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ウッディライフ! ~ この木なんの木? 私です ~  作者: 鷹山 涼
2章ですよ 嬉し恥ずかし同棲生活です。
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番外編 if ・もしフンコロガシ転生を選んでいたら?

前回に続き、if ストーリーです。 今回はフンコロガシを選んだ場合の話です。

プロローグ(超ダイジェスト)


ディアえもん「ゴメン、君、死んじゃった。 転生させるから許して」


 主人公「マジですか!? う~ん、でもまあいいや。 OKです」


 ディアえもん「あ、でも君、人間に向いて無いから、木かミミズかフンコロガシの3択でヨロシク」


 主人公「じゃあフンコロガシで」


 ディアえもん「え!? それで良いの? まあ本人が良いならそれで決定ね。 行ってらっしゃい」



ーーーーーー



 どうもこんにちは、コロガシです。


 え? フンコロガシじゃないのかって?

 ええ、まだ生まれてから一度もフンを転がしてないので、まだ、ただのコロガシです。

 元・女子高生としては、好んでフンに触れたいとは思わないので、出来ればこのままただのコロガシでいたいものです。


 なら何でフンコロガシ転生を選んだか? というと、理由がありまして。

 実は候補が3つあると聞いたときに、頭の中に私自身が3人現れたんですよ。

 そして、話し合いを始めました。



 私A「私は木になりたいです」


 私B「じゃあ私はミミズでOKですよ」


 私C「え!? 私、フンコロガシは嫌ですよ!?」


 私A「あ、なら私がフンコロガシやります!」


 私B「ダメです! 私がフンコロガシになります!」


 私C「えっ? じゃ、じゃあ私もフンコロガシやります!」


 私A&B「「どうぞ! どうぞ!」」


 私C「なん……だと?」



 と言う事になりました。 そしてここにいる私は、私Cだったようです。

 その流れでやっぱりやめます。なんてノリの悪い事は言えません。

 なので、もうフンコロガシになったことは受け入れます。


 ただ、1つ受け入れ難い事があります。  


 フンコロガシがフンを持って行くのは、後で食べるためです。

 つまりフンコロガシの主食はフンなわけで、私もお腹が空いたら食べなきゃダメって事……ですかね?


 それは激しくノーサンキューです!

 フンを食べる女の子というのも、マスタークラスの紳士(HENTAI)には需要があるかもしれませんが、そこを目指すつもりはありません。


 あ、そういえばイケメン妖精さんが、私は『太陽虫』とか言う炎を転がす上位種になるって言ってましたよね?

 炎を転がすという事は、炎を食べるという事でしょうか?

 炎を食べる女の子も特殊ですけど、フンよりマシです。 食べれるかどうか試してみましょう。




 う~ん、見つかりませんね~、そういえば自然の中で炎ってあんまり見たことないですね? どんな木に実ってるんでしたっけ? 


 じょ…… 冗談ですよ? 流石に炎が木に実っていない事くらい、二秒ほど考えれば、すぐに思い出しましたよ? 3秒ルールで行けば余裕でセーフですよね?


 ……マズイですね、お腹が空いて頭がボーっとしているかもしれません。

 考えたら、この体に生まれてから、何も食べてませんね? 

 何か、虫の本能とかで食べ物の気配とか感じませんかね?

 ちょっと精神を集中させてみましょうか、こう……座禅をするような感覚で…… 

 ヨガ~…… ヨガ~…… ヨガ~……。


 ん? 何か感じた! ……かもしれません。 行ってみましょう。





 んー。 何かの気配に導かれて来てみたはいいんですが、コレは食べ物ではないですね~。 いえ、まあ、食べて食べれない事は無いんでしょうけど。



 私の視線の先には、でっかいワンちゃんが昼寝していました。

 しかも頭が3つありました、歌を歌う時に3つのパートが1人で歌えて楽しそうですね~。 


 ですが、今の私に必要なのは合唱の達人ではなくて、食べ物です。


 う~む……? 食べ物の気配がしたと思ったんですけどね~?

