表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウッディライフ! ~ この木なんの木? 私です ~  作者: 鷹山 涼
3章ですよ 精霊姫って誰ですか?
37/151

23話 コンビニ妖精さんからの反撃開始

区切りのいい所があったので、そこで二話に分けました。 なので、少し短めです。

ですが、前編・後編にしないで、それぞれ別のタイトルにします。

どうもこんにちは、倒木(とうぼく)です。


 若頭さんに伐採されちゃいました。 テヘ☆


 いやー、かなり痛みに強い体でしたが、流石に真っ二つは未知の痛みでしたねー。 あのときばかりは声が出せない体に感謝しましたよー。 だって、きっと声が出せたら『ぶるあァぁ~!!』とかそう言う感じの断末魔の声が出たと思います。

 それは、乙女の死に様としてはアレですからねー。


 ああ、死に様と言えば、私は結局のところ…… 死んだんですかね?

 真っ二つになっちゃいましたし、意識は視界を飛ばしてる時と同じ、幽体離脱っぽい感覚で、体に意識を戻せません。 ん? 体が真っ二つになって意識が戻せないって、それは……幽体離脱じゃなくて普通に幽霊ですよね? 私、死にました?


 でも、死んだにしては妙な事があるんですよねー。


 ほら、アニメとかの演出で、時間が停止した時に自分だけカラーで、他は全部灰色になってる演出があるじゃないですか。


 うん。 今、まさにそれです。 時間停止ナウ。


 倒木と化した自分の体だけカラーで、ちくわちゃんや係長さん、それと若頭とかその仲間は灰色です。 ……アニメの演出みたいって思いましたけど、倒木だけ鮮明にカラーで描かれて、他が全て灰色のアニメってある意味衝撃的ですね? 見たいかどうかは別として。


 しかしこれは…… 精神的に厳しいですねー。

 ちくわちゃんが、世界の終わりみたいな顔をしたまま動かなくなっています。

 そうですか、私が死んでしまうと、ちくわちゃんの世界は終わってしまいますか。


 だったら…… 死ねませんよね。 うん。


 どうにも魂が植物の性質に引っ張られているようで、死んじゃうならそれも仕方ないですねー、みたいな気持ちもあったんですけれども……

 この子は私がいなくなってしまうと、泣いてしまいますよね。

 泣いているこの子を一人にしないって決めましたしね。 うん、死ねません。


 死ねないと言う気持ちを強く認識した辺りで、のんびりと地面に寝ている私の体の中からスゥっと赤い光の魂が出てきました。 一瞬、自分の魂が抜けてきたかと思ったんですが、じゃあ今、心の中で延々と独り言を言っている、この私は魂じゃないのか? という話になっちゃいますよね?


 となると、これはなんでしょう? と思いながら眺めていると、その赤い光はモニョモニョと形を変えて行って、やがて小さな人間の形に……あ、違います、これは人間じゃなくて妖精さんですね。

 15歳くらいですか? 貴族のワガママお坊っちゃま。 って感じの妖精さんです。


 「やあ、聞こえてるかい? ボクはオベロン。 まあ、ディアモンとは仲間というか……うん、キミに解りやすく言うと、同じコンビニの別支店の店長同士みたいな関係かな? その例えで言うならぺルルはウチのコンビニで新人研修したことがあるから、元・上司と部下の関係かなー? いらっしゃいませ! ありがとうございましたー!」


 いらっしゃいました! どういたしましてー!

 で、そのコンビニ妖精さんは、どうしてここへ? あ、念話って今、届いてます?


 「うん、そうだね! へー、ほうほう。 ……なんちゃって~♪ 会話するふりをしてみたけど、残念無念! 実はこれは録画映像でしたー!! イエーイ!

 さあ! 遠慮なく笑って笑って♪ 笑顔は大事だよー?」


 うわ! この人ウゼェです。 かなりウゼェです!! 大変にウゼェです!!

 うん、なんだか友達になれそうな気がしますね! 直接お会いしたかったです。


 「とまあ、場が(なご)んだところで本題にいこうか。 キミは以前、ぺルルにお守りをもらって体に埋め込んだよね? 今の状態はそれの効果さ。 危険が訪れて、その時にキミが、まだ死ねない! って強く願うと発動するようにした。

 つまりこれが発動しているって事は、キミは今、死にそうなピンチの中にいて、死ぬわけにはいかない! と強く願っているね? そんなキミにチャンスをあげよう。」


 そう言って、ビシッと私を指差すコンビニ妖精さん。 あ、それぺルルちゃんがたまにやるポーズですね。 もしかして、この人が元祖でしたか?


