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ウッディライフ! ~ この木なんの木? 私です ~  作者: 鷹山 涼
3章ですよ 精霊姫って誰ですか?
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24話 お仕置き完了からのご注文は全裸少女ですか?

どうもこんにちは、木です。 そして、毛利 鈴(もうり  りん)です。

 2人合わせて、ウッディ・毛利です。 ……いえ、1人ですけど。


 案外できるものですねー。 本質が変わらないって言われた時点で、人間の姿にはなれないと思ったんですけど、ふと思い出した事があったんですよ。


 ディアえもんと初めて会った時に、前世で人間に生まれたのが不思議なほど、人間の適正が無いって言われたじゃないですか。

 つまり、前世でも、私の本質は人間以外の何かだったんだと思います。 だけど人間として生まれて、生きていました。 それを考えると、本質は木であっても人っぽい何かくらいにはなれるんじゃないかなーって思ったんですよ。


 で、上手くいきました。 この体なら戦えます!

 さあ、早く戦いを終わらせて…… そして! そして私はっ!!


 服を着ます!!  ……い、いやっ、全裸なんですよ、私……! 今。


 肉体的な死は避けられましたが、恥ずか死にそうです! 羞恥心が限界を突破して精神がメルトダウンを起こす前に終わらせてしまいましょう! 


 私が殴り飛ばした若頭さんは、もう立ち上がっていますが、頬は腫れて口から血を流しています。 うん、ダメージは入っていますね。 前世の私が殴ったところで無傷だったはずですし、恐らく今の体のスペックはかなり高いです。

 それに……。


 私は勢いよく若頭さんに接近して殴りかかります。

 速く動けるとは言え、私は荒事の素人です。 若頭さんは余裕で避けて殴り返して来ますが、私はその拳に、拳をぶつけました。

 ひい~、ごめんなさい! 指の骨を折っちゃったっぽい感触がっ……。


 と、とにかく、この通りまともに戦えます。 私は戦いにおいて技術も知識も足りませんけど、今の私は動体視力と反射神経がかなり優れているようで、相手の動きを見てからでも、そこに自分から体をぶつけに行くくらいはできます。

 でもって私は頑丈なのでお互い体をぶつけ合うだけの勝負なら有利です。


 体のスペックに任せて正面からぶつかるだけでアラ不思議! 意外に戦える!

 この流派を小林寺・木人拳と名付けましょうか。 あ、少林寺(しょうりんじ)じゃないですよ?

 小林寺(こばやしでら)です。 うちの近所のお寺で、習字とラジオ体操を習った事があります。


 若頭が怯んだ隙に、視界を動かして状況確認。 あ、目を離したと思われると何かされるかも知れないので、ちゃんと目玉は若頭の方を向いてますよ。


 で、状況確認してみて焦りました。 私が復活した事で驚いたのか、ちくわちゃんが動きを止めちゃってます。 ちょっ! ちょっとちくわちゃん!? ボーッとしてたら捕まっちゃいますってば!

 うむむ……危険ですけど、若頭さんに背を向けてでも助けに行くべきですかね?


 そう思ったんですが…… なんか周りの男たちの動きがおかしくなって…… あっ、膝をついたり胸を押さえたりしながら動かなくなりました? そして、それを見てから、ニヤリと笑って立ち上がる係長さん。

 うっわー、悪い笑顔です。 係長さん、何をしやがりました?


 あれれ? ということは戦況が逆転しましたか?

 相手でまともに動けるのは若頭さんだけになりました。


 ……でも、若頭さんは降参する気は無さそうですね、背負っていた例の斧を取り出しました。 そして青く光らせます。

 潔くないですねー。 でも、良いでしょう。 あなたはちくわちゃんを泣かせたんですから、もう一発くらい殴らないと許せませんし。 では、終わりにしましょうか。


 斧を構えて、一気に飛び込んで来る若頭さん。 げっ!? 今までより速いです!?

 でも、多分どうにかなります。 というか、どうにかします!


 私は左腕を斧にぶつけて、斧を弾き飛ばします。 まあ、それをやった左腕ももげて、どこかに飛んでいっちゃいましたけど。

 まあいいです。お腹がすいたら帰ってくるでしょう!

 私は左腕を捨て、右手に全力を込め、若頭さんの顔面にそれを叩きつけ……ないで、


 つま先で(すね)を狙ってキーック!


 えぇっ、そこかよ!? って顔をしながらバランスを崩した所を狙って、

 フルスイングでビンタです!! 闘魂注入! 元気ですかー!!


 若頭さんは私のビンタの威力で4回転トウループの様に華麗に回転しながら飛んで行きました。 うん。 これで許してあげますよ。


 村を襲撃して、係長さんを気絶させて、私を真っ二つにして、ちくわちゃんを泣かせて、せっかく復活した私の左腕を斬り飛ばしたんですから、それくらいで済めば安いものでしょう?


 ……んー? 冷静に考えると本当に安すぎますかね?

 うん。 やっぱりもう少しお仕置きしておくべきですね。 グリグリ。


 寝ている若頭さんの顔を踏んでおきます。 あ、気絶しちゃいましたか?


