました。


 セレブおじさんは、50代後半くらいの外見です。

 片方だけのメガネ……モノクロ? モノクル? どっちか忘れましたけど、それをしていて、えっと……言いにくいですが、毛髪の砂漠化が深刻な感じの方です。 で、服はセレブっぽいです。


 セレブ奥さんは…… 年齢は、まあノーコメントですが、セレブおじさんと並んでいて違和感が無い年齢差でしょう。

 キツめの教育ママっぽい雰囲気です。 で、服はセレブっぽいです。


 セレブお嬢さんは、年齢は20歳前後で、『更正した元・悪役令嬢』みたいな感じです。

 髪の毛は、少し巻いていますが、縦ロールまでは行きません。 目は、つり目ですが怖いほどではありません。

 オーホッホッ! とまでは笑わなそうですが、オホホ、くらいには笑いそうです。 で、服はセレブっぽいです。


 あ、よく見ると、ちくわちゃんほどハッキリしてませんけど、3人とも少し耳が尖ってますね? もしかすると、エルフの方ですか?

 ……あっ、もしや、ちくわちゃんの親戚か何かですか? 顔立ちはあまり似てないので、再従兄弟(はとこ)くらい離れた血縁関係でしょうかね?


 ふむ、なるほど、近所まで来たからついでにご挨拶に寄ったという事ですね?

 で、ワイルド商人さんがこの場にいるのは、ちくわちゃんが1人で旅をしてきたと思ったら心配しちゃいそうだから、ちゃんと保護者が引率してますよー、って事のアピールですか? 

 兵士さんを連れてこなかったのは、余計に心配させるからですね。 ほら、日本の感覚で言えば、警察に引率されるようなものですから、何かやらかしたと誤解されそうですし。


 私を連れてきたのは、友達の紹介ですか? それとも、頼りになる大好きなお姉ちゃん、とか紹介されてるんでしょうか!?

 あっ! さっきから、やけに3人とも私を見ているな~、と思ったら、ちくわちゃんの事を任せるに値するかどうかを見定めているのですね?

 謎は全て解けました! じっちゃんの名にかけて!


 あ、私のじっちゃんの名前は倉人(クラウド)です、妙にカッコいい名前ですよねー。


 まあ、じっちゃんの名前がスタイリッシュな件は置いといて、ちくわちゃんの友達として認めてもらうために、私も改めてご挨拶するべきですね!


 ちょうど、セレブ奥さんが、私に何かを言っているようですし、セレブ奥さんにご挨拶をしましょう。 礼儀としては、旦那さんを最初にするべきかもしれませんが、見た感じ、このセレブ奥さんが一番手強そうなので、早いうちに仲良くなっておきたいです。 


 あっ、そうです! ただ、頭を下げるだけと言うのもなんですし、花をプレゼントすることにしましょう!

 花束の形で咲かせるのは無理でしょうから、1本でプレゼントする事になりますよね。


 んー、1本だけでも、それなりに見栄えのする花……となると、やっぱりバラですかね? 本当は、木に咲く花の方が創り易いのですが、木に咲く花って、あんまりプレゼントに向いてるやつがパッと思い浮かばないですし。

 まあ、バラの1本や2本で倒れる程の消耗はしませんし、OKでしょう。


 バラと言えば、真っ赤のイメージですが、セレブ奥さんは、見た感じ派手な印象では無いので、青いバラにしましょう。

 この世界では、どうか知りませんけど、地球では品種改良で生み出されるまで自然界に無かったものですから、こっちでも珍しいんじゃないかなー、と思います。


 まあ、もしも青いバラがありふれた物だったとしても、普通に綺麗なので、もらって嫌な気持ちになる事は無いでしょう。



 私は青いバラをイメージして不思議パワーを、髪の毛にゆっくりと流し込んで行きます。

 そして、気合いを入れてソイヤ! っと、花を咲かせます。 うん、成功です。

 頭の横の方に、髪飾りみたいな感じで咲きました。


 ……これ、頭のてっぺんにヒマワリを咲かせたりしたら、アホっぽいビジュアルになりそうですよね。 やりませんけど。


 私は頭から、青いバラをプチっと抜いて、セレブ奥さんに手渡します。

 ……おお? 受け取ったセレブ奥さんだけじゃなくて、セレブおじさんもセレブお嬢さんも、驚いた表情をしていますねー。 やっぱり青いバラって、この世界でも珍しいものみたいですね。

 あ、セレブお嬢さん、食べかけのサンドイッチをポトリと落としちゃいましたね? そんなに驚きましたか?


