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ウッディライフ! ~ この木なんの木? 私です ~  作者: 鷹山 涼
3章ですよ 精霊姫って誰ですか?
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21話 ある夢の景色からの迫り来る戦いの夜

どうもこんにちは、木です。


 またこの挨拶を言えることを嬉しく思います!

 いや~、ぺルルちゃんが言うには、実は私は精霊さんだったそうです。 ですが本質的には木なので、私は木って名乗って良いそうですよ。


 はあ、良かったですよー。 だって、想像してみてくださいよ。

 どうもこんにちは、精霊です。

 って名乗るのは自意識過剰な不思議ちゃんって感じがしませんか!?

 それに対して、いつも通りに、どうもこんにちは、木です。

 って名乗るのは、奥ゆかしい不思議ちゃんって感じがして(おもむき)があるような……

 って、あれ!? どちらにせよ私、不思議ちゃんですか!?


 ぺルル・ワタシ・フシギ?・フッシギシギ・マーカ・フシーギ・ルーワ?


 「まあ不思議ではあるわね、でも、どちらかと言うと奇天烈(キテレツ)って感じ?」


 キテレツなりか? それはそれでどうなりか?


 「まあ、貴方の自己評価はいいとして、……これってどうなってるのかしら?」


 ぺルルちゃんが指を指したのは、咲き誇る花畑の中で眠る天使、ちくわちゃん。

 確かどうなってるんでしょうね? この天使…… ちょっと天使過ぎやしませんか?


 「……念のため言っておくけど、その子の事じゃなくて、周りの花の事よ?」


 ありゃ? そっちでしたか。 でも、何かおかしいでしょうか?


 「創造魔法はイメージがしっかりしてるほど、創られた物もしっかり具現化するのよ。ほら、綺麗、清らか、純粋なんて漠然としたイメージを形にしなきゃいけないから、魔力の浄化の課程で創られたものは大抵すぐ消えるんだけど、この花って丸1日経っても消えてないから、なんでだろうって」


 なるほど、イメージの強さがこの花の存在の強さになっているんですか。

 うん、ならそう簡単に消えないと思います。 だって、この花のイメージは……


 ハナ・イメージ・チクワ・&・ぺルル・キエナイ・キット・キエナイ


 「! な、なに? 綺麗、清らか、純粋のイメージで私!? なにをっ……もう」


 シャイな反応いただきました。 あわあわ動揺するぺルルちゃんも可愛いです。


 でも、鈴蘭……ですか。 この花は本当に二人のイメージの通りに創れましたね。

 二人の髪の毛の色だと言うのもそうですけど、鈴蘭の花言葉は、『純粋』

そして、『再び幸せが訪れる』です。

 一度死んだ私に、この世界が与えてくれた幸せの象徴ですよね。 この二人は。

 うん、本当に二人のような花…… なんですが。


 ……たしか、鈴蘭って毒草なんですよね~。




ーーーーー フリージア視点




 あっ……今、私は夢を見ている。


 目を開くと、私の周りには黄金の鈴蘭が咲き誇っている。

 とても綺麗な精霊様の花だ。 実際に今も精霊様の周りに咲いているはず。

 だから最初は、これは現実の景色かな? とも思ったけど、違う。 これは夢だ。


 だけど、素敵な夢。


 とてもよく晴れた青空の下、周りには一面に黄金の鈴蘭が咲いていて、

 優しくて爽やかな風が吹くたびに甘い香りが漂って来る。 

 私はこの夢の中を探検したくなった。 だって、とても綺麗な世界だから。


 黄金の花畑を歩き続けると突然強い風が吹いて、揺られた花からは、たくさんの小さな光の粒が舞い上がる。 綺麗……! 

 そして次の瞬間には、その光の粒は蝶々の群れに変わって舞い踊る。 あっ! 蝶の中に、あの妖精がいる! ちっちゃくて、食いしん坊で、そのくせ、時々お姉さんぶった表情をする、そんな私の友達。 うん、友達って呼んでもいいよね?


 あの子は笑いながら私に手を振ったあと、左手を腰にあてながら、右手の人差し指を、ビシ! と前に伸ばす。 あははっ、そのポーズ、たまにやってるよね。


 私があの子の指差す方を見てみると、そこには、ポツンと立っている女の子がいた。


 量が多くてワサワサした感じの黒髪は、背中くらいまでの長さだ。

 身長とか体格は、私と同じくらいかな? うん、私と同じで色々と小さい。

 目つきはトロンとしてるのに瞳はキラキラしてて、眠そうにも見えるし、シャキッとしてるようにも見える。

 鼻は小さくてぺったんこ。 遠目だと鼻が無いように見えるかも?

 口も、小さくて唇が薄い。 うん、鼻と口が目立たないから、特徴的な目がさらに強調されて見えている。

 人形のように無表情なのに、冷たい印象はまるで無い。


 この子は……多分。


 「精霊様……だよね?」


 今までも時々、精霊様の木のそばに小さい女の子がいるような気配を感じたことがあったけど、本当に女の子だったんだー。 あっ、でもこれは夢だから、この精霊様の姿も私の勝手なイメージかも?


 精霊様は突然両手を広げてゆっくりと羽ばたき始めた。 あっ! これって枝をワサワサ振るときの動きだよね? あははっ! 小さい女の子の姿だと、すごく可愛い!


