22話 決戦からの……
投稿予定時間ギリギリの完成です。
見直しが甘いのでミスがあったらすみません。
時間がある時に見直します。
↑
後日、見直しました。 やはり何個かミスがありました。
気づいたものは直しましたが、まだあったらすみません。
どうもこんにちは、木です。
ワサワサ ワサワサ ワッサワサ
現在、私は困惑しております。
気分的にはあたふたしているんですが、あたふたというのを木の体でどう表現するべきか答えが出なかったので、あたふたの代わりにワサワサしています。
とりあえず語感は似ているのでOKかなと。
ちくわちゃんが天使の寝顔でお昼寝をしていまして、
それで目の保養とばかりに、それはもうじっくりと観賞していたのですが、
突然ちくわちゃんが、ガバチョ! って跳ね起きて泣き出しちゃいました。
も……もしかして、私の視線がねっとりと気色悪くて目が覚めましたか!?
っとか思ったんですが、なんかマジ泣きな感じなので違いそうです。
……いや、まあ、私の視線が圧倒的に気色悪くてマジ泣きという可能性もあることはありますが、そこまで気色悪くは無い……と信じたいです。
……ちくわちゃんは私にしがみついて号泣しています。 この子が声を上げて泣くのは初めて見ましたね。 ……こう言うときは、人間の体が羨ましくなります。
木の体では、抱きしめて温もりを与えてあげられません。
枝や蔦で頭を撫でても、人の手のひらほどの安心感は与えてあげられません。
ぺルルちゃんも困惑して、意味もなくクルクル飛び回っています。
ああ、そうですねー、私もぺルルちゃんも、ちくわちゃんを、言葉で励ますこともできないし、何が辛いのかを聞いてあげる事もできないんですね。
……あーっ、これは……かなりの無力感です。
私はこう言うとき、大した事はできないようです。
うん……大した事はできませんけど、でも、そばに居ますからね?
泣いているあなたを1人にしておくような事はしませんよ。
しばらくすると、ちくわちゃんの気持ちも落ち着いたようです。
声を出して泣いてしまったことが恥ずかしいのでしょうか? ほっぺたを赤くして、居心地が悪そうに視線をあちこち動かしています。
「もう大丈夫そうね、私は、貴方が魔力の浄化に成功した事と、
その過程でできたその花の件をディアモン様に報告しなきゃいけないから、
一度妖精界に戻るわ。 その子の事は頼むわね?」
ぺルルちゃんは、そう言って、転移魔法で消えました。
おや? ちくわちゃんが、目に見えてビックリしていますね?
……あっ、そういえば今までぺルルちゃんが里帰りする時って、ちくわちゃんが寝てる早朝ばっかりでしたね。 転移魔法を初めて見て驚いちゃいましたか?
……んー? なんかそう言う驚きじゃ無いっぽいですね?
……もしかして…… 純粋にぺルルちゃんが突然いなくなったから動揺してます?
ちくわちゃんは焦ったような顔でキョロキョロしています。
あー、ビンゴですかね? これは本気でぺルルちゃんを探してる感じです。
ぺルルちゃんが時々いなくなるのは知っているはずなんですけど…… なんだか、随分とナーバスになってませんか? 心配ですね。
私は、枝に柔らかい葉っぱを繁らせ、それでちくわちゃんの頭に軽くポンポンと触れてあげました。 すると、徐々に落ち着いていつものちくわちゃんに戻ってくれたようです。
……ですけど、今日のちくわちゃんは何か様子がおかしいですね? んー、お昼寝の後からですから…… よっぽど怖い夢でも見ましたかね?
よしよし、お姉ちゃんが一緒にいてあげますからねー。
ーーーーー ヒース視点
「今日はムスカリが留守だから、見回りはローズさん、あとはカクタスとナーシサスの三人一組で頼むよ。 僕もいつもより感知を小まめに使うから、それで何か気づいたら知らせるよ」
ローズさんは冒険者ギルドの魔導師になっても食べていけるくらいの実力はあるし、あとの二人も、まあ駆け出しの冒険者や兵士よりは強い。 ある程度の魔物なら問題は無いだろう。
「……むしろ、魔物じゃなかった時の方が危険かな?」
この村の住人は優しくて善良で……そして甘過ぎる。
安住の地も持たず、各地を転々としながら貧しい生活をしてきて、それなりに人の悪意にも触れてきたはずなのに、そのわりに他人を疑わない。
魔物なら殺せばいい、でももし悪意を持った人間相手なら、どこまで対処できる?
