32話 ファンキーなブドウからのツアー旅行
どうもこんにちは、木です。
ぺルルちゃんがディアえもんの所から帰ってきたので、お疲れ様の意味も込めて、果物をご馳走しようと思って木の姿になりました。
まあ、木と言っても相変わらずゆるキャラ状態なんですけどね。
さて、どんな果物を創りましょうかねー?
ぺルルちゃんの食べやすいサイズで、折角なら今まで創ってない物がいいですね。
……あ、一般的な果物なのに、意外とブドウを創ったことありませんでしたね、皮ごと食べられる種無しの品種もありますし、そういうブドウならぺルルちゃんも食べやすそうですね。
んー、ブドウなら、蔦に実るものなので、枝を蔦に変えた方が実るイメージをしやすいですよね。 ですけど、以前は枝を蔦に変えていたのですが、今はメインの枝……という言い方もおかしいですが、それは人間の腕になってますから蔦にはできませんね。 とりあえず頭の上の方の枝だけ蔦に変えて……っと。
……ふと思ったんですが、人の姿の時に髪の毛を蔦に変えたらドレッドヘアみたいになるんでしょうか? ちょっと興味があるので、今度試してみましょうか。
レゲエ歌手みたいにファンキーになれますかね?
おっと、少し考えが妙な方向に行きかけましたが、ブドウは完成しました。
さあ、召し上がれ~。
「ありがとう! いただくわね。 ……うんっ、美味しいわ、なんだか心が陽気になるような味ね、自然と体がリズムを刻みそうになるわ」
おや? もしかしてレゲエ成分が混入されちゃいました? ちくわちゃんもリズミカルに首を左右に揺らしながら食べています。
ま……まあ、害は無さそうだから良いですよね?
うん、心がピョンピョンするブドウというのも悪くないモノです。
うん……今後は、果物を創る時は妙な事を考えるのは控えましょう。
「ディアモン様からリンにお願いがあるの」
そう言い出したヘぺルルちゃん。 あ、ちなみにぺルルちゃんは、私の事を今でもリンと呼びます。
『別に1人くらい本名を呼ぶ人がいてもいいでしょ』なんてどうでも良さそうに言ってましたけど……
えへへ~、わかってますよー。 本名を呼んでくれる人が1人もいないと、私が寂しがると思ってるんですよねー? ぺルルちゃん優しいです。
うりうり~。
「ひゃっ!? な、なんで急に指でツンツンするのよ!? それより、話は聞いてた? ディアモン様からお願いがあるんだってば」
ふふふっ。 今の私は、木でありながら人の手があるので、ぺルルちゃんを指でツンツンする事も容易い事ですよー。
……おや? ちくわちゃんがじっとこっちを見ています。 あっ! 仲間外れにされたと思ってますか!? そんな事無いですよ、そーれ、ツンツン♪
ちくわちゃんをツンツンすると、ちくわちゃんも笑いながらツンツンし返してきました。 なんの! こちらも負けじと、更にツンツンします。
ツンツン ツンツン ツンツン ツンツン
「……ねえ、貴方やっぱり話を聞いてないでしょ?」
怒られました。
「改めて言うわね? ディアモン様が、リンにお願いしてるのよ。 命令じゃなくてお願いだから、断っても良いって言ってたけどね」
カマヘン・カマヘン・マカシトキー
「早っ!! せめて内容を聞いてから返事しないと、後々痛い目を見るわよ!?」
う~む。 ディアえもんはヒドイお願いは言わないと思いますし、そもそもヒドイ内容ならぺルルちゃんも伝言を断ると思います。 なので、引き受けても痛い目は見るような事にはならないと思うんですよね。
それに困った時はお互い様ですし。
「まあ聞いてから断っても文句は言わないからね? 少し面倒な話だし。
ちょっと村の外まで出なくちゃいけない事なのよ。……正直な話、リンが良いって言っても、難しいかもね。 貴方が村から抜け出したら、村人たちが大騒ぎしそうだわ」
うむむ…… そうですねー。 不本意ですが私はこの村でゴッド的なモノとして扱われていますから、勝手に出歩くわけにも行きませんか~。
……ですが、お願いの内容は気になるので、とりあえず内容は聞いてみます。
ぺルル・オネガイ・ナイヨウ・イッテミソ
「ここから南の大きな街があるんだけど、そこの土地の魔力が澱み始めてるらしいの。 ほら、この前リンに浄化してもらった悪い魔力があったでしょ? アレになる一歩手前くらいになってるらしいわ」
ナルホドナー・ワタシ・ソレ・キレイキレイ・オドロキノ・シロサ?