 綺麗な花に囲まれて、女の子の姿になった精霊様が、すぐそばにいる。

  幸せな夢だ。 うん、凄く幸せな夢だった。 ……ここまでは。


 視界が、赤く染まっていく。


 周りに咲いていた花が一斉に燃え上がり、周囲は炎に包まれて行く。

 私は叫んだ。 ……叫んだつもりだった。 でも、なぜか声が出なかった。 

 気づくと、私は武器を持った人影に囲まれている。

 顔はボヤけて見えないけど、全身から漏れる殺意は、ハッキリ伝わって来た。


 戦わないと! そう思ったのに、体に力が入らない。

 棒立ちになった私に刃が降り下ろされた、その瞬間。


 精霊様が私をかばうように抱きしめた。


 そして、その無防備な小さな背中に、刃が……!



 「嫌あぁぁーっ!!!」


 私は自分の悲鳴で目を覚ました。 夢だよね!? 今のは、ただの夢だよね!!?

 いつも通りの、木の姿の精霊様を視界に捕らえた瞬間、私の体は勝手に駆け出して、精霊様に飛び付いた。 大丈夫! 精霊様は無事だ!


 「精霊、様……う、うぐっ……」


 夢が怖かったから? 精霊様の無事を確認できたから? わからないけど、私は泣いてしまった。 むぅ…… 私は大人のレディなのに、涙がとまらない。


 突然泣き出してしまった私に困惑しているのか、精霊様は、いつもの3倍くらいの速さでワサワサしているし、妖精は心配そうな顔で、私のまわりをクルクル回るように飛んでいる。 ……心配させてごめんね。


 精霊様も妖精もここにいる。 いつもの通りだ。

 大丈夫だよね? 何も起きないよね?


 不安に揺れる私の心を表すかのように。

 黄金の鈴蘭は、風に揺れていた。




<ーーーーーーー





その時、事態は既に動き始めていた。 


 1人の旅人が、村の入り口に立っていた。

 その旅人は、村の住人が初めて見る顔だったが、そもそもこの村の住人も最近ここに流れて来たばかり。 言ってみれば少し前まで、よそ者だったのだ。

 知らない人や物があって当たり前だから、それを過剰に疑うような事はしない。

 更に言えば、今、その旅人の対応をしている男は、あまり他人を疑う性格では無い。


 「なに? 盗賊らしき人影だと!?」


 筋肉質な青年は、額にシワを寄せて聞き返した。


 「ええ、少し南に行った所に岩場がありますよね? あそこで武装した集団を見ました。 冒険者が何かの仕事をしていたのかも知れませんが…… それにしてはコソコソしていたような気がします。

 ムスカリさん。 あなたがこの辺りの治安を守っていると聞いたので、報告したほうがいいかと思いまして」


 「……ふむ、少し待ってくれ、ヒースに相談して来る」

 「いえ! もう時間が無いかも知れません!」


 信頼する友人に助言を求めようとしたムスカリだが、旅人の言葉に足を止めた。

 

 「時間が無い? それはどう言う意味だ?」


 「実は私は、途中で裕福そうな家族連れが乗った馬車を追い抜いたんです。 あの馬車はそろそろ例の集団の居場所に差し掛かるころでしょう。 もしも、あの馬車がターゲットだとしたら……と思いまして」


 ムスカリは、自分が戦士であることに誇りを持っている。

 そして戦士とは、戦えない者を守るための剣であり盾である。 などと言う、王都の聖騎士ですらただの名目だと、冷ややかに嘲笑(ちょうしょう)するような綺麗事を、

 本気で信じているような男なのだ。


 今この瞬間にも、罪もない者に理不尽な暴力が降りかかっているかもしれないと聞かされれば、黙ってはいられない。


 「カクタス! 俺は、その盗賊らしき人影を確認してくる。 ヒースか長老に伝えておいてくれ!」


 ムスカリは、近くにいた青年に声をかけると村の外へ駆け出した。

 馬は使わない。 ムスカリは全力を出せば馬より速く走れるからだ。


 「そこまでは案内しますよ。 さあ、行きましょう!」


 そして旅人も村を去った。

 ……その口元に、ほんの一瞬だが、笑みが浮かんだ事に気づく者は、いなかった。




 同時刻。 村から離れた林の中に複数の人影が動いていた。

 そして、1つの人影が呟く。


 「剣で斬り合うだけが戦いじゃ無いんだぜ? てめえは魔物と戦うのは慣れてるだろうが、こう言う手は慣れてねえだろう? なあ、ムスカリよ」


 そこに小男が駆け寄る。


 「なあ、リーダー。 主力を分散させるのはいいけど、俺たちが、こんな遠くに陣取る意味はあるのか? 攻め入るのに時間がかかっちまうんじゃあ?」


 「アホ、思い出せ。 オレたちが初めて村に行った時も、ワイバーンの時も、村の対応は早かっただろう? 多分、感知の得意なヤツがいるはずだ。 近くに陣取ったりしたら、バレて警戒されるぞ。 日が落ちてから一気に行軍して、夜の内に終わらせるぜ。」


 その声を受け、集団は各々(おのおの)に戦いに備えながら、夜を待った。

今回、主人公(人間バージョン)の詳しい外見描写がありましたが、人間の基準では10歳くらいに見えると言われた事があるちくわちゃんに、自分と同じくらいの体格と言われてしまう主人公……。

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