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ウッディライフ! ~ この木なんの木? 私です ~  作者: 鷹山 涼
4章ですよ モーリン神殿? いえ、建てなくてもいいですが。
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30話 ゆるキャラのいない世界からのスタイリッシュなポーズ

昨日から今日の間に、ブクマ・評価・感想が複数来ました。

ありがとうございます。

どうもこんにちは、木です。


 ゆるキャラモードになるために、毎回服を脱ぐのも面倒だと感じて試行錯誤した結果、自分で葉っぱや花を加工して服を作れるようになりました。

 この服なら変身する度に破けても、自分でその場で創れますからOKです。


 ……変身する時に一瞬だけチラっと裸が見えるかも知れませんが、まあ、それは魔法少女モノのお約束ですよね。 ちょっと恥ずかしいですが、服が破ける頃には体は、ほぼ木になってますから、まあセーフです。

 これで、変身前に裸にならないとダメという問題点が解決したので、あの後、村の皆さんの前でゆるキャラモードになってみました。


 ……皆さんドン引きです。 忘れてました、変身シーンのキモさは解決してませんでしたね~。 まあ、変身シーンの事は置いときましょう。

 で、変身したあとの話ですが、皆さん最初はびっくりするんですけど、その後はわりと普通なんですよねー。


 私としては、ゆるキャラにありがちな、女の子が抱きついて来たり、やんちゃな男の子がパンチして来たりするような扱いになるかと思っていたんですが、結局抱きついて来たのはちくわちゃんだけでした。


 ぺルルちゃんに確認してみると、


 「この世界には、ゆるキャラ以前に、着ぐるみとかマスコットキャラとかの文化が無いから、貴方の姿も、ちょっと変わった木くらいに思われてるかも知れないわね」


 との事です。

 なるほど。 考えて見ればモンスターとかがいる世界ですから、木に人間の顔が付いていても、普通にそう言う存在として受け入れられるのかも知れないですね。


 村の皆さんが私を見慣れてるからかとも思ったんですけど、最近ワイルド商人さんが連れて来た作業員っぽい方々も、初対面では流石に驚いてましたが、その後は普通の反応でしたし。 いえ、普通というか、むしろ丁寧な対応でしたね。

 村の皆さんにゴッド的な扱いをされるのは、不本意ながらもまあ慣れたんですが、初対面の方に過剰に丁寧な扱いを受けるのは、少々対応に困りますねー。


 個人的にはゆるキャラ扱いされたほうが気楽でいいんですけどねー。


 そう言えば、この作業員っぽい方々は何を建てるんでしょうかね?

 今まで村の建物は村の人々で建てていたのに、外の人を雇ってまで作るなんて、なにか立派な建物を建てるんでしょうか?


 村が発展するのは嬉しいですが、人口50人くらいの村で建物ばかり建ててもスカスカな村になっちゃいそうですけど、その辺は大丈夫なんですかね? まあ、知識も経験も胸も無い私が口出ししても仕方ないですね。


 というか、言葉がわからない上に一言くらいしか喋れないので、口出しして良いと言われても難しいんですが。




 翌日、作業員っぽい方々がちくわハウス……というか、私の切り株の周辺を見に来ました。


 おや? この辺りにも何か建てるんですか? うむむ、出来ればこの辺りはそっとしといて欲しいんですけど…… ほら、私の切り株のそばには、まだ例の金の鈴蘭も咲いてるんですよ。 環境が変わって枯れちゃったらイヤですし。


 あ、でもこの世界の土木や建築って、重機とか使うわけじゃないですし、土や植物にはそれほど影響無いですかね? だったらOKなんですが。


 作業員っぽい方々は、ガッシリした体をして、60歳くらいでヒゲもじゃ、といういかにも親方っぽい人を先頭にして並んで、私に一礼しました。

 う~ん、そういうのは必要ないんですけどねー。


 親方さんは紙の束に何かを書き込み始めました。 ……あ、カメラとか無いから、地形とかの情報を手書きでメモしとかなきゃいけないんですかね? それは大変ですね。


 でも、あれですねー。 今、私は人の姿で切り株に座ってるんですが、そのそばで一生懸命に何かを書いている人がいると、なんだか自分が絵のモデルになったような気分になりますねー? ……なにか決めポーズとかしてみたくなりました。