 あ、もしかしてワンちゃんが食べ物持ってます? 少しシェアしてくれませんか~。


 私は手…… と言うか、前足でワンちゃんの顔をツンツンしてみます、すると、ワンちゃんはすぐに目を覚ましました。 おお、寝起きがいいですね? おはようございます。


 実はお腹が空いていまして、もし食べ物があれば、少し貰えませんか?


 ワンちゃんは面倒くさそうな顔で口を開けると……


 ゴアッ! と火を噴きました!?


 やった! 食べ物だ! と思って自分から飛び込んでから気づきました。

 あれ? 私が炎を食べれるって仮説が外れてたら、このまま虫の丸焼き……

 略して、むし焼きになるんじゃありませんか?



 冷静になった頃には既に炎は目の前に…… これはもう、やるしかありません!

 まさに食うか食われるかです!!  いただきまーす!!


 私は麺類…… それも蕎麦やラーメンみたいな細いものではなく、きしめんを(すす)るようなイメージで一気に吸いあげます!! 


 なんと!? こ、これは美味しいです!

 スパイシーでパンチの効いたワイルドな味なのに、のど越し爽やか! 

 まさか貴方は幻の料理人ですか!? 

 ならば、ただ単にワンちゃんと呼ぶのは失礼ですね。 そんな貴方に敬意を表して、中華の鉄人ワン・チャンの名を勝手に授けましょう!!


 ワン・チャン氏は、大盛りの炎を食べきった私に驚いたような仕草を見せましたが、ひと声吠えてから、もう一度火を噴きました。

 これは多分、


 『アイヤー、お客さん、いい食べっぷりネ! おかわりサービスするアルよ!』


 とか言っているのでしょう。 顔は怖いですがいい人…… いえ、いい犬なのですねー。



 その後もワン・チャン氏は何度もおかわりを用意してくれて、お陰で私はお腹いっぱい夢いっぱいです!

 ワン・チャン氏は『も、もう店じまいアルよ……』と言わんばかりにノビています。 ごちそうさまでした~♪


 なんだか体も大きくなりましたし…… おおぅ!? 足の数がメッチャ増えてます!

 そういえば、進化すると足が120本になるとか言ってましたね。 ん? と言う事は私は進化した…… という事ですか?


 もうワン・チャン氏には足を向けて寝れませんね~、って思ったんですが、これだけ足の数が多いとどれかはワン・チャン氏に向いてしまいますね。

 申し訳ないですが、そこは勘弁してもらいましょう。




 ワン・チャン氏の所から旅立った私は、林の方に向かって歩き出しました。


 シャカシャカシャカシャカと、足を動かして進みます。

 最初は足が多すぎて歩きづらく感じていたんですが、慣れるとむしろ足の一本一本への負担が少なくて、楽なような気がして来ましたねー。


 おや? なにやら、たくさんのテントが見えますね? ちょっと見に行ってみましょう。

 シャカシャカシャカシャカ……。



 テントが並んで、満員のキャンプ場みたいになったその場所に近づくと、そこには人間の姿が見えました。

 一瞬、嬉しくなって『こにゃにゃちわー』とか言って顔を出そうかと思ったんですが、ひとつ気がついた事があって足を止めました。


 あれれ? 人間があのサイズと言う事は、それと比較して…… え~っと。

 ……私、デカくないっスか? 多分、一般的な車くらいありませんか? コレ。

 いや、大きくなったのは気づいてましたよ? でもワン・チャン氏と比較すると小さかったんで、まさか自分がここまで大きいとは思ってなかったんですよ。


 となると、ワン・チャン氏はバスくらいの大きさだったんですね……。


 まあワン・チャン氏程では無いと言っても、私も自家用車サイズです。 

 そんなサイズの虫が『こにゃにゃちわー』と言ってキャンプ地に入って来ても、皆さん歓迎はしてくれないと思います。  悲しいですけど、見つからないうちに退散するのがお互いのためでしょう。


 私は大きく迂回するルートで林を目指しました。 シャカシャカシャカシャカ……。



 目的の林までたどり着いた私は、周りの様子を見回しました。

 おお、なかなかに自然豊かですね~。 木の実やキノコがたくさんあります。

 私が火とフン以外にも食べれるなら、この辺りで自給自足するのもいいですね。


 ……よし! 試しに何か食べてみますか!

