17話 楽しい女子会からの不穏な気配 中編
魔物のウン○の描写があります。
ほんの数行だけですけど、汚い話が嫌いな方はすみません。
あと、ちくわちゃん視点に少々サイコな香りが漂っています。 それも苦手な方がいたらすみません。
どうもこんにちは、木です。
どうやら数日前に来た団体さんは、村までは入らずに近くで待機しているようです。
盗賊的なダーティ集団じゃなかったみたいで何よりですが、後ろ暗い方でないなら、遠慮しないで村に入って来ればいいのに。 もしや、シャイな方々なんですかね?
毎日、村の少し向こうでウロウロと何か探すように動いていますねー。
あ、そういえば今日はまだ確認していませんでした。 今日はどうしているでしょう? ちょっと見てみますか。
犇めけ! 私のF P S
あれれ? 今日はいつも以上に遠くにいませんか? 当社比1・5倍ってくらいですかね?
離れるならもっと離れたらいいのに、まだ微妙に近くにいるあたりが謎ですね?
……あ! ビビッと来ました! これは自分から遊びに来れないシャイな子が、
『構ってくれないと帰っちゃうよ? ほ……本当だよ? いいの? 引き留めるなら今だよ? ほ、ほら、いいのっ?』
って感じで、構ってアピールをしているんですね? そう思うと可愛い気がしてきますねー。 なんてホッコリしていたんですが、次の瞬間そんな気分は吹き飛びました。
反対側から凄い速さで2つの反応でこちらに来ています!
あれ? この反応って、私の頭より高い位置から感じますけど、この方々って、もしかして空を飛んでます?
あ、いえ、私に頭はありませんけど、言ってる事は伝わりますよね?
「……? ねえ、気のせいかも知れないけど、何か微妙に動揺してる?」
ぺルルちゃんが心配するように聞いてきました。 その後ろにいるちくわちゃんも、心配してくれているように見えます。
この子たちは…… 木である私の感情がわかるんですか?
なんだか絆が深まったみたいで、凄く嬉しいですねー!
ですが、喜んでる場合ではありませんね、ぺルルちゃんだけにでも伝えなければ。
ぺルル・アッチ・ソラ・ブッタイX・ダブル・オイデヤス!
「正体不明の何かが2つ、あっちの空からやって来るって事ね? ……何かしら? 無害な鳥とかならいいんだけど」
ちくわちゃんだけ状況が伝わっていない…… と思いきや、不穏な空気は伝わったのでしょうか? ちくわハウスに入って行ったかと思うと、室内から武器になりそうな物を持って来ました。
それが鉈だというのがワイルドな感じですが、それは武器らしい武器が無いから仕方なく持って来たんですよね? まさか、鉈を武器として使い慣れているとか言う話では無いですよね?
そんな事を考えている間にも、反応は近づいて来ています。 そろそろ目視できる距離でしょうか? 私は様子を確認するために視界を上に動かします。
上へ参りまーす。
視界が高くなるとそこそこ遠くまで見えますが、まだ未確認飛行物体は見えませ……ん?
あ! 多分あれですね、何か来ています。 んー……なんでしょう? 羽ばたいてる感じなので、鳥の系統でしょうか? もう少し近くに来れば見えそうなんですが~……っと、見えました!
なんというか、何かが足りないドラゴンさんです。 出汁を入れ忘れた味噌汁と言うか、ヒゲのない水戸黄門と言うか、何でしたっけ? この方もゲームとかに出てますよね? うむむ、思い出しそうで、微妙に思い出せません。
確か、ミスト……とか、キル……とか、そんな感じの……。
「あれは、ワイバーン!?」
ぺルルちゃんが答えを言いました。 あ~! そうそう、ワイバーンでしたねー。 あれ? ミストもキルも関係無かったですか?
てもワイバーンって危ない生き物なんでしょうか? いざとなれば私も参戦を考えますけど。
ぺルル・ワイバーン・キケン・アンゼン・ドッチヤネン
「性格も能力も危険よ。 肉食で好戦的、戦闘力はオークキングより下だけど、空を飛ぶ分オークキングより面倒な相手かも」
オークキング? 誰でしたっけ? まあいいです。 とにかく、危険な相手と言うのは分かりました。
あ~、でも、危険と言ってもまだ敵対すると決まったわけでも無いのに先制攻撃するわけには行きませんね。 今の角度ならココナッツクラッシュをお見舞いするのも可能なんですが、まだ何も悪いことをしてない相手に魔改造ヤシの実を投げつけるのは気が引けます。 どうしましょうかね?