 ということでとりあえず、奇妙な冒険をする漫画の48巻の表紙で、ギャング・スターに憧れた主人公がやってるポーズを決めてみました。 あの手のひらを前に向けたやつです。


 衝撃を受けたようにのけ反る親方さん。 周りにいる他の作業員さんたちも、どよめいています。

 ……うーん、このリアクションは、お気に召したんでしょうかね? それともイマイチですか? ちょっとわからないので、他のポーズもやってみましょう。

 私は次々にあの漫画のポーズを決めまくります。

 おお、すごいです! 実際にやるにはかなりハードなポーズもあるんですが、この体の身体能力をもってすれば、足腰を痛めそうなポーズでもバッチリと決まります。


 親方さんの目が熱っぽくなって来ましたね。 私をじっくりと見つめながらペンを持つ手が素早く動きます。 うん、これは完全に私をスケッチしてますね?

 ならば私も手は抜けません! さあ、どんどん行きますよー!




 「……いったい何をやってるのよ?」


 ぺルルちゃんの呆れたような声で、ハッと我に帰りました。

 おや? 結構時間が経ってますね? ……どうやら少々集中し過ぎたようですね。

 親方さんも紙を使い果たしてから我に帰って、しまった! って顔をしています。

 ……もしかして、あの紙の束、全部私のスケッチで使っちゃいました?

 そこまで夢中になってくれたならモデル冥利につきます。

 ですが、邪魔をした私が言うのもなんですが、お仕事の方は大丈夫ですか?


 時間と紙を無駄にしてしまったのに、親方さんの表情はキラキラしていますし、他の作業員さんたちも、ちょっとウットリしてるように見えます。

 皆さん……そんなにあのポーズが気に入りましたか。

 ふと、視線を感じて振り向くと、いつの間にいたのか不明ですが、ワイルド商人さんが熱いまなざしで見つめていました。 その隣にはちくわちゃんがいましたが、彼女もキラキラした目で私を見ています。 もしかして貴方たちも魅了されましたか?


 ふむふむ、漫画に出てくるカッコいいポーズと言うのは、漫画の無い異世界人の目から見てもカッコ良く見えるんですねー。


 これはもしかすると、日本の漫画のスタイリッシュなポーズが、遠い異世界でムーブメントを巻き起こす日も近いのかもしれませんね? その日が来るのがちょっと楽しみです。





ーーーーー 親方視点




ワシは、アウグスト殿からこの村の神殿建築を任された者だ。 親方と呼んでくれ。 もちろん本名は別にあるが、仕事中は『親方』で通ってるからそれでいい。


 ワシは今回の仕事が楽しみだった。

 ワシは、今までも何度か神殿の建築を任された事があった。 宗教に関わる仕事は、完成した建物のデキはおろか、仕事中の態度1つでも信者たちを一斉に敵にする事もあるから、半端者には任せられない仕事だ。 そんな仕事を何度も任されて、成功させて来た事はちょっとした自慢だ。 ……だが、神殿の建築には不満が1つあるんだ。


 建物を建てた時の醍醐味ってのはやっぱり、そこに住む住人がワシの建てたものを見て喜んでくれる瞬間だ。 だが神殿にはそれが無い。

 いや、信者たちに礼を言われた事は何度もあるし、それはそれで嬉しかったさ。

 だが何かが違っていたんだ。 やはり神殿の本当の住人と言うのは、信者ではなくて、そこに祀られている神様だからな。


 だが、神様の喜んでいる姿が見たいなんて言うのも無茶な話だ。 ガキじゃあるまいし、そんな不満は口に出さずに今まで来た。 ……だが、今回は祀られる精霊様って言うのが、実際に誰にでも見えて触れる肉体を持った精霊様だって言うんだから、これは仕事のやりがいがあるってモノだ。 この辺りの人間で精霊様を信仰するのは珍しいが、ワシにとっては、神でも精霊でも大差は無い。 目に見える存在のために神殿を建てると言う事が大切だ。

