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ウッディライフ! ~ この木なんの木? 私です ~  作者: 鷹山 涼
3章ですよ 精霊姫って誰ですか?
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26.5話A 頑張れ! 信者B!

信者Bことアウグスト視点です。 (信者Aは、ちくわちゃんです)

主な登場人物は、ワイルドなオッサンとぽっちゃりのオッサン!

そして新キャラは、変な名前のオッサンです! 女の子は出ません!

そして、次回に続く2話構成!    うん……なんか、ゴメンなさい。

『実体を持つ精霊が現れた』


 その噂は徐々に広がりつつあるが、その場所が辺境の小さな村であった事。

 その情報に物珍しさ以上の価値を感じなかった人間が多かった事。

 あとは単純に、まだ新しい情報のため知る者が少ないと言うのもあるだろう。

 幸いにして、その情報は表面上は大きな火種を生む様子は見せなかった。


 だが、もちろんそれは誰も動いていないという意味ではない。 公的な理由、私的な理由、(ある)いはその両方の理由で、介入しようとする者や、逆に介入させないために目を光らせる者など、すでに水面下で動いている者は複数いるのだ。




ーーーーーアウグスト視点



 大抵の大きな組織には、『暗部』と呼ばれる集団がいる。

 組織の裏の汚い仕事を任された者達だ。 で、当然それは……いや、当然なんて言い切るべきじゃないんだが、まあ商人ギルドにも居る。 あまり大声でいう事じゃないが、俺はそいつらを数人あの村の周辺に配置していたんだ。

 ……もちろん村を守るためだ、悪さする気はないぞ? 


 そしてある夜、暗部の男から伝書鳩…… まあ、もちろん特殊な鳩だがな、そいつで連絡が来たんだが、その連絡で2度驚かされた。

 まずは、それがヒースからの連絡だってことだ、アイツは普通に暗部を経由して連絡して来やがった。 しかも、どうやら正式な手順で暗部に連絡を入れてきたらしい。 ……アイツ、暗部への連絡方法なんて、どうして知ってるんだよ?

 すでにそこで驚かされた。 だが、本当の問題はその内容だった。 


 村が襲撃を受け、しかも襲撃者はギルド所属の冒険者だってんだ。

 俺は、暗部の奴らに他国からの介入や欲で動いた二流商人を中心に警戒させていたが、自国の冒険者が物理的に仕掛けてくるとは思っていなかった。

 で、急いで冒険者ギルドの方を調べてみると、ちょいと見えて来たものがあったんだが…… まあ、それは後だな。 俺は後ろを振り向き、声をかける。



 「見えて来たぜ、あの村だ」


 「おお、あそこですか。 いやあ、商人ギルドのマスター直々のご案内、とても助かりましたよ」


 こいつは、冒険者ギルドマスターの秘書だ、名前は……なんだっけな? まあいい、村に捕まえている冒険者を引き取りに来たらしいんだが、連れている護衛も含めて胡散臭い匂いを感じたから、監視も兼ねて案内役として同行したってわけだ。


 まあ、元々俺も近いうちに村に来るつもりで準備をしていたから、少し日程をいじっただけで時間は作れたしな。


 ……本当なら、この村に来たからには真っ先に精霊様にご挨拶したいところだが、こんな胡散臭い連中から目を離すわけには行かないしな。 残念だが精霊様には改めてご挨拶するとしよう。

 ……ヒースの手紙によると、精霊様は女性の姿になったらしい。

 ……すげぇ美人なんだろうなぁ。 お会いするのが楽しみだったんだが。





 「やあ、アウグスト。 待ってたよ」


 村の入り口で、ヒースが立っていた。

 ……しかしコイツは、いつ村に来てもしっかり待ち構えてやがるな……。

 いつか意表を突いてやりたいものだ。


 「おう、来たぜ。 こっちの男は、冒険者ギルドの……あー、名前は何だった?」


 「はい、ワタクシは、冒険者ギルドの方から来た、ズルイノ・タクランデルと申します。 なあに、決して怪しい者ではありません。 さて、さっそくですが捕まえている男たちの所へ案内を頼めますか?」


 「ズルイノさんですか。 僕はヒースです、では、案内しますよ」





 ヒースが、俺とズルイノを連れて来たのは…… ん? ここは確か穀物倉庫じゃなかったか? ……ああ、そうか、こんな規模の村に大人数を収容できる場所なんか、他に無いか。


