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ウッディライフ! ~ この木なんの木? 私です ~  作者: 鷹山 涼
3章ですよ 精霊姫って誰ですか?
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19話 ちくわ感謝祭からのアホの子認定

今回は日常回です。


どうもこんにちは、木です。


 現在、ちくわちゃんとぺルルちゃんの二人は、私の蔦のブランコで遊んでます。


 二人とも魔法が飛び交うファンタジーな環境に育ったので、ブランコなんかスリルが足りなくて面白くないかも? という心配もあったんですが、普通に楽しんでくれてるみたいで何よりです。

 やはり、こういった物の楽しさというのは理屈では無いのかもしれませんね。


 さて、次は何をしてあげましょうか? 今日は、私の中の姉力(あねぢから)をフルに発揮してちくわちゃんに奉仕するつもりですよ。 名付けて、ちくわ感謝祭です!


 なぜ急にそんなイベントを開催したかというと、ご苦労様会みたいな意味があります。

 昨日、ちくわちゃんはワイバーンと頑張って戦いました。

 しかもぺルルちゃんが言うには、私にフンを落とした事への制裁のために戦ったんだそうです。


 私のために危険な事をしたと考える複雑ですけど、それでも私のために怒ってくれたと言うのは嬉しいですし、それに…… 

ぺルルちゃんが言うには、私のあげた林檎がちくわちゃんの心に影響を与えてしまったそうです。 だけどぺルルちゃんは、その事に罪悪感を持つより一緒に楽しく遊ぶほうがちくわちゃんも喜ぶ、と言ってくれました。 そこでこのちくわ感謝祭です!


 当然ぺルルちゃんにも日頃の感謝を込めて奉仕してあげたいのですが、


 「わっ、私は別に…… ほら、貴方をサポートするのは仕事だし?」


 とか言い出して、素直にお礼を受け取ってくれないので、あくまでも、ちくわちゃんためですよー、って言う名目でぺルルちゃんも楽しませてあげるつもりです。

 単に私が二人を()でたい、と言うのも大いにありますけどね。

 さて、色々と思いついた事もあるので試して行きましょう。


 女の子の楽しみと言えば、やはりオシャレとグルメと恋バナですね!

 恋バナは…… 自由に会話が出来ない時点でパスですね。 もし会話出来たとしても、私の好きな人を言っても二人は知らないでしょうし。


 ちなみに前世で最後に好きになった男性は、某・有名格闘ゲームに出てくる、ロシアのプロレスラーです。 でも二人に、ほらほら、あのボタン3つ同時に押すと回る人ですよー、とか語ってもちくわちゃんには通じないでしょう。 ぺルルちゃんは地球の知識がありますが、格闘ゲームを知っているかは微妙ですし。


 ということで、今回はオシャレとグルメをテーマにして行きましょうか。

 前世の私はジャージでジャンクフードの生活だったので、実はその分野の経験値も低いのですが、まあどうにかなるでしょう。

 グルメ……と言うほど大層なものでは無いかも知れませんけど、食べ物系で今まで試していなかったことがあります。 私は食べられる実を創れますし、枝や葉っぱの形も変えられます。

 なので応用すれば食べられる葉っぱとか創れませんかね?


 回復効果とかも配合できるかもしれませんが、『元気になる葉っぱ』というのは字面がよろしくないのでやめます。 今回はあくまで飲食用、つまりお茶とかハーブ系ですね。


 んー、まずは…… ちくわハウス内に視界を飛ばします。 ちくわちゃんの見られたくない姿を目撃するのを避けるために、今まであまりやらなかったんですが、本人がここにいる以上、中でラッキースケベが発生する心配はありませんし。

 あ、いえ、そもそも同性の裸を見て、特にラッキーとは思いませんけどね?


 はい、視界だけお邪魔しまーす。 あまりじろじろ見るのも良くないので、目的の物だけ探して…… ふむふむ、見つけました、お鍋と薪です。

 蔦を、うにょーんと伸ばして持ってきます。 それから~ ……あっ、水と火をどうしましょう? 今日は私がホスト、二人がゲストというつもりだったので、手伝って貰うのは気が引けるんですが、ぺルルちゃんにお願いしましょう。


 最近は、困った時のぺルルちゃん。 みたいになってる感じがあるので、頼りすぎないようにしなければいけませんねー、と思いながらもお願いしちゃいます。


 ぺルル・ナベニ・ミズ・マキニ・ヒヲ・ココロニ・アイジョウ・エド二・エドジョウ


 「鍋に水を入れて火にかけるの? 愛情と江戸城は意味不明だけど。特に江戸城」


 ぺルルちゃんが魔法で水と火を用意してくれます。

 妖精さんの魔法のお水って商品名で出したら売れるかもしれませんねー、なんて事を考えながら私は葉っぱの成分を作り替えます。 おお? 結構なんとかなりそうな気配ですね? 折角なので色んな葉っぱを用意してみます。


 丁度お湯も沸いてきたようなので葉っぱを投入しましょう。 ワサワサ


 しばらく待って、お湯に色が出てきたら完成です! ちくわハウスから木製のカップを持ってきて二人に渡します。 さあ召し上がれ!


 「こっ……これを飲めと!? いえ、やろうとしてる事は理解したわよ? 色んな葉っぱを創ってハーブティーにしたいのよね? でも、ハーブの配合とか分量とか、絶対に何も考えて無いわよね!? 適当にワサワサ入れてたわよね!?」


 え? お茶って分量とかあるんですか? 葉っぱを煮込んで完成じゃないんでしょうか?