 自分たち側を確認すると、ちくわちゃんとワイルド商人さんは、驚いてはいるんですけど、想定の範囲内って感じの、余裕のある驚き方です。

 この2組の差は、私の能力をよく知っているかどうかの差でしょうかね?



 その後、皆さんで神妙な顔で会話を始めました。

 ……あれれ? あのバラは、あんまり喜んで貰えなかった感じですか? 喜びより驚きの方が大きかったんでしょうかね?

 んー、やっぱりプレゼントは、珍しければ、それで高評価というわけには行かないですねー? 難しいものです。



 何やら皆さんのお話しが盛り上がって来ましたね。 私はお話しに参加出来ませんし、バラを咲かせるのに使った分の栄養補給も兼ねて、ご飯を食べましょうか。

 いただきまーす。


 んー、やっぱり味がしないし、回復の効率もいまいちですねー。 ……うん、これくらい食べればもういいですかね? ぺルルちゃん、食べちゃってもいいですよ。

 ……というか、先に食べていてもよかったんですよ?


 ぺルル・タベチャイナヨ・you ・ムシロ・タベナイ・is・ナンデヤネン?


 「リンがまだ食べてないのは、みんな見て知ってたわ。 それなのに、お皿の上の食べ物が減っていったら不思議に思うじゃない。 私は見えてないのよ?

 今は、みんなリンが食べたのを確認したから、少しくらい減っても気にしないでしょうから、食べるけどね。 じゃあ、いただきます」



 そう言って食べ始めたぺルルちゃん。

 んー、ぺルルちゃんって、ずっと姿を消してる理由ってあるんですかね?

 たしか、会ったばかりの時に、『姿を見えないようにしてる』って言っていたので、逆に言えば見えるようにもできるという事ですよねー?

 見えていれば、物を食べる時に、変に気を使わなくても良いはずなんですけど。



 私は、そんな事を考えながら、ぺルルちゃんを眺めていました。

 ……おおぅ!? 今、顔より大きいサンドイッチを3口くらいで食べちゃいました。 それ、どうやってるんです?


 私は、皆さんのお話しが終わるまでぺルルちゃんの食べっぷりを眺めていました。

 いえ、他人が話してる時は、大人しく聞くのが礼儀なのはわかりますよ?

 ですが、何を言っているか不明の会話より、ぺルルちゃんの大食いショーの方に興味が行ってしまうのは仕方ないと思いませんか?




 食事が終わると、セレブおじさんに、なにやら広い部屋に案内されました。


 ここは……なんか、美術館っぽい場所ですね? 高そうな物が沢山並あります。

 おお! 奥には全身を覆うタイプの重そうな鎧が、五つ並んで飾ってありますね。


 しかし、似たデザインの色違いが五つセットとは、見事に特撮チックですねー!

 ふむ、甲冑戦隊オモタインジャーと名付けましょう!

 お? これも気になりますね、某・電気ネズミに似た石像がありました。



 でも、あれですね? セレブな家庭に行くと、大抵はコレクション自慢が始まるという『セレブあるある』を聞いたことがありましたが、今の状況は、まさにそれですかね?

 ……なんかイヤな感じですねー?


 んー、私は、あまり他人を妬むタイプでは無いつもりだったんですけど、こんなにイヤな気分になるとは、自分でも意外ですねー?

 そう思って首を(かし)げる私に、ぺルルちゃんが言いました。


 「リン! ここよ! ここの魔力が(よど)んでるのよ! 多分、この部屋に結界みたいなものがあって、外から魔力が察知しにくかったんだわ!」


 あ、それでイヤな感じがしたんですね。 精神的な問題じゃありませんでしたか。

 ……おっと、納得している場合ではありませんでした。 さあ、魔力を綺麗にしましょうか。


 んー、このイヤな気配の中心はどの辺りですかねー……って、甲冑戦隊の辺りじゃないですか!?

 あそこは、今ちょうどセレブお嬢さんがいますよ! 避難させないと体調が悪くなっちゃいます!