 扉を開けたヒースに続いて中に入ると、冒険者たちが入れられていた。

 元が倉庫だから便所などは無いが、垂れ流しにされているわけでもなく、清潔に保たれている。 手枷だけは()められているが、ある程度は自由に動けるようにしてある。

 ほう? 思ったより人道的な扱いをしているんだな。

 殺しはしなくても、拷問くらいはしているかと思っていたんだが。


 「ふーむ? ……全員、ひどい怪我は無いようで何より。 ……さあ、頼みますよ」


 ズルイノが片手を上げながらそう言うと、胡散臭い護衛たちが冒険者たちの手枷を外そうとする。 ……おいおい、ちょっと待てよ。


 「待ってよ。 彼らを引き渡す前に、賠償の話をしておかないかい?」


 ヒースが口を開く。 ああ、俺もそれを言おうと思っていたんだ。 だが、その言葉を聞いたズルイノは、とんでもない事を言い出した。


 「ああ、そうでしたね。 では、何を()()()()()()()()()()()?」


 あん? コイツ、今なんつった? これは流石に口出しさせてもらう。


 「……おいおい、まさかお前さんは、冒険者の方から村を襲ったのに、村側に賠償を払えって言ってるのか?」


 「当然でしょう? 討伐対象の魔物を連れた不法移民が、任務中の冒険者を負傷させて監禁しているんですから大問題でしょう」


 「……それは、冒険者ギルド全体の見解かい?」


 第三者である俺も口出ししたくなるような発言だ、当事者のヒースは当然思うところがあるだろう。 苦い顔で口を開いた。


 「うーん…… 色々と確認したい所のある発言だね? 多分、不法移民ってのは僕らの事だよね? でも、ネウロナ王国に住むエルフの末裔は、王国民として認めるって言う声明は、先王の時に王国側から公式に発表されたはずだよ。

 あと、魔物っていうのは精霊様の事かな? 精霊様を魔物と呼ぶ事に思うところはあるけど、まあそれは置いておくとして、王国法では、人と共に暮らす魔物は、その人の財産として扱われるから討伐対象にはならないよ。

 監禁についても、自分たちを襲った襲撃者を監禁しても、それは自衛の範囲だよね? なにか問題が?」


 スラスラと語るヒースに、ズルイノは一瞬目を丸くするが、すぐにニヤリと笑った。



 「王国が民と認めたエルフは、街に住む者と森の奥に住む者です。

 ふらふらと放浪した挙げ句に王国の土地に無許可で村を作るような人達は、王国民と認められていません。 当然、そんな人達が連れた魔物であれば、安全のためにも討伐、または接収するべきでしょう?」


 討伐……それに接収ね…… コイツ、精霊様を排除か利用したいのか?

 ……それにしても、おかしいな? ギルドと国は、協力はするが、過剰に馴れ合わないのがルールだ。 なのに、冒険者ギルド側のはずのコイツが、まるで王国側の人間のようなセリフを言っている?


 俺がその事を疑問に感じながら、何気なく視線を動かすと、あの胡散臭い護衛が視界に入った。 そして、その瞬間に答えが出た。


 ……あの護衛が胡散臭い感じがした理由がわかったぜ。

 アイツら、ギルドの戦闘服を着てるのに、動きや仕草に軍属の兵士の癖があるんだ!

 おそらくアイツらは王国側の軍人で、ズルイノは王国のスパイ……もしくは最近引き抜かれたか? とにかく、王国が精霊様を目障りに思っているという事か?


 いや、ここは王国領だ、国のトップに近い人物なら、スパイなんか使わずに、もっと大威張りで命令してくるはずだ。 となると、今ここでは派手に動けない立場で、精霊様を目障りに思う人物? 誰だ?


 「そうですね、この村が所有している魔物を引き渡して貰います。それで賠償は済んだ事にしましょうか。

 素直に従うならあなた達を王国民に認める事を掛け合ってもいいですよ」


 くそっ! やっぱり精霊様が目的か! 始めから冒険者の引き渡しは、ただの交渉の切っ掛けというワケか!


 この村がこんな話を飲むとは思わないが、突っぱねて国と(こじ)れるのもそれはそれで問題だ。 ……幸い、ズルイノの理論は、俺なら合法的に覆せる。 もしズルイノのバックが、ここの領主だったらヤバいが、多分違うはずだ。 ……よし、やるか。


 「あー、悪いが俺は別の仕事があるから一旦帰らせてもらうぜ?」


 俺は立ち去るように歩き出し、すれ違う瞬間に小声でヒースに声をかけた。


 「……手を打つ。 それまで粘れ」



 俺は村の外まで来ると左腕を天に掲げる。

 ……新しく仕入れたばかりなんだが、早くも出番とは思わなかったぜ。

 だが、精霊様は俺の妻の命を救ってくれた大恩人だ、俺の持てる全てを使っても恩を返さねえとな!


 「来い! スレイプニル!」


 左腕の腕輪が砕けると共に、魔法陣が展開される。

 そしてそこから現れた6本足の馬に一気に飛び乗った俺は、即座に指示を出す。


 「さあ全速力で頼むぜ、スレイプニル! 悪いが今日は頑張ってもらうからな!」


 そう言った俺の左腕には、同じ腕輪が5本並んで輝いていた。

次回に続きます。

本当は、多少長くなっても1話で終わらせたかったんですが、

どう考えても時間的に完成が間に合わないので、今回はここまでです。

……もっと早く書けるようになりたいものです。

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