 「もう、わかったわよ。 とりあえず味見してみるわよ」


 そう言ってお茶を口に含んだぺルルちゃんは、次の瞬間に吹き出しました。 

 なんか悪役プロレスラーの毒霧攻撃を思い出す光景でしたけど……

 もしかして美味くなかったですか?


 「いっ……色んな味がお互いに引き立て会う事も譲り合う事なく、一斉に前へ前へと全力疾走して来るわ。 まさに貴方の心を抽出したかのように奇々怪々な味ね……」


 えっ!? 私の心って奇々怪々ですか!? 

 あれ? でもちくわちゃんは恍惚(こうこつ)とした表情で凄く美味しそうに飲んでますけど?


 「あー…… その子は多分、味覚じゃなくて魂で味わってるんだと思うわ。……貴方のエキスを」


 ぺルルちゃんは、手遅れね……とでも言いそうな顔でちくわちゃんを見ていました。



 今回は結論からいうと、大失敗でしたね~。

 そうでした、私は材料は創れますけど、加工できるかは別の話です。

 素直に果物の盛り合わせを用意したほうが喜ばれたかもしれませんねー。



 さて、それではオシャレのほうで挽回しましょう。 挽回は大事です。

 バンカイは隊長になるために必要な技術だと聞いたことがありますし。

 あれは刀を持った死神がたくさん出てくるお話でしたっけ?


 私は隊長でも死神でもありませんけど、頑張りましょう。



 次はオシャレですね。

 私自身はオシャレに縁がなく、ジャージと制服と着ぐるみと全裸をローテーションしてましたが、美的センスは悪くないはずです。

 ……あっ! 誤解しないでくださいね? 全裸は自室内だけですよ!? 外出するときは、ちゃんとジャージか制服か着ぐるみを着て外出してましたから、乙女としてセーフです。 着ぐるみで行くのも近所のコンビニくらいまでですし。


 おっと、今は前世の私の服装より、二人のオシャレについてでしたね。


 オシャレと言っても、服そのものを作るという話ではありません。

 花や実で二人を飾り付けしてあげようという計画です。

 さあ、まずは実を創りましょう。 今回は食べるためじゃないので、カラフルで小さくて硬いビーズのような実を量産します。

 で、完成品はパラパラと落として、とりあえず山にしておきます。


 そして次は、花ですね。 これもカラフルなものを何種類か創って……。


 材料は揃いました! あとはこれを組み合わせてアクセサリーを……おや?

 上手くくっつきませんね? うむむ?

 もっとこう、ペンとパイナップルとアップルとペンをくっつけるくらいにスムーズかつリズミカルに融合されると思ってたんですけど、意外と難しいですね?


 苦戦する私を見てぺルルちゃんが呆れたような顔をしています。


 「やりたい事はわかったけど、蔦で細かい細工をするのは難しいと思うわよ? 私に任せなさい」


 そう言ってぺルルちゃんは、実や花を繋げて手際よくティアラやネックレスを作って、ちくわちゃんを飾り付けして行きます。 ……ぺルルちゃん、器用ですねー。


 それを見たちくわちゃんも、お返しとばかりにアクセサリーを作ろうとしているようですが、完成するのは残骸と絞り汁ばかり。 ……うん、ちくわちゃんは不器用(私の同類)なようですね、更に親近感を持ちました。


 そうこうしている内にぺルルちゃんのテクニックでちくわちゃんの飾り付けは進み、豪華になっていきます。


 素晴らしい仕上がりです! ちくわちゃんが最高級ちくわに進化した感じです!

 このまま3日くらい眺めていても飽きずに見ていられそうですけど、この愛らしさを私たちだけで独占しては世界の損失になります! 地球なら動画配信するべきレベルです!

 是非、村の皆さんに、見せてくる、いえ、魅せてくるべきです!


 私は、蔦でクイクイっと村の方を示しました。 ぺルルちゃんも一緒に村を指さします。


 ちくわちゃんは迷うような仕草をした後、少し照れたような笑顔でこくりと小さく頷いて、村へと走って行きました。

 おうふっ! ちくわちゃん、可愛い過ぎます!



 走っていくちくわちゃんの後ろ姿を見て、始めはホクホクした気持ちでしたが、その後で自分が情けなくなりました。


 結局、今日もほとんどぺルルちゃん頼りでした。

 ……うむむ……。 ぺルルちゃんにも楽しむ側になって欲しかったんですけど、上手く行かないですね~。


 「ふふっ、あの子も着飾る事は嫌いじゃないみたいね。 本当は鏡でも見せてあげたいけど、この世界は、綺麗に映る鏡は少ないみたいで……って、貴方また微妙に萎れてない? なにかあった?」


 ぺルル・タノシイ?・ワタシ・ぺルル・タノシイ・スル・デキテル?


 私の問いかけにぺルルちゃんは、呆れた顔をして言いました。


 「何を気にしてるか知らないけど、私は私で楽しんでるわよ? 流石にあの子みたいに狂気を感じるようなレベルにはなれないけど…… その、ね? 私も貴方やあの子といる事が、し、幸せかな? とか思ってるし?

 だから貴方は、いつも通りのアホの子でいるだけでいいわ」


 おお! 今まででも屈指のデレをいただきました!

 いやー、ぺルルちゃんも可愛いです! ちくわちゃんにも負けてませんね~!


 よーし! 可愛いぺルルちゃんが望むなら、私はいつも通りのアホの子で……

 って! 私、いっつもアホの子でしたか!? ちょっとそこ詳しく!!



 こうして今日も、私の日常は騒々しく。 だけど、穏やかに過ぎて行きました。

前回のラストで少し不穏な雰囲気になりましたが、作品内の時間ではまだあのシーンの数日前です。

なので、あの冒険者の再登場は、あと数話後になると思います。

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