「うん、そう言うことよ。 妖精達の手で浄化する場合、一度魔法で固めてから妖精界に持って帰らないと行けないんだけど、リンならその場ですぐに浄化できるからお願いしたいんだって」
内容としては世のため人のためになる事ですし、それに妖精の皆さんとは何かと縁がありますから、お手伝いはしたいですねー。
私が村から出る許可が出るかわかりませんが、村の皆さんにお願いしてみましょうか。
私も折角動けるようになったので、村の外も見てみたいですねー、とか思っていた所ですし。 問題は、会話どころか筆談すら出来ない私が、どうやってお願いするかですが……
まあ、ボディランゲージでどうにか理解し合えますよね? 人類皆兄弟と言いますし。
あ、私は木なので、人類じゃありませんね。 まあ人類が皆兄弟なら、人類と木も再従兄弟くらいの繋がりはあるでしょう。 再従兄弟でも理解し合えますよね? きっと。 という事で、人の姿に変身して、さあレッツらゴーです。
はい、ということで村の中にやって参りました。 スタジオの皆さん、見えますか? 現場のモーリンです。 F P S の反応を見ると、どうやらこのお家に人が多く集まっているようですね。 ふむふむ、他の家より少し大きい家ですね? では、アポなしで失礼しますね。
さあ、トントンとノックして…… って、ほわあ!?
ノックも無しで、ちくわちゃんが勝手に開けて入っちゃいました。
……いいんですかね? まあ、開けちゃった以上、私だけ待ってても仕方ないから入りますけど…… ちくわちゃん、案外ワイルドですねー。 それとも、もう村の皆さんは家族感覚だから遠慮はいらないんですかね?
おお! 中に入るとオールスター的な感じでした。
デリバリー爺さん、マッスルさん、係長さんの三人と、ワイルド商人さんと…… おや? ダンディブラザーズ(弟)も居ますね? いつの間にか、この方も村の一員になったのでしょうか? 新しい仲間を歓迎しますよー。
他のメンバーは、顔は知ってるんですが、今まであまり接点のなかった人が何人かいます。 何かの話し合いをしてたような雰囲気ですけど、私が入ってきたらマズかったですかね?
なんか私を見て気まずそうな顔をしてる人がいますけど……。 これだけ注目を集めてから、『間違えました~』みたいな感じで出ていくのも何か違いますし、手早く要件を済ましてから、堂々と帰りましょうか。
んー、どうやって私の言いたい事を伝えますかねー? 周りの様子を見ると、壁に地図らしき物が貼られているのに気づきました。
いえ、ちょっと変わったポスターと言う可能性もありますが……。 こう言うときはぺルルちゃんの出番ですね。
ぺルル・コレ・チズ?・ポスター?・ドッチヤネン?
「いや、どう見てもポスターじゃないでしょ。 これは地図よ」
おお! やっぱり地図でしたか! それは好都合です。 コレで目的地を指差せば、私が行きたがってると伝わるでしょう。
目的地がどこなのかがわかりませんが、そこはぺルルちゃんに訊きましょう。 質問ばかりで申し訳ないですけど。
ぺルル・コノチズ・ムラハ・ドコ?・モクテキチ・ドコ?・ワタシハ・ダレ?
「この村は、この丸で囲んである所だから、目的の街は南だから……ここよ。
そして貴方はリンでモーリンでチンチクリンよ」
なるほど、わかりました。 村はここで、目的地はそこで、そして私はリンでモーリンでチンチクリンですね。
おや? 最後のは、いつの間に私の名前になったんでしょうか? まあ、否定できないので素直に認めてしまいましょう。
どうもこんにちは、チンチクリンです。
まあ、私の新たな名前については置いといて、目的を済ましてしまいましょうか。
私は左手で自分を指差し、右手で地図の、目的地部分をトントンと指差しました。 ……これで上手く伝わりますかね?
すると皆さんは、ざわざわした後で私に礼をしました。 ん? 今、礼をするような流れでしたっけ? 何か妙な雰囲気ですが、私の言いたい事は伝わってますか? ちょっと不安なんですけど。
その後は、皆さんで旅の準備をしてくれました。
うん、私が外出する事は伝わったみたいですし、許可もしてくれたみたいでなによりです。
……ですが、その馬車と護衛の兵士は何ですか?
私は、ちくわちゃんとぺルルちゃんとの仲良し3姉妹で、旅行を兼ねた感じでユルく行きたかったんですけど、何でこんな大げさな事になってしまったんでしょうかねー?
まあ、言っても仕方ないですし、大勢でのバスツアー旅行だと思いましょうか。
うん。 そう思えば大人数も楽しいですよね。
事ある毎にキッチリした礼をされるのは少し堅苦しいですが、そこは割りきって初めての旅を楽しみましょうか!
次の投稿は土曜日の予定です。