……ここで、迷ったりせずに、先制攻撃するべきだったかも知れません。
先頭の一匹目が私を素通りしてから急降下、爪で家の屋根に穴を空けました。
幸い怪我人は居ませんでした。
ですが、皆さんが苦労し、それでも笑いながら建てていた、思いのこもった家に、こんな一瞬で穴が空いてしまうという事実がショックです。
正直、頭に来ましたが、もう攻撃のチャンスは失いました。
村の真上を飛んでいるので、ヤシの実を投げつけて避けられたら、皆さんの家や畑…… 最悪の場合、村の皆さんに脳天直撃S・サターンするかもしれません。
ただ、あっちはマッスルさんとセクシーさんの肉体派タッグが登場して戦い始めたので、そうそう負けないと思います。
……問題は、こっち側ですね。
実は、もう一匹の方は今も私の頭上を旋回しているのです。
いえ、私は多分大丈夫だと思います。 積極的に木を狙って攻撃したりはしないでしょうし。
ただ、ちくわちゃんとぺルルちゃんは、か弱くて美味しそうなので狙われないか心配です。 なのでさっきから私は、葉っぱを増量した枝を広げて、上から二人が見え難いように覆い隠していますが、気配とか匂いとか、なんかそういうのを感じてるんでしょうか? なかなかアッチへ行ってくれません。
ほぼ真上にいますからヤシの実を投げても、それが自分の頭上に降って来ちゃいますし、万が一、ちくわちゃんやぺルルちゃんに当たったら……なんて思ったら、怖くてできません。
「ごめん。 私に攻撃手段があれば良かったんだけど」
ぺルルちゃんは申し訳なさそうにしてますけど、もし攻撃手段があったとしてもぺルルちゃんに危ないことは、してほしく無いです。
ぺルル・キケン・カカワル・ダメ・ゼッタイ
私がそう伝えると、ぺルルちゃんは苦笑いしました。
「もう、過保護ね。 そんなに心配しなくても、妖精は逃げたり隠れたりが得意なのよ? それに危険に関わるなって言われても……」
そこまで言ったぺルルちゃんは、ちくわちゃんをじっと見て、続きを言った。
「私の近くにある一番に危険な存在って…… 多分この子の事だと思うわよ? ほら、よく見てよ、この子…… ちょっとヤバい感じになってるわよ?」
ちくわちゃんが危険? ヤバい感じ?
まだぺルルちゃんは、ちくわちゃんのパンチ、略してちくわパンがトラウマになっているんでしょうか?
こんなに天使なちくわちゃんが危険なハズ無いんですけどねー?
あ、可愛いとか素晴らしいとかの意味でヤバいって事ですね?
ちくわちゃんは、不機嫌そうな顔で鉈を握りしめていますが、そんな姿も愛らしいです。 風も無いのに髪の毛がフワリと逆立ちそうになっているのも良いアクセントになっていて可愛いですねー。 ……って、あれ? ちくわちゃん、なんか驚いた顔で空を見上げてますけど、何かありました『ベチョッ』……か?
おや? 少し衝撃を感じましたが、今なにかぶつかりましたかね? っと疑問に感じていると、ぺルルちゃんが、凄く気の毒そうな顔で私に告げました。
「あ~、えっとね? ……貴方……今、ワイバーンのフンが直撃したわよ?」
フンが? ふーん……。
じゃないです!! フンって、あのフンですよね? うわぁ~……。 いえ、私も職業柄、外に立ちっぱなしですから、鳥のフンで爆撃された事はありますけどね?
ですが大型肉食獣のフンは精神ダメージが段違いですねー……。
私を爆撃したワイバーンは、ギャギャッ! と、嘲笑うような声を出した後、村へと向かいました。 もう一匹と合流するのでしょうか?
……ぺルルちゃんは、気まずそうに目をそらして黙ってます。
私の中の植物の部分は、フン? ああ、肥料の事ですね? バッチ来いですよ? くらいに感じてるんですが、私の中の、汚れなき乙女の部分は、メッチャ凹んでます。
ち……ちくわちゃんの反応はどうでしょうか? 引いてないですよね?