 ……ふむふむ、これで若頭さんには、

『真夜中の屋外で全裸の少女に素足で顔をグリグリ踏まれて気絶した』

 という輝かしい実績が与えられました。 お仕置き完了! 戦闘終了ですね。

 さて、と。


 私はちくわちゃんの方に歩いて行きます。


 ちくわちゃんは魂が抜けたような表情で、座り込んでいました。

 おーい、大丈夫ですかー。 ヤッホー、お姉ちゃんですよー。

 ちくわちゃんの正面に座って、可愛らしい鼻の先っちょを指でツンツンすると、徐々に目が覚めたように表情が戻っていき……


 ブフブハ!? ちくわちゃんは、ドン! とぶつかってきて、ガバチョ! と抱きついてきました。 わーお! 熱烈歓迎ですね。


 「#>めtDr2!! ペs9P0よ*ル!!に$ち!!」 


 わわわっ、スッゴい勢いで何か言ってます!? 何を言ってるかわかりませんけど、その表情には喜怒哀楽の全てがミックスされているようでした。

 ああ、やっぱり心配させてしまったようですね。 ごめんなさい。


 なにか安心させてあげる事は……。 あ、そうです! 今の、この体なら、なんとか声を出す事も出来るかもしれません! 


 なんで自信を持って声を出せると言い切れないかと言うと、この体は人間っ()()だけで、やっぱり人間とは別物なんですよ。 口はありますが、ポケット状になってると言えば良いですかね? つまり喉に繋がってません。 いえ、繋がる以前に、そもそも食道とか気管とかが無いかも知れませんね。


 なので、声を出すのは物理的に無理だと思いますが、今の私は、人間の姿をしていて、口もあります。

 少なくとも木の姿の時よりは声を出すイメージは作りやすいです。 イメージが出来れば、あとは不思議パワー先生がなんとかしてくれるかなー? くらいで考えてます。 甘い考えですか? まあ、ダメもとでやってみましょう。


 声帯はイメージできなかったので、口の奥にスピーカーがあるイメージで想像を……

 あ、スピーカーだと配線とか電気的なものが要りますか? まあ、そこは神秘の力で動くムー大陸のスピーカーとかのイメージで、そして、魂から声を出すように……!

 ゴォォォッド! ラ・ムゥゥゥー!!


 「ちくわちゃん……」


 おお、声が出ました! で、ですがっ…… なんですか、この疲労感は? 今回の戦いの疲れを全部合わせたよりも疲れるんですが……? これ以上一言でもしゃべったら倒れそうなので、またしばらくは、お口にチャックです。


 あれ? ちくわちゃんの様子がおかしいです。 あ、もしかして私の外見と声が合ってないと思いましたか?

 実は昔から自分でも違和感があったんですよねー、って…… ちくわちゃん?

 なんか一年ぶりに飼い主に再会した小型犬みたいな顔になってますよ?

  ……おおっ!? 本当に犬っぽくじゃれてきました!?


 はーい、ちくわちゃんなら私はいつでもウェルカムですよ! よしよし。


 私が頭をなでなですると、ちくわちゃんはニッコリ笑顔です。 うん可愛い。

 ですが、笑顔だったちくわちゃんの表情が凍りつきます。 どうしました?


 ちくわちゃんの視線をたどると、その先は……

 あ、私の左腕です。 左腕を見ている、と言うか、肘から先が無い状態を見ていると言うべきですかね?


 確かに、知らないと衝撃映像ですよねー、でも、実際は木の枝を腕に作り替えたものですから切断されても、見た目ほどの被害は無いんですよ。 だらだら出てるのも血じゃなくて樹液ですし。


 まあ、痛いか痛くないかと言えばメッチャ痛いですが、もともと私は無表情なので意識してポーカーフェイスを作らなくても、ちくわちゃんに痩せ我慢がバレないのは便利ですね。


 ですが、ちくわちゃんは突然立ち上がると走りだし、気絶していた若頭さんのお腹を蹴りあげました。 ボゴォン! って感じの、人間を蹴った音とは思えないような音が響いて、若頭さんの体が1メートルくらい浮き上がりました。


 ちくわちゃん!? その威力はダメですって!

 中からジャムとかアンコとかクリームとか、色々と出てきちゃいますよ!?


 その時、村の方から足音が聞こえて来て、村の皆さんが集まって来ました。 どうやら、あっちの戦いも終わったようですね。 これで誰かがちくわちゃんを止めてくれますかね? と思ったんですが、何故か誰もちくわちゃんを止めません。


 このままでは本当に殺してしまいます! 皆さんが止めないなら、私が止めないと!


 私がちくわちゃんに近寄って止めようとしても、『何で止めるの?』って言うような疑問の表情で、しかも足は止まらずに蹴り続けています。 


 な、なんとか引き離さないと……! あ、そうです!


 私は彼女の服をちょいちょいと引っ張ってから、自分の裸の胸を指さします。

 別に、『胸のサイズがお揃いですねー』とか言ってるわけではありませんよ?

 私は裸なので服を貸してくださいってアピールです。 あ、いえ。 アピールというかリアルに恥ずかしいです。 村の皆さんも来ましたし、マジで服を貸してください。


 私の言いたい事が通じたのか、ちくわちゃんは、ハッとした表情をしたあとで周りをキョロキョロ見ると、私の裸をチラ見していた男の子を発見して目潰しをかましてから、私をお姫様抱っこしてちくわハウスに連れ帰ってくれました。

 はい、ご注文は全裸少女ですか? テイクアウトでよろしいですね?


 あの、足は無事なので抱っこしてくれなくても歩けますよ?


 それと、途中で落ちていた私の左腕を拾ったのはいいですし、私を運ぶために手がふさがってるから、口にくわえるのも、まあわかりますが……


 あのっ……たまに、もぐもぐと甘噛みしてませんか? 私の腕。

主人公視点で見たこのエピソードは終了です。 

次回は、この戦闘を他のキャラ視点で書こうと思っています。

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