閑話 大妖精オベロンの愉悦
オベロン視点の閑話です。
ボクは、オベロン。 地球の妖精の代表さ。
まあ、今の地球は妖精の数が少ないから、その中で代表だなんて言っても、だからなに? って言われちゃいそうだけどさ。
ああ、一応、こう見えても妖精の中でも結構なベテランなんだよ?
少なくとも今、大妖精を名乗っているメンバーでは一番年上さ。
ああ、だけど、お爺ちゃんなんて呼ばないでおくれよ? 男はいつだって心は少年のままなのさ! まあ、ボクの場合は外見も永遠の美少年だけどね。
そんなボクの若さの秘訣を教えてあげようか? それはね~……
ひ・み・つ♪
あははっ!! 冗談さ! さあ、笑ってもいいんだよ? 楽しい時は笑うものだよ?
そう! 毎日を楽しみ、よく笑うこと! 本当はコレこそが若さの秘訣なのさ!
そんなボクだけど、ここ数年は退屈していて困ってたんだ。
退屈だと若さを保てなくなっちゃうよー! そんなのは御免さ!
そんな時に彼女の事を知ったのさ。 もう、運命の出会いだよね!
おっと、運命の出会いなんて言葉を他の女のコに使ったら、奥さんに怒られちゃうから、今のは無しだね。 ボクは、とっても愛妻家なのさ。
まあ、恐妻家とも言うんだけどね。
それで…… ああ、彼女の話だね。 彼女は地球の、日本って国の女のコなんだよ。
だけど、ディアモンの所の子供がやらかして、死んじゃったみたいでさ~、しかも、魂がディアモンの管理する世界に連れて行かれちゃったんだよね。
冥界ってのは世界ごとに独立してて、別の世界の死者が混じるのはアウトなんだよね。 つまり、死者の魂を別世界に連れてくるのは良くないんだよ。
だから、それをネタにしてディアモンにアレコレ言ってやるのも、いい暇潰しになるかなーって思って、ディアモンに会いに行ったんだ。 そしたら、もう彼女を転生させたって言うんだよねー。
確かに問題は魂が別の冥界に混ざる事だから、直接転生させればOKなんだよ。
だから彼女を転生させるのは予想してたけど、ボクら大妖精が独断で他人を転生させたり、大きな加護を与える権限には、回数が決まってるから、ディアモンが権限を使いきってないかどうかって所が問題がだったんだよ。
でもディアモンってば、今まで一度も権限を使わないで溜め込んでたんだってさ。
ボクなんか暇潰しで使ってたから、もう一回も残ってないや。
因みに、ボクが最後に転生させた日本人の男は、日本全国に12人の恋人と12人の義理の妹を作ってウハウハ生活の末に恋人に刺し殺された男だよ。
面白い人生を見せてくれるかなって思って選んでやったのに、あの男ったら、ボクの奥さんまでナンパしたんだよ!? 頭に来たから、チート能力無しでモンスターだらけの異世界に送り込んでやったよ。 もう、権限の無駄遣いしちゃったよ!
あ~、あんなガッカリ男の事はもういいや。 彼女の話をしようか。
彼女は、よりによって木に転生したんだよね~、いや、適性を見てディアモンがオススメしたらしいけど、普通、オススメされても受け入れないよね? オススメのランチセットを注文するような軽い話じゃないのにさ。
ボクは、その時点で彼女に興味を持ったよ。 もう、ビビッと来たね!
だからディアモンに言って、魔法の鏡で彼女の様子を見せてもらったんだけど……
いやぁ~、やっぱり彼女はイイね! 面白いよ!
まず、何があったか知らないけど凄い速度で育ってたよ。 日にちを考えたら、まだ苗木だと思ってたのに、本当に何をやったんだかね?
で、育ってるだけならそこまで驚かないけど、彼女は動くんだよねー。
木の実を投げて魔物と戦ったり踊ったりしてたよ。 たまに、何もせず静かに暮らしたいって理由で植物になりたがる人は、少ないけど居ることは居るんだよ。
でも、植物になってアクティブに生きる人は初めて見たよ。
キミ、もう動物でいいじゃん。
いや、なかなか楽しませてもらったよ、ディアモンに彼女の住む座標を聞いておいたから、帰ってから奥さんにも見せてあげよう。 ボクの奥さんは、外では清楚なマダムで通ってるけど、実はお笑い好きだから気に入ると思うんだよね。
あ、プロのコメディアンはダメだよ? 高位の妖精は人間の感情が読めるから、プロが面白い事をしても、内心の努力やプロ意識が伝わって来て素直に笑えないんだ。
やっぱり芸人と食べ物は天然物が一番だよね!
後日、奥さんと二人で、彼女の生活を観させてもらった。
うん、やっぱり奥さんも大満足してくれたよ。
共通の話題が増えたおかげで、最近はボクらの夫婦仲も良好さ!
彼女には、何かお礼をしないとね。 ボクはこう見えて義理堅いんだよ?
最近は彼女の所にぺルルが派遣されてるみたいだし、ぺルル経由で彼女に何かプレゼントでもしようかな?
ぺルルは、ボクの世界の人間の想いが集まって生まれたのに、なぜかディアモンの管理する、リーズガルドっていう世界で誕生したって言う変わり種で、そういう経緯だから、ディアモンの部下でありながらボクの部下でもあるんだよ。
言わばボクとディアモンの子供さ!
……オエッ、気持ち悪い事を考えちゃったよ。
さて、それからしばらく経った後の話だ。 ……あっ、当然その間も彼女の様子は楽しく見させてもらってるよ。
最近、彼女は人間に襲撃されて伐採されちゃった。
しかし彼女は本当に善良だよね~。 殺すつもりでやれば、あれくらいの戦いで傷つけられなかっただろうにね。
まあ、そのお陰でボクのプレゼントが日の目を見たから、まあ良かったのかな?
ああ、そのプレゼントについて、ボクとディアモンを除いた、残りの二人の大妖精からクレームが来たんだよ。 ボクは人間に何かしてあげられる回数は残って無いハズなのに、彼女にサービスであげるには大きすぎるプレゼントをしたってね。
でも、大丈夫さ! あのルールは、実際に人に加護を与えた回数でカウントしてるんだ。 ボクは、いつかのナンパ男には何の加護もあげなかったから、その1回分が残ってたのさ。
……まあ、仮に回数が残ってなくても彼女を見殺しにはしなかったけどね。
ボクが、自分のお気に入りのオモチャが壊れそうになるのを、ただ見過ごすワケが無いだろう?
ああ、誤解しないでね? 彼女をオモチャと言ったのは悪い意味じゃないんだよ?
ボクは楽しいオモチャが大好きだからね。 簡単には手放さないさ。
彼女は、人間に近い姿を手に入れた。 自分で動けるようになったから、きっと前以上に色々とやらかしてくれると思うんだ。 ボクはそれを期待しているんだよ。
ねえ、鈴。 いや、精霊モーリン。 これからもボクを笑わせておくれよ?
キミがボクを楽しませてくれる限りは、ボクはキミの味方でいると約束するよ。
キミはキミの思うままに自由に生きるといい。
ボクはいつも見ているよ。
どうやら主人公は、オベロンに、天然系お笑い芸人だと思われているようです。
しかもストーカー&覗き見宣言されました。
まあ、オベロンは妻一筋なので、恋愛的な執着ではありませんが。
次回また閑話を投稿します。 その後、数日休んでから次の章に進む予定です。