 もし私が普通の物を食べられない体だったとしても、一口や二口で死にはしないでしょう。


 では、早速なにか探してみましょうか。  ふむふむ……、

 知らないキノコを食べるのは怖いのでパスですね……、なら、あの木の実か、その草の実か、

 ……ん? そこに落ちてるのは食べものですかね?


 おおぅ!? 何かと思ってじろじろ確認したら、怪我をした人間じゃないですか!?

 もしもーし! 無事ですかー!?   顔をツンツン。


 マズイですね…… 反応がありません。

 息はあるようですが、このままでは危なそうですね。 ですが私には治療する手段がありません。 これは…… どうすれば?


 あ! そう言えば、この林に入る手前にキャンプがありましたね、あそこに連れていきましょう!


 どっこいしょ! とマッスルな男性を背中に乗せて、私は、今来た道を戻ります。

 シャカシャカシャカシャカ……。




 おお、この体って、本気で走ると案外速いんですね? 

 もうキャンプが見えて来ました。 ですが、あれは!?

 っ!!…… キャンプが襲われてます! 


 豚と人の中間みたいな魔物がキャンプを襲撃しているのがが見えます。

 見捨てるわけには行きません! ……ですが、この体って強いのでしょうか? うむむっ…… もっと早い段階で能力の確認をしておくべきでしたかね? 

 まあ、今さら言っても仕方ないです! 背中のマッスルさんをしっかり固定して……っと。


 では……GOです!!



 まずは……突進!! キャンプに群がる豚さんの集団を側面からのタックルでなぎ払います。

 おお! 相手が高く舞い上がるほどの威力で突っ込んだのに、あまり痛くないですね? どうやら、私は結構強いっぽいです!


 周りにいる豚さんには前足でアターック! ……ところで前足の攻撃というのは、パンチとキック、どっちになるんでしょうね?


 ブベらぁ!? 変なことを考えているうちに棍棒で殴られました、でもまだ行けますよ!

 私は、調子に乗ってもう一度殴ろうとして来た豚さんを後ろ足で蹴り上げます。


 神は仰りました、『右の頬を殴られたら、左の頬を殴られるまえに全力で無力化せよっ! 大丈夫! 正当防衛ですよ!』っと。

 え? どこの神かって?  知りませんけど、たまに私の頭に語りかけて来ますよ?


 おっと!? 背中のマッスルさんを落とす所でした、危ないのでどこかに降ろしましょう。

 私は全速力でキャンプの中心に移動しました。 当然、途中で見かけた豚さんには、もれなく体当たりをプレゼントしておきました。


 よかった、まだキャンプの中心辺りは戦いになっていないようです。 

 ふむふむ、この辺りには戦えない年寄りや子供がいるようですね。 ……まあ、無理もないですが、突然乱入して来た巨大なフンコロガシを見てパニックになっています。

 ……不気味な見た目でごめんなさいねー。


 私はそこにいた中で、一番冷静そうだったお爺さんの前にマッスルさんを降ろしました。


 その時、微かに悲鳴が聞こえた気がしてそちらに向かうと…… 十歳くらいの女の子が豚さんに追いかけられていました。


 涙目で逃げる美少女を、半裸でブヒブヒいいながら追い回す豚野郎……。

 おまわりさん! コイツです!


 残念ながらここにおまわりさんはいないので、私がお助けしましょう!

 全速力で美少女と豚野郎の間に乱入しました。


 こんにちは、死ね。


 豚野郎が私に反応する前に、問答無用でタコ殴りにして、美少女ちゃんを回収。 手早く背中に乗せて、即座に離脱!


 ……この美少女ちゃんは、謎のフェロモンでも出しているんですか?

 背中に乗せて走ると、豚まっしぐら! って感じに敵が群がって来ます。

 全員が一列に並んで追っかけて来ていますよ? 某ロボット戦略ゲームなら、入手する資金がUPするスキルを掛けてから広範囲兵器をブッ放したくなる光景です。


 あれ? 兵器ではありませんが、広範囲攻撃ってできませんかね?