ちくわちゃんに『お姉ちゃん、きたな~い』とか言われたら、私はマッハで枯れ果てる自信があります。
恐る恐る確認したちくわちゃんの表情は…… 無表情でした。
そしてユラユラした歩き方で私の枝の下から抜け出して、村の方向へと歩いて行きました。
ぎにゃあぁー!! ちくわちゃんが行っちゃいました!!
引いてますか!? えんがちょ! とか思ってますかー!?
今すぐ、フンを吸収してしまえば…… いえ、それもあまり綺麗なイメージでは無いでしょうか?
そうだ! ぺルルちゃんは、物を洗う魔法とか使えませんかね?
ぺルル・センタク・マホウ・ワタシ・オドロキノ・シロサ・OK?
「魔法で洗えって? 流石に洗濯に特化した魔法は無いけど、水と風を組み合わせればでどうにかなるかしら? まあやってみるわ」
そう言ったあとぺルルちゃんはチラリと村の方を見たあと、呟きました。
「あの子がワイバーンの成れの果てを捧げに来るまでには、綺麗にしてあげるわ」
ん……? 成れの果て?
ーーーーー フリージア視点
私は不機嫌だった。
今日は、私と精霊様と妖精で楽しくお話しをしていた。
うん、お話しだ。
二人とも私たちの言葉は話せないみたいだけど、それでもとっても楽しくて、私はそれを大切な時間だと思ってるの。
だけど…… それが邪魔された。
精霊様が何かを気にしてる気がしたの。 でも悔しいけど、木である精霊様の気持ちを読み取るのは難しくて、私が感じたものが気のせいかもって不安だったから、妖精の様子を見た。
彼女も不安そうな顔をしてたから、私の気のせいじゃないみたいだ。
それが、戦いに関わる事とは限らないけど、準備をしておいて損は無いから、部屋から鉈を持って来た。
ちゃんとした武器では無いけど、普段から剣技の練習に使っている物だから、手には馴染んでいる。
それからしばらくしたら、ワイバーンが現れた。
とても強くて恐ろしい相手…… のはずなのに、あまり怖くは無かった。
ただ、ひたすらに不愉快なだけだ。 むぅ…… なんでワイバーン程度の魔物が、精霊様を見下ろして飛び回っているの?
本当なら今すぐ魔法を撃ち込みたいんだけど、アイツは精霊様の真上にいるからできない。
残骸を精霊の上に降らせるわけにはいかないし…… むぅ…… 精霊様から離れたら遠慮しなくていいんだけど。
なんかイライラしてたら、魔力が吹き上がって、髪の毛が持ち上がってきた。
勝手にだんだん逆立っていく髪の毛を気にしながらも、目線は空にいるアイツに向けていたんだけど……。
そのせいで、ハッキリその瞬間を見てしまった。
アイツ! フンをした!? 待ってよ! 真下に精霊様が!!
ベチョッていう汚い音とともに精霊様の体に汚物がかかる。
最初に感じたのは、心配と悲しみだった。
怒りも当然こみ上げて来たけど、それよりも、こんな侮辱を受けた精霊様の心が心配だった。
私にとって、何よりも大切な大切な大切な大切な精霊様が汚れた姿を晒していることが悲しかった。
こんなことがあっていいはずが無いよね? 私はどうすればいいのかな?
あ、そうだ。 無かった事にすればいいんだ。
アイツが消えて無くなれば、精霊様が侮辱された事実は無くなるはずだ!
何でこんな当たり前な事に気付くのが遅れたんだろう?
むぅ…… うっかりしてた。 自分が恥ずかしい。
まあいいや、アイツが消えれば、今日は精霊様と私と妖精で楽しくお話ししてただけの平和な日だった事になるから、私のうっかりも無かった事になるよね?
幸いアイツは村の方に行ったから、残骸が精霊様にかかる事も無いし、遠慮もいらない。
そうと決まったらアイツを追わなきゃ!
待っててね、精霊様! すぐに終わらせて来るから!
はい、裏ちくわちゃんスイッチ入りまーす。
……ちくわちゃんが初期設定よりも大幅にアレな感じになって来ました。
でも、まだ主人公からは天使な妹キャラに見えています。 眼科行け。