 「キミを、今すぐに復活させる。 この場ででもいいし、今、キミに訪れている危険から逃げるなら、少し離れた所で復活させてもいいよ。

 キミは見ていて実に楽しい。 だから、もうしばらく生きて、ボクに笑いを提供してよ」


 ウホっ! 『笑いを提供して』とは、胸がキュンとなる素敵な殺し文句ですねー?

 も、もう…… 少しだけ、ときめいちゃいましたよ~?


 「で、大事な話だ。 これからキミの体を再構成する時、キミのイメージで体を作り替えることができるんだ。 ただ、何にでも自由に変われるって訳じゃないよ? キミの本質は木だ。 それは変えられない。

 もちろん要望が無いなら無いでいいよ? 今までと同じ姿で再生させるからさ。

 さあ、イメージを思い描いて、心でトリガーを引くんだ。 それで時は動き出す」




 体を作り替えて再構成……とは、また恐ろしいワードですが、今の私には、ありがたいサービスです。

 この状況を変えるには、新しい何かが欲しい所ですからね。


 ……自分で動けない体では駄目です。 いざと言うときに逃げる事が出来なくては、復活してもまたやられちゃいます。 ですが、本質は変わらないという事は変身ヒーローや巨大ロボットは無理でしょうねー。 強そうなんですけど。

 んー、私の本質であり。 強い…… いえ、強くなくても良いので、せめて危険から身を守れる体。


 ……あと、ちくわちゃんやぺルルちゃんと触れ合える体がいいですね。


 イメージが固まって来ました。 うむむ……でも、これはアウトですかね? 私の感覚としてはギリギリで行けそうな気がするんですけど。 うん、OKです!

 OKな事に決めました!


 後は、このイメージを強く思い絵描いて、 ……トリガーを引きます!


 私の頭の中の、織田軍鉄砲隊が火縄銃を発射すると、時が動き始めます。

 ……この人はいつから私の頭の中にいたんでしょうか? まあ、いいです。


 泣かないでくださいね、ちくわちゃん! 今、お姉ちゃんが帰りますから!




ーーーーーー




 「あwE#!! ヌ7yCっ!!!」


 ちくわちゃんの声です。

 ちくわちゃんが、血を吐くように叫んでいます。

 ああ、帰ってきて良かったです。 こんなに辛そうに泣き叫ぶちくわちゃんを、放ってはおけませんし。


 どうやら私の意識は倒木の中に戻っているようですね。

 んー、説明しにくい感覚ですが、体の内側で変化が始まっている感覚があります。

 ……多分もう少しです。


 私は、視界だけ動かして、周りの状況を確認します。


 ちくわちゃんは暴れています。 取り囲まれていますが、あの翼には相手を吹き飛ばす効果でもあるんでしょうか? 振り回す毎に周りの男が怯むので、そのお陰でちくわちゃんは取り押さえられてはいません。


 ぽっちゃり係長さんは、まだ気絶して…… おや? あなた今、薄目を開けてませんでしたか? ……もしや、死んだフリしてます?


 そして私のそばにはあの若頭がいて…… なんか、ナイフみたいな物を取り出しましたが…… あなた、まさかこれ以上私に攻撃する気ですか!? 乙女の体を何だと思っているんですか!?


 それを見たちくわちゃんは、さらに叫びます。


 んー、なんか腹が立って来ましたね? 私は木ですから、人間の都合で切り倒されることもあるかな? って覚悟してた所もありました。

 実際、この若頭さんも仕事として私を切ったんでしょうから、それはいい…… あ、いえ、良くないですが、まあ諦めきれたんです。 木としての価値観ですかね?


 ……でも、ですね?

 今、ちくわちゃんが泣いているのは、この人のせいですよね?

 私の自惚れでなければ、私が死んだら、ぺルルちゃんも泣くと思います。


 あれれ? じゃあこの人は、私の大切な友達を悲しませる人って事ですか?


 殴ってOKですよね? 訴えられても余裕で勝てる気がします。

 いえ、訴えられて負けるとしても、殴ってOKですよね?

 幸い、体の再構成は、終わっています。


 それでは…… 殴りましょうか!!



 私は、私の体だった木を内部からぶち破って跳び、正面にいた若頭さんの顔面を

 ()()()()()()で殴りつけ、

 ()()()()()で着地して、

 ()()で相手を睨み付けます。


 相変わらずの小さい体ですが、ちゃんと戦闘能力はあるようで安心しました。


 どうもこんにちは、毛利 鈴(もうり  りん)です。

 さあ、反撃を開始しましょうか!

久しぶりに主人公の本名が出ました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