 たしか、転生前にイケメン妖精さんは、フンコロガシの上位種である太陽虫は、灼熱の火球を転がすと言っていました。

 ですが、灼熱の火球なんてその辺に落ちている物でもないでしょう。 なら、それは自分で作り出せる……という事では?


 ぶっつけ本番ですが、試す価値はありますよね?  私は背中の美少女ちゃんを降ろしたあと、敵の群れにお尻を向けて、後ろ足に熱エネルギーが収束するようにイメージしながら、何かを転がすようにちょこちょこ動かします。


 むむむっ……! もっと強くです! もっと熱くです!!

 ゴッドなフィンガーが、(とどろ)き叫ぶほど爆熱するイメージで!!


 やがて、ちょこちょこ動かした後ろ足に力が集まった事が自覚できました。 

 敵の群れは綺麗に直線に並び、角度的にキャンプは巻き込みません!!

 いつ撃つの? 今でしょ!!

 頭に響く謎の先生の声に従って…… ブッ放します!


 思い切り蹴り上げると、そこから打ち出された火球が小さな太陽のような光を放ちながら飛んでいき、触れるものを焼き払いながら突き進み、最後に爆発しました。


 ……地形がすっかり変わってしまいました……。 豚さんたち? ……そんなの影も形もありませんよ?


 なんですかこれ? 威力……ありすぎませんか?


 私はキャンプの方を見ました。


 皆さんの顔は……恐怖に歪んでいました。

 泣き叫ぶ子供の声が響く度に私の心に痛みが走ります。 


 ……ははっ、そうですね~、 怖い……ですよね?

 まあ、仕方ありませんね、皆さんを怖がらせるのは本意ではありません。

 なので私は、これにてドロン。



 立ち去ろうとした私の足を…… 掴む手がありました。


 さっきまで背中に乗せていた、あの少女でした。

 少女は泣きそうな顔で私にしがみつき、何かを言っています。


 多分、私にお礼を言っているんでしょう。 泣くほど怖くてもちゃんとお礼を言えるなんて、礼儀正しい良い子ですねー。 ……はい。 ちゃんと、そのお礼の言葉は受け取りましたよ?。


 私は前足で、その子の頭を一度だけ撫でると、そのままその場を立ち去りました。


 さあ、美少女ちゃん。 皆さんの所へもどりなさいな、 ……怖~い怖~い虫のことなんて、すぐに忘れちゃってくださいね。


 私は少女の叫ぶ声を背に、林の奥へと進んで行きました。

 血を吐くように叫ぶ少女の声が、まるで私を呼び止めているように聴こえたのは…… きっと私の都合のいい妄想でしょう。




ーーーーーー




 あれからどれくらい経ったでしょうか?


 人の気配を感じる度に隠れ家を変えて、色んな森や洞窟を転々としてきましたが、そろそろ限界でしょうか? 体では無く、心が……です。

 1人は……   ……寂しいですねー。



 このまま、ここでじっとしていれば、終わりに出来るでしょうかね?


 そのとき、何故か私は、柔らかく、優しい風を感じた気がしました。 

 そして私が振り向くと、そこには……



 「ちrL4よ*、ちくわ!!」



ーーーーーーーーーー



 ある日、辺境の地で、伝説的な冒険者が誕生した。


 それは、巨大な虫の魔物に乗った可憐なエルフの少女で、その活躍は後に多くの物語の中に描かれるほどの物であった。



 そして、その数多くの物語の全てに共通して語られていることがある。

 それによると、

 少女と相棒の魔物はとても仲が良く、その姿は親友のようでもあり、姉妹のようでもあったという。

と言うことで、フンコロガシを選んだ場合は、

伝説の魔物使いちくわちゃん誕生ルートです。 これはこれで面白くなりそうです。


この番外編で2章は終了です。ちょっと休ませてもらって、月曜日の夜から3章を開始します。

2章はバトルは無しでしたが、3章はバトルが少し多めになる予定です。と言っても、そもそもこの物語は純粋なバトル物では無いのでそこまで規模の大きいバトル展開は期待しないでくださいね?

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