今回も、すでに疑うべき事はある。 旅人は、なんでムスカリに声をかけた?
ムスカリは、あくまで村を守る戦力だ。
村から離れた場所で他人に何かがあっても戦う義理も義務も無い。 そんな人間に盗賊退治を頼む時点で怪しい。 頼まれて動いたのは、偶々ムスカリがそう言う性格だったからだ。
いや、ムスカリがそんな男だと知っていて声をかけたと考えるべきか?
なら目的は戦力の分散かな? 狙いは村? それともムスカリ個人かな?
全ては僕の考え過ぎで、何事も無く平穏に終わる。 それが一番だけど……
念のために色々用意しておくか。 うーん、材料は全部揃ってたかな? 急いで作らなきゃ。
「よし、これくらいあれば良いかな?」
一定時間ごとに感知魔法を使いながらの製薬作業は、やっぱりかなり疲れるね。
でも、これだけ用意すれば、今の状況で想定できる中で最悪の相手じゃなければ大丈夫かな?
流石に村人全員分なんて作れなかったから、戦えるメンバーだけにでも配ろうか。
ーーーーー 木(主人公)視点
今日は甘えん坊モードのちくわちゃんと、イチャイチャして過ごしていました。
そこだけ見たら悪くない気もしますが、やっぱり不安そうなちくわちゃんを見るのは辛いので、いつも通りなのが一番です。 ……さあ、もう夜ですね。
今日は一緒に寝たほうが良いですかね? あの時みたいにハンモックを作りましょうか。
「$り9gV2#み!!」
その時、突然ぽっちゃり係長さん何か叫びながらが乱入して来ました。
むむっ! 私とちくわちゃんとラブラブタイムを邪魔する気ですか!?
係長から降格しますよ!? 係長代理第5補佐とかにしますよ!?
ぶっちゃけただの平社員ですよ!? いいんですか!?
私の頭の中のパワハラ人事部長が発狂し始めていますが、よく見るとちくわちゃんも係長(降格予定)さんも真面目な顔をしています。
……おや? もしや不真面目なのは私だけですか?
! ちくわちゃんが鉈を持って来ました!? 何かが起きているんですか!?
蠢け! 私のF P S !
っ! 20個くらいの反応が近づいて来ます!? 魔物ですか? それとも人?
もう少しで村まで来ちゃいますけど、まず魔物か人間か判別しなくては、人間にいきなり、ブッ放す訳には『ドゴォーン!』いきなりブッ放しましたー!?
ちくわちゃんが、なんか形がボンヤリとした投げ槍みたいなヤツを投げたら、着弾地点に衝撃波みたいなのが起きました。 え? え!? こっ、攻撃しちゃっていい相手なんですか!?
係長さんが指示をだして、それを聞いたちくわちゃんが二発目を作り出しています。
これってガチで戦闘してる感じです? えーっと、じゃあ私もやったほうがいいですか? ……では
私のイタズラ心を詰め込んだ魔改造ヤシの実を作ります。
ん~っ、よし! 完成! お久しぶりです! ココナッツクラーッシュ!
私はF P S の反応を目印にしてヤシの実を投げまくりますが、目視できない距離なので、当たっているかがわかりません。 んー数射ちゃ当たりますかね? 続けて適当にブンブンと投げまくります。
うむむ、当たっているかわからないのは不便ですねー。 目視できるだけ距離なら……って、別の方向から来てます!? あ、あれ? F P S に反応が無いのに、すでに目視できる場所まで来ていますよ?
なんかハリウッドのアクション映画に出てくる、微妙に勘違いした忍者みたいな人が、もうそこにいます! 忍者というか、Ninja って感じの怪しい人物です。
夜の闇に隠れて、10歳くらいの美少女に高速で接近するNinja 。
これは……多分、殴ってもOKですよね? 訴えられても余裕で勝てる気がします!
私に1人と、ちくわちゃんの方に1人が向かってきていますが、ちくわちゃんも係長さんも気づいて無いようです。
ちくわちゃんが危ないです! ヨガ~ ヨガ~ っと枝を伸ばして……
慎重に高さを調整して~、 フルスイングです!!
私は長く伸ばした枝を、ちくわちゃんの30センチくらい上の高さでスイングしてNINJA の頬にビンタをかましました。 闘魂注入! 元気ですかー!!