 何せ、初めて神殿に祀られる存在の反応を直接見る事ができるんだからな。



 アウグスト殿に連れられてワシのチームは、目的の村に着いた。 ……良い村だ。

 だが、失礼を承知で言わせてもらうと、領主様とアウグスト殿が力を合わせてまで発展させようとする価値はワシには感じられなかった。

 だがワシは職人だ、やりがいのある仕事が目の前にあるなら充分だ。


 だが、村に着いたワシらの最初の仕事は、自分達の寝泊まりする宿を完成させる事だった。 どうやら、ワシらが来ると決まってから村人が急いで建ててくれたらしいが、完成が間に合わなかったらしい。 まあ、ここまで出来ているなら夜までに完成させられる。 準備運動だと思って終わらせてしまおう。


 夕方近くになり、宿が完成した時、何やら村の中がざわつき始めた。 何かあったか? ちょうど手が空いた所だ、様子を見に行ってみるか。


 ワシとアウグスト殿と、あと他にも何人かで村の中心辺りに向かうと、人だかりができていて、その中心には一本の木が立っていた。 む? 朝に見た時は、ここに木など無かった気がするが……。


 「あれは……モーリン様!?」


 アウグスト殿が驚いたような声を出す。 ……モーリン様と言えば、ここで祀る予定の精霊様の名前だったはずだ。 では、あの木が?


 ワシは改めてその木を見ると…… なんと!? 木の幹の真ん中に、少女の顔があり、両側には腕も付いている。 ……だが、明らかな異形の姿なのだが、不思議と恐怖や嫌悪感は感じられず、むしろ微笑ましい雰囲気を感じるくらいだ。

 ううむ、これが、この村の精霊様か。


 ……はて? だが、アウグスト殿が驚いたのはなぜだろうか?


 「アウグスト殿。 お前さんは、精霊様をよく知っているんだろう? なぜ、さっきは精霊様を見て驚いたんだ?」


 「ああ、俺が知っているのは、完全に木、その物の外見と、小柄な少女の外見の2つだけだ。 まさか、その中間の姿があったとは、俺も知らなかった」


 ほう? 精霊様の信者を自称するアウグスト殿が、初めて見る姿だったのか。

 という事は、普段は別の姿なのだな。


 ワシは、本業は建築家だが、造形美の追究と言う意味で共通するものがあると思い、絵画や彫刻などの芸術もそれなりにかじっているのだが、今の精霊様の姿は、ワシにインスピレーションを与えてくれるものであった。 他の姿があると言うなら、そちらの姿も見てみたいものだ。



 ワシのその望みは、思ったより早く叶うことになった。


 翌朝、アウグスト殿が、こう言ったのだ。


 「モーリン様の祭壇の周辺も見に行くべきだろう。 あそこを神殿の中心にするつもりだからな。 ……ああそうだ、覚えておけ。 モーリン様は寛大な方だから、余程のことをしなければ怒る事は無いが、巫女をやっているフリージア先輩は、モーリン様への無礼には厳しいから気を付けろよ。」


 巫女がアウグスト殿の先輩と言うのは、意味がよくわからなかったが、礼儀に気を付けろという忠告は覚えておこう。

 ワシは祭壇と巫女の家があると言う場所に向かった。



 そこには、先日の魔物のような姿では無く、小柄な少女の姿をした精霊様が居た。 

 見たことの無い、黄金の花に囲まれた切り株に腰かけるその姿は、とても美しく、神秘的に感じた。 ……いや、こう言ってはなんだが、精霊様を女性として見た場合、世間で語られる美人とは違うだろう。 だが、不思議と目が引き付けられる魅力があるのだ。 言わば、人ならざる者の魅力だろうか。