 ですが、どうやってその事を伝えましょう? いえ、緊急事態ですし、セレブお嬢さんを持ち上げて強制的に避難させるのもありですね。

 そう思って、セレブお嬢さんの方に駆け足で向かった、まさにその時、

 突然動き出した甲冑戦隊が剣を抜いてセレブお嬢さんに斬りかかるのが見えました。


 そう来ましたかっ!? 私は意識を戦闘用に切り替えて、走ります。


 素早く飛び込んだ私は、甲冑戦隊の攻撃からセレブお嬢さんを守ります。

 右手と左手で剣をそれぞれ1本ずつ、(つた)に変えた髪の毛で2本、そして、お腹で1本を防ぎました。


 最後の1本直撃しとるやん! という声もありそうですが、セレブお嬢さんが無傷だったのでOKです。

 まあ、私のおヘソが2つになっちゃいましたが、そのうち治るでしょう。

 少しくらいのダメージは無視してでも、まずはこの状況をどうにかしなくては。


 んー、セレブお嬢さんを守らなくてはいけないので、攻撃ができませんね。

 私は、動体視力の高さに頼って、見てから動いてるだけなので、防ぐ事はできますが、誰かを守りながら攻撃するような技術はありません。


 うぬぬ……、甲冑戦隊オモタインジャーめ! 戦隊モノのくせに、不意討ちをしたうえに、丸腰の女性に斬りかかるとは、なんたる非道! そんな卑怯戦隊は、日曜日の午前中に放送できません!

 お茶の間のお母さんたちからクレームが来ちゃいますよ!?


 本来なら、私が戦隊ヒーローの心得を教え込んであげたい所ですが、残念ながら、今は少々余裕がありませんね。 ……ですが、まあ焦る事は無いでしょう。


 私は、1人ではありませんから。



 次の瞬間、ちくわちゃんが、マジカルちくわロッドでオモタインブルーを叩き伏せました。

 そしてその直後に、ワイルド商人さんが、オモタインイエローの胴体にパンチをかましてダウンさせます。


 えっ!? ワイルド商人さんって、素手のパンチで金属の鎧をへこませられるタイプの人間なんですか!? ちくわちゃんが援護してくれるのは予想してましたけど、ワイルド商人さんの参戦は予想外でした。


 ですが、感心してる場合ではありません! 今のうちです!


 私はセレブお嬢さんを抱えあげて、一度、戦線離脱して、ご両親に預けてから改めて戦いに戻ります。


 あれれ? さっき、2人が倒したブルーとイエローが、再び立ち上がってきました? 

 うむむ……不屈の闘志で立ち上がる辺りはヒーローっぽいですねー。 少しだけ見直しましたよ。

 ですが、人に向けて刃物を振り回すような方を見過ごすことは出来ません!


 私は正面にいた、オモタイングリーンを蹴り飛ばしました。

 ガシャンと倒れて、一瞬バラバラになった後、カチャカチャとプラモを組み立てるようにくっついて、また立ち上がるオモタイングリーン。

 おや? だれか巻き戻しボタンでも押しましたか?




 そのまま私たちは戦い続けましたが、倒しても倒しても立ち上がるタフガイな甲冑戦隊オモタインジャーたちに手間取っていました。

 どうしましょうか? くっつきようが無いほどバラバラにするのも効果的かも知れませんけど、他人様のお家、しかも、こんな高級そうな美術品の並んだ部屋で、全力でハッスルするわけには行きません。

 余計なモノを壊したら、無一文の私には弁償出来ませんし。



 どうしますかねー? ゲームとかでは、こう言う無限に復活するタイプの敵は、リーダーを倒せば他の敵もみんな止まる、とか、そう言うお約束があるんですが……

 リーダーと言っても、果たしてどれがリーダーだか判断がつかな……い?



 ……私の視線の先には、赤い鎧…… オモタインレッドがいました。

 ……兜の真ん中には、アンテナが立っていて、他の4体と違って、さっきから安全な距離を保っていて、あまり前に出て来ません。



 えー…… もう一度言いましょうか。 色がレッドで、 アンテナがあって、 安全な場所にいます。


 んー、こう言う相手は、リーダーを倒せばみんな止まるのがお約束なんですよねー。 だけど、どれがリーダーかわかりませんねー、わー、困りましたねー……  って、オマエかーい!!!



 ばちこーん!! とばかりに、オモタインレッドにビンタをお見舞いします。


 当たりが出たらもう一発! もう一丁ばちこーん!!


 今なら同じ物を更にもう1つお付けして、お値段はそのまま! もちろん送料は全てニャパネットが負担します! はい、ばちこーん!!


 オモタインレッドはダブルアクセル・シングルループ・トリプルサルコウの3連続ジャンプを決めて、華麗にぶっ飛んだあと、ガシャンと落下してバラバラになりました。


 そして、その中から、何かがコロコロと転がって来ました。

 おや? これは…… んー、どこかで見たことがある気がしますねー?


 真っ黒なピンポン玉のようなそれを拾って、ぺルルちゃんに見せました。

 ……コレ、なんでしたっけ?



 それを見たぺルルちゃんは、凍りついたような表情でした。

 ……あの~、どうしました?

次回も2日後の予定です。

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