Ninja・A はビンタの威力でトリプルアクセルのように華麗に回転しながら飛んで行きました。
やり過ぎました? っと心配になった私の体に、突然衝撃が。 はうあっ!?
そっ……そうでした、Ninja ・Bもいましたね。 まあ、ちくわちゃんが無事なら私が一発どつかれるくらい安いものです。
視界を動かして自分の体を確認すると、明治の剣客みたいな十字キズが!!
拙者、伝説の人斬りじゃありませんからー! ……残念! ジャジャン!
ビックリしたショックで、最初に思い浮かんだ人とは別のサムライが混ざってしまいましたが、ダメージは大したこと無さそうです。
ですが……。 この人たち、本気で斬りに来てますね。 ……私を殺しても良いことないと思いますよ? 今の攻撃は見逃しますから、仲良くしませんか?
なんとか休戦できないかと思いながらNinja ・Bの方を見ると、ちくわちゃんが般若のような形相で鉈を振り回していました。 剣がへし折れて服もボロボロになりながら、Ninja ・Bは逃げ去りました。
良かったです。 ちくわちゃんが人殺しにならなくて。
でも、まだ敵は残っていますから、気は抜けませんね。 反応を確認すると、この人たちは村の中にも入り込んでいるようです。
なるほど、これだけ騒いでも誰も来ないから変だと思ったら、村にも来てましたか。
村の皆さんの反応が減っていない所を見ると、この人たちは村の皆さんに対して死ぬような攻撃はしていないようです。
私への攻撃が剣、ちくわちゃんを狙ったNinja は素手だった事を見ても、村の皆さんを殺す気は無さそうですね。 完全に目標は私ですか。
……もう敵は全員近くまで来てますね、この人たちはズルいと言うか巧いと言うか……
ちくわちゃんが派手な魔法を撃とうとすると、ちくわちゃんから見て私のいる側に来るんですよ。 当然ちくわちゃんは私を巻き込むと思って魔法が使えなくなります。 私も攻撃をしていますけど、ヤシを投げるには近くて枝で殴るには遠い微妙な場所にいられて、攻撃し難いです。
この事態を動かしたのは、意外にも係長さんです。
敵に接近された係長さんは『やれやれ』って感じの苦笑いをしたあと、
懐から怪しいお薬を出して、グイっと行きました。 すると、係長さんは……
目を血走らせて、吠えながら凄い速度で暴れ始めました。
あ、あの……そのお薬って…… いえ、なんでもないです。
……でも戦いはすでに決まっていました。
どうやら、この人たちは前に一度村に来た冒険者さんだったようです。
以前見たことがあった、あの若頭っぽい人が現れて係長さんを気絶させてしまうと、それを見て動揺したちくわちゃんは4人に一斉に取り押さえられました。
乱戦になってしまうと、細かい動きのできない私はまともに攻撃できません。
二人が動けなくなった今なら巻き込まずに攻撃できるかもしれませんが、人質がいる状態で暴れてもなにも好転しないでしょう。
……ここまで……ですね。
一度死んだあとのオマケのような命ですが、素敵な出会いがありました。
うん、なかなか幸せでしたねー。
若頭さんが背負っていた斧を取り出しました。
何かの魔法の道具でしょうか? 若頭さんが一度素振りをすると、刃が青く光りました。
「ゆd1wE$……」
若頭さんが申し訳無さそうな顔で何を呟き、斧を構え、私に向けてそれを……
「dt2xbBの*!!」
なにかを叫んだちくわちゃんの背中に突然翼が現れました!?
羽ばたいた瞬間に周りの男たちを弾き飛ばして、物凄いスビードで飛んで来ます。
ダメです! 間に合え! 間に合え!!
私は、自分に出来る最速で枝を振りました。
高速で飛び込んで来たちくわちゃんは、私をかばって斧の軌道に立ちはだかります。
ところがギッチョン! そうは行きませんよー。
ちくわちゃんの行動を予測していた私は、枝で彼女を振り払います。
もー、私の身代わりになろうなんて、ちくわちゃんは本当に天使ですねー。
白い翼を背負った、まさに天使のような愛らしい姿を目に焼き付けながら、
私の体は、両断され、ゆっくりと倒れて行きました。
ちくわちゃんはスペック的には、敵よりかなり上ですが、経験不足で、相手は格上と戦うのに慣れているのでこう言う結果になりました。 もし、仲間や村ごと消し飛ばす気になれば、ちくわちゃんの勝ちでした。