 だが、いつまでも見とれている訳にもいかない。 ワシは、仲間たちと共に精霊様にしっかりと一礼して仕事に取りかかる。


 ……そう言えば、巫女の姿が見えない。

 アウグスト殿が言うには、巫女はあまり朝に強くないという話だから、まだ寝ているのかも知れないな。

 まあ、今日の仕事は地形の確認と、どういう建築をするかのイメージを固めるためにメモを書くだけだ。 寝ている巫女を起こしてしまう心配も無いだろう。


 ワシは地形や、土の質等の特徴を文字でメモしたあと、全体を見ながら簡単な絵を描く。

 これはワシの独自のやり方だ。 正確に描く必要は無い。 ボンヤリと全体を描いている内に、建物のイメージが浮かんでくるのだ。 全体の基本設計は、村に来る前に考えて来たが、やはり最後にこうやってイメージを固める事で完成度が違ってくるものだ。


 ワシがイメージを掴み始めた時、おもむろに精霊様が立ち上がった。 そしてワシの方を見て、とあるポーズをして見せた。


 その瞬間、ワシは、圧倒的な衝撃に叩きのめされた。

 美しい!! そして香ばしい!! なんだ!?  この視覚だけでは無く、嗅覚にまで訴えかけて来るような強烈なパワーは!?

 いや……嗅覚だけでは無い……。 耳をすませば、ズギュウゥゥンと言う心を撃ち抜かれるような音や、ドドドドドッ……という鼓動までもが聴こえて来るようだっ……!!


 精霊様は、オラオラオラっと言わんばかりの勢いで、続けざまに色々なポーズを決め続ける。 ワシは、もう仕事のためのスケッチなど忘れて、ただ精霊様のポーズを描き続けるだけの奴隷となったかのようだった。

 だが、ワシはまだ耐えた方だろう。 まだ若い仲間などは、まるで特殊な能力で時間を止められたかのように、ただ、口を開けたまま精霊様に見とれるだけしかできなかった。


 だが、その魔法のような時間は、紙が無くなり、ワシがハッと我に帰った瞬間に終わりを告げた。 気づくと、精霊様もポーズを止めて切り株に座り直していた。


 ……ワシは仲間たちに告げる。


 「お前ら宿に戻るぞ、計画を見直す!」


 ワシはただ漠然と『木の精霊の神殿』というイメージで考えて、設計図を書き始めていたが、あんなモノは、ゴミだ! もう使えない!

 この造形美と言うものを知り尽くしたかのような精霊様に、あんなつまらない設計の神殿に住めなどとは、ワシはとてもじゃないが言えはしない。

 ……大丈夫だ、精霊様に、真の美の一端を見せて頂いた今のワシなら、昨日までよりも良いアイデアが浮かぶハズだ。

 仲間たちを見ると、皆生き生きとした表情をしている。


 ……フッ。 お前さんたちも同じ気持ちか……。


 「さあ、全員気合いを入れるんだ! 一から計画を考え直すぞ! この情熱が冷めない内に!!」



ーーーーーー


 「ふう、結局徹夜してしまったな。 だが、不思議と眠気も疲れも感じない。

 精霊様のあの姿を見てから、自分が生まれ変わったかのような気分だな」


 翌朝、川で顔を洗っていたワシの後ろに、いつの間にかアウグスト殿と、一人の少女が立っていた。 ……この少女は、噂の巫女が?

 二人は、ワシの顔をじっと見た後で声を揃えて呟いた。


 「「ようこそ、歓迎する」」


 一瞬、何の事かわからなかったが、二人の瞳の奥のドロリとした輝きを見た瞬間に突然理解できた。 ああ、ワシの心には、この二人と同じ何かが芽吹き始めている……と。


 「……ああ、よろしく頼むぞ。 ……先輩たちよ」


 ワシはその時、自分が、光輝く門をくぐり、その先へ歩き出したような気がした。

建築家のお爺さんが信者になりました。

ただ、この人は主人公の信者と言うより、某・奇妙な冒険のポーズの信者と言う気もしますが。


この世界は、ダンスのように、動きの流れを美しく見せるという考えはありますが、

写真は無いので、1つ1つのポージングに美しさを求める考えは、あまり育っていません。

なので、日本のサブカルチャー作品にあるような、無意味にスタイリッシュなポーズというのは、

かなりのカルチャーショックのようです。



今後の投稿ペースの事ですが、少し考えた結果、やはり2~3日に一度の投稿にする事にしました。

なので明日は休んで、16日の日曜に続きを投稿します。

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